無口な私と無愛想な君


甘(学パロ)
ゆか様へ 36000Hit記念



「では、これにて終業式を閉式します。各自モラルのないことには身を興じないよう、我が校の生徒らしく慎ましく過ごしてください。」

礼、

私に向かって下がる全校生徒の頭。私もまた、それに礼を返して体育館のステージを降壇する。ここは割と名の知れた名門校で、偏差値は高く、そのせいか様々な校則や規律に縛られていた。例に漏れず生徒会長である私も決して緩いとは言えない校則に縛られている者の1人で、終業式も重苦しい空気が私の首を絞めているようで非常に息苦しく。生徒会室のソファーに身を投げ出した私は深いため息を吐いた。

「随分と重々しい終業式だったな、」

まるで私を嘲笑するかのようにそう言い放つこの男は我が校の生徒副会長で、彼はなにも言わぬ私を気にせずカフェオレを作って私の目の前のテーブルの上に乗せた。ありがとう、と御礼を述べて其れを啜る。私好みの甘いカフェオレが疲れた身体に染み込んだ。

「理事長が言うより、私が言う方がまだ易しいわ。イタチこそ、もう少しストレートに労(ねぎら)ってくれれば良いのに。」
「…お疲れ様。」
「うん。」

終業式での緊張感がすっかり解けた私はソファーに身体を預けたまま動けずにいたが、イタチはデスクに向かい業務をこなしている。少し空いた窓から吹き込んだ風が彼の綺麗な黒髪をさらりと浮かせた。

「それにしても会長は人気だな…ラブレターの数が半端じゃない。」
「会長って呼ばないで。」
「…学校だぞ。」
「今日はもう『会長』したくない。」

イタチは、膨れっ面をする私のところまでやってきて頭を撫でる。いつも全校生徒の前で見せている冷静で酷く無口な私は本当の私ではない、が、半数以上が同性からのものであるラブレターに綴られている想いは全て『生徒会長である私』に向けられたものであり、私はいい加減そのラブレターに嫌気が差していた。けれど全校生徒の前と見知った人の前とで人格を使い分けているのも自分自身。もうなにも考えたくない。再度ため息を吐いて首元のネクタイを しゅる、と外した。

「自暴自棄か?」
「どうしてあなたっていつもそうなの?」

仮にも恋人である彼の素直じゃない性格など解りきっているのに、それにさえなんだか苛ついてしまう。本当に自棄なのかも。開き直った私はソファーに横になり、目を閉じた。余談だが、生徒会室は最早私たち2人のための個室のようなものになっており、私がこの校内で唯一くつろげる場所と言っても過言ではない。

「寝るのか?」
「んー…」

全く答えになっていない声をイタチに返して、私は目を閉じたまま。暫くして彼のブレザーがふわりと身体にかかった。彼の香りが私の胸いっぱいに広がる。

「今やってる業務が終わったら声をかける。」

ちゅ、と重なる唇。やっぱりイタチは優しい。自然と上がる口角をそのままに、私は朦朧とし始めた意識をゆっくり手放す。耳の奥で、イタチがパソコンのキーボードを叩く音が微かに聞こえた。




(おはようイタチ…)
(生徒会長は日が暮れるまで業務に勤しんでらっしゃったようだ、校内では今そんな噂が流れている。)
(…しまった)


2012/05/30
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thank you!! :)



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