2人きりの夜


ぽん、ぽん、

一定のリズムで私の背を叩くこの暖かな手のひらは、誰のものだろう?私を包むこの暖かな温もりは、一体なんだろう?
ゆっくり目を開ければ、ぼんやりと見える夜景。ああそうだ、今は修学旅行中だったっけね。もう夜?なんだかお腹すいたかも、

きゅるるぅ

夕ごはんはまだなのかな?今は自由時間?みんなお風呂行っちゃったのかな。

「お腹空いてるのか?」
「うん…」
「良かった、やっと起きたのか」
「……」

えっ!?と言う大声と共に声のする方に顔をぐりんと向ければ、結構至近距離にイタチ先生の笑顔。片手に本を持っていたところを見ると、読書をしながら私の背を叩いてくれていたのだろう、って言うかこの状況なに!?何で私イタチ先生と2人きり、あ、ああ、そうか、ホテルの部屋の鍵が壊れて閉じ込められたんだった。ん?待って、でも私たちがまだここにいると言うことは。

「まだ…ドア開かないんですか?」
「そんなこと有り得ないと思うだろ?」
「は、はい」
「それが…有り得るんだよなぁ…」

うそ。

イタチ先生は溜め息を吐きながらここ数時間の出来事を私に説明してくれた。
私が泣き疲れて寝てしまったあと、業者さんが来たこと。業者さんが誤ってドアを余計に壊してしまったこと。とりあえず夕ごはんは上の階のベランダから投げ入れてもらったカップラーメンがあること。冷蔵庫の中の有料の商品はタダで食べて良いってこと。今夜は、この部屋に私とイタチ先生の2人きりってこと。

今夜は、イタチ先生と2人きりってこと。

「そっ…そんな、」
「まぁ、何て言うか…災難だな。」

アッサリと言いのけて、彼は備え付けの電気ケトルでお湯を沸かし始めた。まだぼけている頭を片手で押さえながら身体を起こしてそちらをふと見れば、カップラーメンの底部にセロハンテープでメモ紙が貼り付けられているのが見える。
どうやら、これはカカシ先生の字だ。

【変なことはしちゃダメヨ】

…なっ、なんだこのメモ!大体、変なことって何よ、変なことって!別にイタチ先生と変なこと、なんて。
ちらり彼の方を見れば、それに気付いた彼はどうした?とでも言うような顔で私を見た。もしかして、先生はまだこのメモに気付いてないんだろうか。
そもそも、このメモが私じゃなくてイタチ先生に向けて書かれたものだったとしたら。イタチ先生が、私に変なこと…

いやいや、ないって。イタチ先生に限って絶対ないって。
でも、イタチ先生だって立派な成人男性…や、やっぱない。

じわじわと熱くなるほっぺたを両手で押さえながら深呼吸。イタチ先生が首をかしげながら醤油か味噌かと聞いてきたので、メモが貼り付けられている味噌を選び外側のビニールを急いでひっぺがした。今このタイミングでこのメモがイタチ先生の目に触れたら空気が悪くなって収集つかなくなる。カカシ先生最低。

カップラーメンを2人で食べて、冷蔵庫の中の飲み物を飲んで一息ついて、ハッと気付いた。

「私…着替えとかないんですけど…」
「俺のを着れば良い、サイズは大きいが寝るときくらいそれで我慢してくれ。」
「そんな迷惑かけられません!」
「風邪ひかれるほうがよっぽど迷惑だ。」
「うっ」

そんなこんなで、シャワーを浴びたあとイタチ先生が持ってきていた寝間着用のTシャツとズボンを借りた。イタチ先生は今お風呂に入っている。なに、この空気。部屋が1人用でシングルベッドが1つしかないと言う状態のせいでなんだか妙な気分だ。

「意外と広い浴室だったな」
「ひゃい!そうでしたね!」
「…大丈夫か?」
「…はい。」

私ってば、もしかしてイタチ先生と同じベッドで寝るのかな?寝ちゃうのかな!?だって寝るところ他にないもんね!いや、ほんとどうするんだろ心臓が持たない…!
と、私が勝手に葛藤している間にもイタチ先生は髪を乾かし終え、ベッドの隣に置いてある少し大きめの椅子に深く腰かけた。部屋に置いてあった浴衣を着る先生はなんだか変にエロい。

「…寝るなら電気消してから寝ろよ」
「はい、…え?先生そこで寝るんですか?」
「ああ」
「や、流石にそれは、ベッドで寝てください!」
「シングルだし」
「でも椅子はダメですって!」

少々青ざめた顔でぐいぐい浴衣を引っ張ると、イタチ先生は渋々ベッドに腰かけた。よく考えたら物凄く大胆なことしてしまったかもしれない、と思ったけど、でもあんなところに寝かせて体調崩されたりなんかしたらもっと困る。

「わ、私、なるべくはじっこで寝ますから」
「…はい」
「先生もちゃんと寝てくださいね!」

有無を言わさずぱちんと電気を消したあと、イタチ先生がもそもそと布団に入る音が聞こえる。

私はごくりと唾を飲んで深呼吸をしてから、意を決して隣に潜り込んだ。


(20130803)


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thanx!! :)


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