謹賀新年


「あ、イタチ先生だ!」

キバが叫んだその声に、と言うよりは、その内容にドキンと肩が跳ね上がった。
彼が指さした方向を向けば、こんな時間の外出は今日だけだぞ、特別だからな、と優しそうに言うイタチ先生に頬の熱が上昇する。だって、だって、イタチ先生、着物着てる…!

「サスケもいるじゃん!」
「親戚の奴ら、ほとんど飲み潰れたからな…どうせならって来たんだ」
「ふーん」
「あと10分か…ほら、年越す前に温かい飲み物でももらってこよう、」
「俺腹減ったってばよー!」
「あっちで豚汁配ってるから行くわよ、ナルト!」
「おう!」
「あ、俺も」

ばたばたと急いで走っていくクラスメイト達を見送りながら、そんなに焦らなくてもいいかと後からゆっくり続く私たち。
見とれるようにイタチ先生から視線をそらさない私に、ヒナタがぼそっと呟いた。

「ヒメちゃんが好きなのって、もしかしてネジ兄さん?」
「えっ!な、なんで!?」
「イタチ先生のこと、ずっと見てるから…髪長い人が好きなのかな、って…」
「ちちち、違うよ、ネジ先輩のことは本当になんとも思ってないよ、むしろ存在を忘れてたくらいに!」
「そっか…名推理だと思ったんだけどなあ」

残念そうに眉を下げたヒナタ。あ、危ない。ヒナタって意外と見てるんだ、なんて思いながらうるさく鼓動を打つ胸に手を当てる。
本当にバレたのかと思って焦ったのも束の間、ずっと見ていたことが分かったにも関わらず、見ていた「イタチ先生のことが好きなんじゃないか」という憶測すら持たなかったヒナタに、やはりそれは教師と生徒の恋など有り得ないと思っているからなんだろうかと思うと少し切ない。考えつかないほどにご法度なのかと、複雑な気持ちがぐるぐると渦を巻く。
数歩前を歩くイタチ先生は、確かにどこからどう見ても私よりいくつも大人に見えるし、実際大人だ。大人に恋している私は、一体おかしいんだろうか。

「早く並ばないと年越しに間に合わねぇぞー!」

ナルトの声にハッと前を向く。
1回なにかを考え始めると脳内の思考回路に潜り込んでいつまでもぼーっとしてしまうのは私の悪い癖だ。ヒメちゃん、早く並んで暖まろうと腕を引かれるがまま走り、丁度イタチ先生の真後ろに並んで、割と至近距離に立つ彼からはほんのりシャンプーの香り。冬休みもあっという間にもう少しだな、と手帳を開いてスケジュール確認をしている先生を何気なく視界に捉えて、ああ、確かに、冬休みもあっという間にもうあと5日もないなあ、嫌だなあ、なんて思った矢先、私の視線は不自然にまた彼へと戻る。
スケジュール帳をトントンと叩くペン先、そのペンは、私が、私が何も言わず勝手にペン立てに置き去りにしてきた、あの少し値の張るボールペンで。
いや見間違いかと思ったけど、でも、何度見てもあれは間違いなく私が買ったそれで、


気づけば順番が来ていた豚汁配布列、


懐にしまわれてしまったスケジュール帳、


豚汁なんか飲まなくたってすっかり暑くなってしまった私、


ゆっくり食べる暇なく訪れたカウントダウン、

1、

「あけましておめでとう、今年もよろしくな」
「こ、こちらこそ、よろしくお願いします!」

今年一番最初にイタチ先生の笑顔をもらったのは私だと、自惚れてしまうくらいに頭の中はイタチ先生いっぱいで。
真っ赤な顔がバレないように豚汁を一気に飲み干してゴミ箱へと走る。

鳴り始めた除夜の鐘、激動の新年が始まった。


(20150102)

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thanx!! :)


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