約束


1番前の席の人から順々に後ろへ回されていくプリントをわくわくしながら待つ。暫くすると、やっと最後の1枚が私のに手渡された。それは何枚かのわら半紙を2つ折りにしてホチキスで止めただけの簡単な小冊子。
私たちが待ちに待った修学旅行の行き先が載っている、しおりだ!

「京都ー!!」
「サクラ、うるさい。はいはいみんな、静かにー」

がやがやと騒ぐ生徒たちをやっとこ静めて、カカシ先生はしおりに沿った説明を淡々と話す。1日目は大阪で自由行動、2日目は京都で自由行動、3日目はお城巡り。これだけ聞いたらなんともつまらなさそうなスケジュールではあるが、ところがどっこい、今は4月。修学旅行の日取りは丁度桜が見頃な時期と来た。こればかりは先生方に拍手を送りたい。
ニヤけた顔をそのままに隣のサスケを見れば、彼はしおりを開きもせずにつまらなさそうな表情でくるくるとシャーペンを回している。高校の修学旅行は一生に一度しかないってのに、なんなんだこいつは。そしてその後ろには、椅子だけ置いてそこに座るイタチ先生。
副担任のイタチ先生はいつもクラスの決め事がある授業のとき、一番後ろで椅子に座って見ているのが常だ。そしてたまに前に出てプリントを配ったり、黒板に何やら文字を書いたりする、所謂カカシ先生の雑用…いやいやいや、助手のようなことをしている。

「で、この時間にはお前らに自由行動の班を作ってもらうから。10分で5人班ちゃんと作れよ。はい、始めー」

しおりに夢中になっているうちに勝手に始まった班決めに、とりあえず立ち上がる私たち。立ち上がったはいいけど、どうしようと思っていると真っ先にサクラが飛んできた。

「ね、ヒメは一緒の班で良いでしょ!?サスケくんも!」
「あ、うん」
「別にかまわねぇ」
「俺も入れろってばよ!」
「サクラ、抜け駆けは許さないわよ!」

じゃ、これで決まりね!と、サクラが満足そうに班のメンバーの名前を教卓の紙に書き込んでいく。
帰りに本屋に寄ってガイドブックでも買おうかな、と思った矢先、そう言えばイタチ先生の家にたくさん置いてあったな、と思い出す。修学旅行の行き先がこうして生徒に公になったのは今日この時間が始めてだけど、たまにイタチ先生の家に出入りしている私は彼の家にある大阪と京都の観光ガイドブックを見てなんとなく悟っていた。言ってしまったら気まずくなるかも、と思って口にはしなかったけど、あれだけ見えるところに何冊も放置されてたら嫌でも分かるっての。

よし、そうと決まれば今夜にでもガイドブックを借りに行こう、そう思って、放課後帰り道を歩きながらイタチ先生にメールを入れた。始めてイタチ先生の家で夕飯をご馳走になったあの日から、私は度々彼に夕飯を誘われるようになって、ここ最近は2日置きぐらいにイタチ先生の家で夕飯を食べている気がする。まぁ、申し訳ないと思ったことはあるけれど、有り難いと思っているからそれを苦にしたことはない。

「おい、ヒメ」
「な、なに」
「これからなんか用事あんのか?」
「へ?ないよ?」
「ならどっか寄って飯食おうぜ、今夜俺んち親いないんだ」
「あ、あー…」

携帯片手に悩んでいると、タイミング悪く震え出した携帯電話。ディスプレイにはしっかりイタチ先生の名前が浮かび上がっている。メールを開けば、「じゃぁいつも通り19時で」との返事。仕事早いなぁ…と顔を歪めながらサスケの方を見れば、早く来いよと言わんばかりにこちらを睨んでいる。

どうしよう。

「…あ、あのさ、サスケ…」
「なんだよ」

もう一度ディスプレイを確認して、サスケの顔を見る。

どうする私!!


「ごめん、今日は早く帰りたいんだ。」



(20130718)


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thanx!! :)


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