白雪王子3
(イタチ)



少し長めの口づけのあと、どちらからともなく唇を離すと**は真っ赤な顔をしてうつむいた。勢いで思わず口づけしてしまったイタチも、どうしたら良いか分からぬままに彼女を抱き締める。暫くして、口を開いたのは姫の方で。

「…ここ、冷えませんか?」
「あぁ、この小屋には暖炉がなくてな…夜は毎日このような室温だ。」
「そんな…早く私の城へ行きましょう、温かいスープも、お風呂だってあります、身体を休めないと…」
「いや、そんな迷惑をかけるわけには」
「私が…うちは様と共に居りたいのです!」

彼女が熱弁のあまりに彼の両肩へどん、と両手を当てた瞬間、身体が揺れた反動でぱさりと落ちたマントのフード。**は初めて見る彼の端正な顔に思わず息を呑んだ。女でさえ羨むような漆黒の髪、雪色の肌はとても同じ人間とは思えぬほどだった。

「あっ…ご、ごめんなさい、私…」
「そこまで言うなら…、城までお供させていただきます、姫様。」
「はいっ!」

そして2人で城にこっそり忍び帰るも、馬を連れているため流石に途中で家臣に見つかり、**は鬼鮫にこっぴどく叱られるはめに。家臣で彼女にここまで口を出せるのは彼くらいのものなのだが、いかんせん話が長すぎるのがいただけない。そして彼は姫を叱る途中、ようやく後ろに佇む青年の姿を認識した。

「あっ、あれはいつぞやの!…姫様!!」
「私にとやかく言うのは構いませんが、彼への態度は慎みなさい。彼は私の婚約者なのですよ!」
「…え?と言うことは、まさか、生きていらしたのですか、」
「名は、うちはイタチ。夜分遅くに申し訳ない…せめて今夜だけでも宿を貸していただけぬものか、」
「いやいや、そんな今夜だけなんて、ご無礼をお許しください!」

青年がうちは国の王子だとわかると、鬼鮫はひぇえと情けない雄叫びをあげながら一目散に城の中へ駆けていった。その姿を見て、**はくすくすと笑う。

「失礼なことを言ってごめんなさい、あれはあぁ見えて私の側近なのです。」
「その様ですね。」
「さ、鬼鮫が食事の用意を終える前に湯に浸かりましょう、ご案内しますわ。」

ん?家臣が食事の用意までするのか?と首をかしげながらも、彼は姫に案内されるがまま浴場へと通されたが、着替えを用意しておきますね、と扉を閉めようとした彼女の腕を慌てて掴み止めた。彼女の身体は雨のせいで冷えきっている。

「…姫が先に入ると良い、女性が身体を冷やしたままなのはよくない。」
「わ、私は着替えの支度がありますので大丈夫です、」
「大丈夫ではない、そんなことをして、将来、子ができにくくなったらどうするんだ」
「えっ、」
「えっ」

少しの沈黙のあと、イタチは無言のまま、**にばさりとバスタオルをかけた。赤い顔をして下を向いたままの彼女に、俺は後でいい、と告げ、脱衣所と浴槽の間のカーテンを閉める。

「あ、…ありがとう、ございます。」
「…気にするな。」

暫くして、シャワーから水の流れる音が響いた。イタチは尻をぺたりと床について片手を額に宛がい、はぁ、と深い息を吐く。

「…なんてこっぱずかしいことを…」

だが、うちは国を再興させるのなら、彼女とが良い。そんな夢を抱きながら、彼は湯から立ち上る湯気で暖まってきた部屋の中でゆっくりと意識を手放した。



To be continue ...


20130612
しゅしゅ



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