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「もうクリスマスかあ…」

隣を歩くサスケの何気ない一言に、肩がびくんと揺れた。
学校帰りにふらっと寄ったショッピングモールはまさにクリスマス一色で、通路沿いのお店はほとんど全てクリスマスにまつわる商品を割り引き価格で店頭に並べている。

「もう今年が終わるなんて、あっという間だね」
「そうだな…高校生活ももうすぐ終わりか…」

しみじみとしながら、スタバで買ったカプチーノをずず、と啜った。
クリスマス、か。
本当はイタチ先生にプレゼント、とか思ったけど、でも生徒からのクリスマスプレゼントなんて重いだろうし、そもそも付き合ってもないし何をあげたらいいかもよくわからないし…色々考えていたら最終的にはプレゼントなんてあげないほうが良いんじゃないかって結論に至ってしまって結局動かずじまいだ。難しいなあ。

「そうだね、あっという間だったね」

サスケのつぶやきに何気なく返答すると、なぜだかぽんぽんと頭を撫でられて、おや珍しいと顔を見上げれば「こっち見んな」と怒られて、あれ?私なにかしたかな。今日のサスケもなんだか難しそうだ。
この人は喜怒哀楽を滅多に口にしない上に意外と気分屋だからたまにどう接していいかわからない時があるんだよなあ、なんてこっそり思っていたところで腕をぐいっと引かれてよろけた先には本屋が見える。ああ、そうか、そういえば参考書を買いに来たんだっけ。
サスケは、とりあえず国立大学を目指しているんだと聞いた。サクラちゃんは看護の専門学校、ナルトはお父さんのようになりたいと言って教育大学、シカマルは法大、いのは心理学を勉強したいって言ってたし、ヒナタは保母さんになりたいんだって。みんなのことはそこまでスラスラ出てくるのに、私は自分のことになるとどうしたらいいかわからずじまい。参考書が並ぶこの大きな本棚を前にしても、気になる本のひとつも見つからない。
曲がりなりにも特進クラスに属しているから成績はそこまで悪くはないけれど、でもだからって特別秀でているわけでもなく、常に可もなく不可もなくをキープ。カカシ先生は「やりたいことないの?」って聞いてくるけど、自分でも驚く程に「ない」のだから困る。そうこうしているうちに進路面談どころかお受験、と言うか推薦組はもう動いている。

「おい、聞いてんのか?」
「あ、ご、ごめん、ぼーっとしてた」「ったく…そう言えばまだ進路決めてないのか?」
「うん、お金がかからない国立がいいな、とは思ってるんだけど、」
「参考書は?」
「わかりやすいのあったら教えて欲しいな」
「…これはイマイチだった、これは文字が小さすぎ、あれは説明がいちいち難しい。これかこれなら…全部カラーだし見やすくていい」
「ありがとう、じゃあ…これ買ってみよう、かな」
「お前受験勉強する気あんのか?」
「あ、あるよ!流石に浪人とかしたくないし!」
「…ふーん」

ま、焦らず頑張れよ、とまた私の頭を撫でつけるサスケの心境が全くもって読めない。
でも、きっと彼は私が進路で悩んでるのを少なからず心配してくれているんだろうなとは思った。
先月の2者面談の時、進路が決まらなさすぎてカカシ先生と2人して頭を抱えたんだとサスケに呟いたのは記憶に新しい。
再度彼にありがとう、と告げて参考書を購入し、店を出る。とっくに飲み干していたカプチーノのカップをゴミ箱に捨てて携帯の時計を見れば18時、なかなかいい時間だ。

「ヒメが、もし進路全然決まらないんだったら」
「ん?」
「俺と同じ大学に行かないか」
「え、」
「俺が目指してるのも国立大だし、就職先も割と幅広い。目標が同じだったら勉強も頑張れるだろうし、まあ、もし進路が決まらないんなら、の話だが」

ひと思いにそう言い切ったサスケに圧倒されてつい開いた口が塞がらない。
確かに、悪い話ではないし、そう言われていなくても自然とそこの国立大学を選択する可能性は充分にあった。カカシ先生からも勧められていたところだ、いいところなんだと思う。でも、なぜだか今の私はふたつ返事でそれを了承できなかった。別にやりたいこと、なりたいものがあるわけではないのに、なんでだろう。

「じゃあ、帰ったらどんなところか調べてみるね」
「ああ」

曇った表情を浮かべて私の顔色を伺っていたサスケの顔が、少し晴れた。
今日は寒いし一楽にでも行くか、そう言って歩き出した彼の背を追いかけながら、そうだ、今度イタチ先生に進路相談してみようかなと思い立つ。

寒空の下、気づけば綺麗な初雪がちらちらと舞っていた。


(20141217)


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thanx!! :)


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