間違い探し
2-3
夏目の低い唸り声の後、中に生暖かい感触がした。
ずるりと引き抜かれると腰を上げている事すらできず崩れ落ちる。
恐らくどこか傷付いているのだろうビリビリとした痛みがするが、怖くて触って確かめることはできそうにない。
「案外、普通に出来るもんだな。」
下着だけ付けて胡坐で座る夏目が言う。
とてもじゃないが今、まともに会話はできそうにない。
かといって無視をする訳にもいかず呻くように「そう。」とだけ返事をした。抑揚もへったくれもない息を吐いただけの様な話し方になった。
「ふうん。」
夏目が笑った。それは今日最初に見た下卑たものとは少しだけ違う気がしたけどやっぱりあんまり質は良さそうに見えなかった。
「なあ、次からも俺が呼んだときには来いな。」
最初何を言われているのか分からなかった。だって、どう考えてもつまらなかった筈だ。それとも、ただ突っ込めれば充分なのだろうか。
それであれば夏目の為に体を開く人間位俺じゃなくてもいそうなのに何を言っているか分からない。
「は?」
思わず出たのは訝し気なもので、その声を聞いた夏目は眉根を寄せる。
「断れる様な状況じゃねーだろ。」
「……まあ、そうだけど。」
あの写真が俺であればという注釈付きではあるけれど。
「別に他の男にだって股開いてるんだから、そんな変わんねーだろ。」
俺が他の人間としている訳じゃないから気にするな。そう自分に言い聞かせるが夏目の言葉と明らかに俺の事を馬鹿にしているであろう視線に地味に傷付く。
一回きり。そう思ったから付いてきたのだ。付いてきてしまったのだ。
声が上手く出ない。どうしたらいいのか分からない。
人違いだと叫んで理解してもらえるだろうか。じゃあ何故付いてきたのかと聞かれたらどうすればいいのだろう。
「そういう訳でこれからもよろしくな。」
ニヤリと笑った顔を見て、涙がこぼれそうになった。
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