そして、輝く


「ウールートーラーソウッ!」
「「「ハイ!!!」」」

やんややんやと騒ぐ一同、今日は今年最後の忘年会、という名のただ騒ぎたいがためのカラオケだ。
大晦日くらい家でのんびりしていたいと呟いた私まで引きずり出され、文句ひとつ言わないヒナタの隣でフライドポテトをつまみながら盛り上がっているクラスメイト達をぼんやりと眺める。本当に、これは来た意味があったんだろうか。でもまあ、それもこれも今年で最後だし、と言う結論で自分を落ち着かせながら追加で鶏の唐揚げを注文する。冬休みが明けたらそれどころじゃないだろうし、進学したら尚更だ。ものより思い出、というのは案外正しいことかもしれない。そこまで盛り上がっているところに混ざっていかないヒナタやシノ、シカマルも、めんどくさいと言いつつもなんだかんだこの場にはいるし、それはきっと私と同じような理由なんだろうなと今更ながら思った。

「あ、そういえば、ヒナタ、あれからナルトとどうなの?」
「えっ?ヒメちゃん、なんでそんな急に、」
「ヒナタが前からナルトのこと好きなのは知ってたからさ、なんかくっついたのが嬉しくて。」
「…ヒメちゃんは、好きな人いないの?」
「…」

いないよ、って笑って言えれば、それで良かったんだろうけれど。
一瞬言葉を詰まらせて黙った私を見て、ヒナタは色々と察したようで、微笑みながら「その想いが叶うといいね」って言ったから、なんでか知らないけど涙が少し溢れそうになった。

「ヒナタは、さ」
「うん」
「諦めようと思ったこと、ないの?」

私は一体何を聞いているんだと気づき、慌てて気にしないでと笑顔で取り繕ったけど、ヒナタはそんな無神経な質問にも笑顔で答えてくれた。

「そりゃ、ナルトくんには私よりもっと好きな人が似合うのかも、って思ったときはあったけど…」
「うん、」
「でも、それでも私の気持ちが変わったことはないよ。」

だから、そんなこと考えたことなかったなあ…と頬を染めながら言うヒナタに、頭をガンと殴られたような気持ちになる。
諦める諦めないよりも、とにかくナルトが好きだったヒナタだから、ナルトもきっと彼女のことを好きになったんだろうなあ。
はあ、とわかりやすく溜め息をついて俯いた私の顔を覗き込んで優しく背を撫でるヒナタの手に、クリスマスの夜のことを思い出す。イタチ先生に泣きついた挙げ句に寝落ちてしまったあの日、深夜に目を覚まして慌てて帰ると言った私を危ないからと送ってくれた彼。渡しそびれた思い出のボールペンは、リボンをつけたまま彼の机上のペン立てにそっと挿してきた。別に気づいてもらえなくても、使ってもらえなくてもいい。そう思って自分勝手な気持ちで押し付けてきてしまったそれだけど、心の隅では「いつかこの気持ちが伝わればいい」くらいには願っている。結局、私って欲張りだ。

「あ、あの、私、うまく言えないけど、応援…してるから」
「ヒナタ、」
「ヒメちゃんのことちゃんと見てくれる人、いると思うよ」
「…ありがとう」
「おし!そろそろ初詣行くぞー!!」

励ましの言葉をかけてくれるヒナタに笑顔を返したところで、ナルトが大声を上げる。
そう、今夜はカラオケのあと、そのまま神社で年越しと初詣をして、初日の出を見る予定なのだ。
あんな寒い外で年を越すなんてこいつら馬鹿かと思いつつも、その馬鹿ができるのも今年までだ、と何回も同じ言い訳を自分に言い聞かせて立ち上がる。
イタチ先生と一緒に年越したかったなあ、ってのは流石に贅沢すぎる願いかな。
白い息をはあと吐き出しながらコートのポケットに手を突っ込むと、ぶるぶると震えた携帯電話に慌ててそれを引っ張り出す。スライドロックを解除して開いたメールボックスの中には、イタチ先生からのメールが1通届いていた。

【今日行くのは安国神社か?今からサスケと行く】

あ、そういえばサスケの姿がない、とそのメールを読んで気づく。
うちは家の親戚の人たちとご飯を食べるから来れないと言っていたのを思い出した。それが終わったから年越しだけは来てくれるのかな。そう思いながら、【そうですよ、こっちも今向かってます】と返事をして、またコートのポケットへ押し込んだ。寒いはずの外がやけに熱く感じてるのは私自身の体温が急上昇したからだと気づくのにそう時間はかからなくて、冷たい手を頬に当てて深呼吸を繰り返す。

遠くに見えた神社のちょうちんが、やけにきらきら輝いて見えた。


(20141231)


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thanx!! :)


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