諦めたらそこで終わり


バカ、ばか、莫迦、馬鹿。

「バカーーー」

枕に突っ伏してひたすら吠える。
今日はバレンタインデーだった。

だった。

バレンタインはこれでもかと言うくらいに大成功だった。

クラスの男子たちには。

私が作ったブラウニーはちゃんとうちは家のみなさまにお配りした。
あの大きな紙袋のままで、夕飯に招待されたあの夜に。

「だってしょうがないじゃん…あのまま家にお邪魔する流れになって…ラッピングする時間なんてなかったし」

だけど結局イタチ先生にも、ましてやサスケにも同じ扱いで渡したような結果になってしまったブラウニー。もちろんみんな喜んでくれたし、ちゃっかり私自身も頂いてきてしまったんだけど。だけど、だからこそ不完全燃焼感が否めない。モヤモヤしつつ、作り直すのも躊躇ってしまってそのままバレンタインが来てしまった。やっぱりダメ女。
みんなで作ったフォンダンショコラはもちろんカカシ先生とイタチ先生とミナト先生の分もあったから、あれも先生の胃には入ったはず。ただそれでは「その他大勢の中のひとり」という扱いでしか受け取られない。個人で手渡しできなかったというのが私の心残りなんだろう。まあ、分かっていたって結局 ”時既に遅し”。

「はあ。いつまでもグダグダしてたって意味ない。お腹すいた」

ガサガサと棚を漁り、先週買ったばかりのホットケーキミックスを手に取る。
もう本当に今日は何もやる気がおきない。いつもでしょと言われたら何も言い返せないけど、今日はその中でも特に、だ。

「卵も牛乳もあるし…作り方は…」

レシピを求めてふと裏面を見る。

★バレンタイン特集★
〜カップケーキの作り方〜

ぐ、と手に力が篭った。こんな簡単なものじゃ、いや、でも、板チョコとくるみがまだ余っている。高3の冬、このイベントがラストチャンスだぞ。伝えなくていいのか。

「…とりあえず作るくらいなら、別に、減るもんじゃ、ないし」

なんて可愛げがないんだと自分で自分に突っ込みながら袋を開ける。
イタチ先生に今夜お暇ですかと一言メールを送って、腹を括った。先生の予定が空いていたら、今夜絶対渡す。絶対渡す。

レンジでカップケーキがもこもこと膨らんでいた頃、携帯がブルブルと震えた。これはメールではなくて、まさかの着信だ。

「はい、」
「ヒメさん?」
「あ、イタチ先生」
「メール見たんだが…なにかあったのか?」
「え、っと、」
「とりあえず今夜は何も予定がないから夕飯でも食べに来たらどうだ」
「行きます!すぐ行きます」
「ハハ、慌てなくていい、気をつけるんだぞ」
「はい!」

出来たばかりのカップケーキを大急ぎでラッピングして小さめの紙袋に入れる。
かなり出遅れたけど、なんとかちゃんと用意できた。
あとは言葉で伝える勇気が出るか出ないかだ。

「どんなことになっても、絶対泣かない」

そう決めて、家の鍵を閉める。
綺麗な夕焼けがなんだか私を切ない気持ちにさせた。


(20170606)

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thanx!! :)


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