白雪王子1
(イタチ)



むかしむかし、ある小さいけれど強大な国を立派におさめる王様とお妃様がおりました。2人の間には男の子が産まれ、イタチと名付けられた彼の髪は闇のように黒く、肌は雪のように白く、とても美しかったので国の民は彼のことをこのように呼びました。


白雪王子、と。


しかしイタチが13歳になったとき、この小さな国は同盟を結んでいた大きな国から攻撃を受けました。そう、同盟が一方的に破られてしまったのです。国はあたり一面を火の海に包まれ、誰もがもう無理だと思ってしまう状況の中、王様とお妃様は我が子だけでも、と、イタチを馬に乗せ逃げるように命じたのです。


「やーっ!」
「やれやれ、今日も姫様はお元気で何よりです。」
「今日は天気が良いので向こうの山まで行ってみようかしら。」
「いけません、今日は午後からダンスのレッスンが」
「晴れの日じゃないと遠くには行けないわ!今行かなくていつ行くって言うの?」
「…それは…」
「今でしょっ!!」

ぱしん!と馬の尻に鞭を打ち、山へ向かって走るこの少女は**、彼女はとある国の王女様で、家臣が少々手を焼くほどにおてんばなのが珠に傷だが、容姿は誰もが振り返るほどに美しく、非常に優しいお方でありました。
さて、彼女は山の中ほどまでたどり着いたとき、川のふもとで水を飲んでいる1人の男を見つけた。黒いマントに身を包み、フードを被っているために顔はよく見えないが、彼が連れている馬の毛並みが非常に良かったのが気になって、彼女は警戒もせずに彼に近寄る。

「あの、ちょっとお尋ねしたいのだけど…良いかしら?」
「…」
「この馬、一体手入れは誰がしているの?すごく綺麗ね!」
「…城の者がやっていた、俺は知らない」
「城?城と言うことは、あなたは」
「姫様!知らぬ者に容易く近寄ってはなりません!」
「そんな、彼は悪い人なんかじゃ…、あっ、待って!!」

暫くして**に追い付いた家臣が驚きのあまり声を荒げると、マントに身を包んだ彼は弾かれたように馬に飛び乗りその場を離れた。その時、フードがふわりと外れ、綺麗な黒髪がさら、と風になびく。マントの背には、大きな紋章が描かれていた。

「…っ私の名前は**、**よ!!覚えて…おいて、ね…」
「はーっ、姫様!あれがもし盗賊だったらどうするおつもりですか!もう少しご自分の立場をわきまえた行動を」
「あの人は盗賊じゃないわ。盗賊の馬は…あんなに綺麗じゃないもの。」
「だからといって…」
「ってゆーか!鬼鮫!あんたが遅いのよっ!私につく家臣だったらもうちょっと立派になりなさい!!」
「は…、はい…」

一方その頃、山奥の小さな小屋まで走り逃げた青年は、一目散に小屋へ入り鍵をかけた。幸い追ってきてはいないようだが、あの少女は「姫様」と呼ばれていた。もしあれが自分の国を滅ぼした同盟国の姫だとしたら…。しかし不安な気持ちとは裏腹に、彼の脳内では彼女の顔が浮かんでは消え、浮かんでは消え、その度に彼の胸を熱くさせる。

「…**…」


丁度お城で渋々ダンスレッスンを終えた**は、図書室にこもり1人でなにやら調べものに没頭していた。今日出会ったあの青年の背に描かれていた紋章、あれがどこの国のものか分かれば、きっとまた会えるはず…

「あ、あったぁ!やっぱり彼は王子だったのね、私の推測に間違いは」
「姫様!…お、お知らせが…」
「…なに?」
「隣の国が…隣のうちは国が、火の国にやられたと…いま、」
「え…っ?」

ばさりと、彼女の手から本が落ちた。



To be continue ...


2013/06/11
しゅしゅ



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