明けの明星、宵の明星
6
「まさか、気が付いていないのか?」
何のことを言われてるのか理解できないため、都竹さんの言葉が疑問から出た物なのか嫌味なのか判断ができない。
「何の、ことですか?」
既に息は気持ち悪い位熱くなっていて、はあはあと荒い中都竹さんに聞く。
いよいよ都竹さんが驚いた顔をしていて、先程の言葉が嫌味の類では無く、疑問だったことに気が付く。
都竹さんが、俺の耳を触る。
思わず、ビクリと震えてしまう。
「や、めてくださ……。」
体はもはやのっぴきならない状態だ。だからそんな風に触れないで欲しかった。
子供扱いをして頭を撫でられたみたいな経験は無い。
ただの、契約上の婚約者以上でも以下でもないのに止めて欲しい。
勘違いをしそうになる。
事実、都竹さんの匂いが一層強く感じられる気がして、頭がクラクラする。
都竹さんが溜息をつく。
都竹さんが俺の動きを封じる様にのしかかってくる。覆いかぶさられた体は上手く動かす事すらできない。
「俺とお前は、遺伝子上の運命の番ってやつだ。」
何を言われているのか、分からなかった。
都竹さんを見上げながら唇を戦慄かせることしかできなかった。
「ああ、やっぱり気が付いていなかったのか。」
「……都竹さんは運命の番が男の俺だったから落胆したんですか?」
女性が好きな人の運命の番が男である俺だったなんて、滑稽だ。
「最初は、なんで男なんだって思ったし、言葉にもしたな。」
そう言うと、もう一度都竹さんは俺の頭を撫でた。
「俺が運命の番だから、仕方が無いってことですか?
それとも、アルファはオメガ無しではいきていけないからですか?」
どちらかしか考えられなかった。
信頼関係を作れるような交流も何もなかったし、オメガらしからぬ容姿をしている自覚もある。
「何を吹きこまれたか知らないが、勘違いしているようだな。」
都竹さんは目を細めた。
それがまるで野生の獣の様に見えて、思わず体を震わせた。
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