白雪王子2
(イタチ)



あの衝撃的な知らせから、数日後。

姫は毎日山に出掛けては、あの日会った青年のことを捜し続けていた。けれど姿はおろか手がかりすら掴めず、肩を落とし城へ帰る日々。そろそろ家臣たちも外へ出ようとする姫を止めるようになり、途方にくれていたある日、彼女は思い切ってみんなが寝静まった夜にこっそりお城を抜け出そうと決心する。天気は生憎の雨だったけれど、そのお陰もあって足音が消え、思っていたより簡単に抜け出せた。

「…っうちは様ーっ、うちは様ーっ!いらっしゃらないのですかー!?」

雨の中、山の森の中で彼女は声を枯らして叫ぶ。動物の姿さえ見られない森の中で散々捜したが、やっぱり居ない。あまりにも悔しくて泣いてしまいそうになったとき、視線の先に小さな小屋が見えた。

「…あんなところに、山小屋があったのね!」

もしかしたら、なにか手がかりがあるかもしれない。そう考え、すがる思いでドアをノックした。

「あ、あの、どなたかいらっしゃいますか?私…捜してる人がいるんです、もし良かったら、んぐっ、むんん、んんーっ!!」

突然、後ろから口元を押さえ付けられて彼女は驚きのあまりもがく。しかし口元を押さえている手はびくとも動かず、そのまま彼女は小屋の中へ押し込められた。後ろで、がちゃりと錠の落ちる音がする。あぁ、もう簡単には逃げられなくなってしまった、かくなる上は、と懐にしまってある短剣に手を伸ばそうとしたとき、容易く解放された口元。耳許で「静かにしろ」と呟かれた声が、彼女を振り向かせた。

「うちは様!!」
「…なぜ、それを」
「あぁ、あの日と同じマント!やっぱりあなたはうちは様だったのですね!」

ぎゅうっと強く抱き締められて、彼は戸惑う。あの日?あの日とは、もしや**とか言う姫と出会った日のことか?と言うことは、この少女は姫?なぜ名前も教えていないのに?数々の疑問が浮かび上がるなか、笑顔で頭を上げた彼女の顔を見て、彼は確信する。

「…**、」
「私の名前を覚えてくださっていたのですね!ずっと、ずっと捜しておりました!」
「どうして…」
「私は、暁国の姫。うちは様の許嫁にございます。」
「…!」
「ずっとお会いしたかった…!!」

ショートする思考回路をなんとか働かせながら、彼は考えた。確かに、許嫁がいると言う話は父上から聞いたことがある。許嫁には、16歳の誕生日パーティーで会えると言う話も聞いていた。と言うことは、まさか本当に彼女が自分の結婚相手と言うことなのだろうか。

「先日、うちは国が襲撃を受けたと聞きまして…、いてもたってもいられなくて、私…本当に不安で!」
「…すまない…俺のために、こんなに汚れてまで」
「うちは様の悲しみに比べたら、こんなこと大したことではございません!…無事で良かった…!」

涙をぽろぽろとこぼしながらそう言う彼女が無性に愛しくなって、彼は引き寄せられるように彼女の唇へキスをした。



To be continue ...


20130611
しゅしゅ



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