ぬくもり
(イタチ)



「さむっ…」

早朝、あまりの寒さに起きてしまった私は両足を深く折って布団の中でさらに丸くなった。季節は夏の終わり、秋の初め。気温は朝と夜が最も低く、気付けば、いつも朝のこの時間は毎日寒さと戦っている。うっすら目を開けると、隣には顔をしかめることも、膝を曲げて丸くなることもせず、いつも通りの綺麗な顔で寝ているイタチが目に入った。まるで死人のように微かな寝息をたてて寝ている彼を見て、私はニヤリと口角を上げ、身体を少しずつ彼のほうへと動かしてゆき、そっと伸ばした足に足を絡ませる。彼のぬくもりに顔をほころばせた瞬間、背にぐっと回された腕に一瞬身体がこわばった。

「お、起きてたの?」
「寒いなら寒いと早く言え。」
「ご、ごめん…」

ぎゅ、っと抱きしめられて一気に暖まる身体、上昇する心拍数、おでこにさらりと降りかかる吐息、自分を包む全てが彼の香り。はぁー、幸せってこういうことを言うんだろうな、って改めて感じる瞬間、心地良い。そんな幸せを噛み締めながらもう一度目を瞑ろうとしたとき、彼の腕に少し力が入った。それに応えるかのように、私は彼の胸に頬を寄せる。そのとき、ふと感じる違和感…丁度、私の太ももの辺り。なんか…ものすごく硬くて、暖かくて、なんだか…時々動く。残念ながら寝ぼけている今の私には、それがなんなんだかを冷静に考える思考回路はなくて、でも、気にはなっていて。その好奇心に胸動かされるままに、自分の太ももをぐいっと上げてみる。そして未だぼーっとした頭で何も考えずにそのまま太ももを上げ下げしていたら、急に上を向かされ、塞がる唇。

「んっ、」

え?今のタイミングでキスするの?私、まだ眠いのに…なんてぼんやり思っていた矢先、私を抱いていた彼の腕が私の胸を撫で回したとき、やっとクリアになった思考回路。下半身の異物がなんなのか、それはとっても簡単なことだったじゃないの。深い深いディープキスが途切れたとき、私は小さくごめんね、と呟いた。彼は何も言わずに私のブラのホックを外す。あぁ、なにがどうなっても、これからするのね。私が引き金を引いてしまっただけに反抗できず、(まぁ、実を言うと私もすでにその気になっているのだけれど)大人しくされるがままにイタチに身を任す。ちらりと外を見ると、いつの間にかもう随分と明るくなってきていた。たまには、こういう朝も悪くないかもしれない。


ぬくもり

2人で、暖まろうね。



2012/9/28
朱々




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