PRAY
(イタチ)


広い世界の中で、私は一体どれだけの強い力を持っているんだろう。ため息を吐いたら広がる不安、この自分の無力さに何度絶望したことか。いくらこの身体に流れている血が特別なものだったとしても、この眼が世界に2つとない力を持つものだったとしても、無力なときは無力なのだ。現に私の一族は私が幼いときに滅ぼされ、今生き残っているのは私だけなのだから呆れる。結局、私の一族は肝心なときに何もできないらしい。そして、例に漏れず私もそう。大切なものを何ひとつ守れず、ただ時間を無駄にした。世界で一番に愛し尽くした人すら守ることができなかったのだ。下を向けば思わず零れる涙、それを拭う力すら出せないほどに脱力した私は、目の前に横たわるイタチを見つめる。彼はたったさっきサスケとの闘いで力尽き、私の眼前で倒れたのだ。それは当然、私が無力だったから。いくら彼に大声で止められたからとは言え、何もできなかった私はただの馬鹿だ。

未だ、涙は止まることなく私の頬を伝う。

もし「一生のお願い」というものがたった1つだけ本当に叶うのなら、私は何よりも彼の幸せを心より願うことでしょう。
彼は私の知る限りでは自分自身のために生きるということを1回もしてこなかったのではと思う。この世に産まれたときから、うちは一族の宿命を背負い、両親からのプレッシャーに圧され、挙句の果てには木ノ葉の里との間に挟まれ、弟サスケをダシに一族を自らの手で葬り去らねばならなかったのだから、こうして思い返すだけでも虫唾が走る。そして里を抜けた後でさえ、彼はサスケのために命をかけていただなんて。

嗚呼どうか、彼がこの天の上では笑顔で安らかに過ごせますようにと、私は目を閉じて切に祈った。


PRAY

(そしていつかきっと2人で、)



2013/05/10
朱々



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