Love,love,love!!!



円華様
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「ねぇ、イタチは好きな人いる?」

突然放たれたその台詞に、俺がどれだけ驚いたことか。今まで俺たちの間でその話題はタブーではなかったのか?と衝撃を受けると同時に、でも、それは俺が勝手に思っていたことだったのかも、と思い直す。とにもかくにも、今俺の目の前にいる幼馴染の○○は、興味津々な表情で俺の顔を見上げていた。つぶらな瞳でじっと見つめてくる彼女の姿に、思わずたじろぐ。

「な、なんで急にそんなことを、」
「だって、アカデミーの友達はみんなそんな話ばっかりするんだもの。」
「…○○は好きな人いないのか?」

よし、これで形勢逆転!そう思って心の中でガッツポーズをするも、彼女は顔色ひとつ変えずにあっけらかんとそれに答えた。

「私ー?私は好きな人いっぱいいるもん。お父さんもお母さんも好きだし、先生も好きだし…でも、」
「…でも?」
「それは違うよって、言われちゃったの。」

あぁ、なるほど、と俺は妙に納得する。○○は友達にそう言われてなんのことか理解できなかったから、こうして俺に聞いているのか。話が分かれば可愛いもんじゃないか、と、俺は微笑む。そんな俺を不思議そうな目で見つめる彼女を見て、よし、ここはひとつからかってやろうか、そんな邪念が渦巻いた。もしかしたら、この流れで彼女に対する桃色な思いをスムーズに伝えられるかも、なんて良からぬことを思ったのも事実だけれど。

「あぁ…それは少し違うな。」
「イタチは、イタチは違うの分かるの?」
「俺も父上や母上のことが好きだが…その『好き』と、○○に対する『好き』は違う。」
「…え?」

しかし○○は不純な気持ちを孕んだ俺の言葉を聴いた瞬間、信じられないといった風な顔をして泣き出した。まさか彼女が泣くなんて思ってもいなかったし、今までずっと一緒に過ごしてきたこともあって多少の自信があった俺にとって、自分の気持ちを伝えることで彼女を悲しませてしまうなんてちっとも想像していなかったんだ。だから彼女をうまく慰めてやることもできなくて、俺はただ情けない顔で彼女に聞く。

「○○は…俺のことが好きじゃないのか…?」
「好きじゃないよ…!!」

終わった。

俺の淡い青春時代が、今見事に幕を閉じようとしている。俺自身もこの気持ちがなんなのか分からずに1人で悩んだ挙句、先日母上が見ていたドラマでのやり取りを見て「これが恋という感情なんだ」と悟ったばかりだというのに、その矢先にこれだ。ありがとうございました。
しかし○○は俺の気持ちなどお構いなしに、顔を真っ赤にしてまだなにかを言おうとしている。いや、お願いだからこれ以上この冷え切った心に追い討ちをかけるのはやめてくれ、そう思いつつ俺は希望を失った絶望的な目で彼女を見た。

「だって…イタチのことは…好きじゃなくて…大好きだもん…!!」

そう叫んだ○○は、さっきとは比べ物にならないほど顔を赤く染めてうつむく。見なくても分かる、今の俺の顔も絶対に真っ赤だ。それにしても、なんて可愛い告白なんだろう。俺が彼女に「好きだ」と言ったときに泣いたのは、そういうことだったのか。彼女に向かってゆっくり手を伸ばし引き寄せて抱き締めると、俺より少しだけ小さなその身体に似合わないほどの大きな鼓動が、俺の胸に響く。さっきの絶望感はどこへやら、今の俺の頭上には天使が舞っている(ような気がする)。だが、そんな有頂天な俺とは正反対に、○○は口を尖らせてぶつぶつとなにか呟いていた。

「でも…イタチは違うんでしょ、」

ずぎゅん!と脳天に電撃が走ったかのような感覚が俺の心を締め付ける。嗚呼、なんだこのとてつもなく愛しい感覚は!思わず○○を強く抱き締めすぎてつぶしてしまいそうになるのを必死に抑え、俺はできるだけ優しく彼女の頭を撫でた。○○がこんなに頑張って思いを伝えてくれたのだから、俺もそれにしっかり応えねば、そう思ったら余計に口からセリフが出ない。

「…違、く、ない。」

少しの間を置いて、やっと途切れ途切れに出た言葉。ほんのさっきまで余裕ぶっていたくせに、いざというときはこのざまだ。自分で思うよりずっと、俺は緊張していたらしい。彼女が、たどたどしく俺の腰に腕を回す。

「…じゃぁ、イタチも…私のこと、大好き?」

あぁ、もう!!この高鳴る感情に身を任せるがまま、俺は弱々しい震えた声でそう問う○○の口を、自分の口でふさいだ。


Love,love,love!!!

(これが、俺の初恋です。)


2013/05/28
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thank you!! :)



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