熱に浮かされて


甘ギャグ
月夜へ 12100Hit記念



虚ろな目でぼんやりと天井を見上げる。

目の前には明るい蛍光灯が光り輝き、私を照らしていた。しかし暫くしてとうとうその光りに目が眩み、私は目を逸らす。すると今度は突然ドアップでイタチの美顔が現れ、遂に私はそこでショートした。



「…全く、失礼な奴だ。」
「ごめんってば…」
「具合が悪いなら早く言え。」

先程とは打って変わって、時間はいつの間にか翌日の昼間。どうやら私は昨晩から風邪を引いて熱を出し、気を失っていたようで、頭には冷たいタオルが、ベッドの回りには果物がたくさん、そして隣には愛しのイタチが座っていると言う、この上ない幸せに囲まれていた。(あ、熱のせいで日本語おかしいかもしれない、)

「で…この果物たちは…?」
「あぁ、これは他の奴等が見舞いに来たときに置いていった品だ。お前は爆睡していたがな。」
「起こして欲しかった…!」
「病人は寝るのが仕事だ、仕方ないだろう。」

そう言いながら、イタチは黒地に赤い雲が描かれている派手なコートをばさりと羽織る。その瞬間、私は彼のコートを掴んだ。

「…離せ。」
「嫌だ、どこに行くの?任務?」
「俺にはやらなければならない使命がある」
「やだ、そんなの関係ない、病人を置いてどこかに行くつもりなの?」
「それが妥当だろう?」

当たり前の判断だ、とそう言ってイタチは私の手から無理矢理コートを引き剥がす。やだやだやだ、しかし泣いて喚いても彼は顔色1つ変えずに私から遠ざかろうとしていた。この鬼畜長髪美人め、その綺麗な両手に林檎と苺を抱えて…

「○○はどっちが良いんだ?」

あれ?私の頭は再び混乱する。イタチはそんな私にお構いなしに「早く選べ」と不機嫌そうな顔で言った。なんだ、果物を用意してくれるのか。それだけでなんでわざわざコートなんか羽織るのよ、変な勘違いしちゃったじゃない、もう!急に安心した私は笑顔で「苺」と答える。あのうちは一族の末裔やらS級犯罪者やらなんやらと謳われるイタチが甲斐甲斐しく苺を洗っているところを見れるなんて、凄く素晴らしい私だけの特権。ちゃんとヘタも取ってよね、強いて言うならコンデンスミルクをかけてくれるとありがたい。そんな身勝手な私の我が侭に応えてくれるあなたが好き好き好き。(只今の体温39.4℃)

「じゃぁ、これを食べて大人しくしてるんだぞ。」
「…っ、はい?」
「俺はこれから出掛けてくるからな。」
「ちょっと待ってよ、やだ、私はイタチと一緒に居たいよ、離れたくない!行かないでってばー」

寂しさが限界まで募った私は、柄にもなく声を上げてわんわん泣き始める。え、なに?結局本当に出かけるの?なんでよりにもよって私が熱で寝込んでいるときに任務に行くの?私が嫌いだからなの?ふざけんじゃないわ、ペインを今すぐここに呼んできなさい、説教してやるんだから!…そう言う気持ちを全部涙に変えて、私はイタチに精一杯訴えた。でもイタチは少し困ったような表情を浮かべただけで、躊躇いもせずにすたすたと玄関まで歩いていく。

「…俺は行ってくるからな。」
「…」

もう良い。もうイタチなんか知らない。私は彼に返事もせず寝返りを打つ。どうせ私より任務の方が大事なんだ、高熱を出して寝込んでる私のことなんてどうだって良いんだ!それにしてもこの苺物凄く甘くて美味しい、イタチありがとう、やっぱりコンデンスミルクいらなかったかもしれない。
突然、イタチに背を向けて泣きながら苺を頬張る私の身体を誰かが強く抱き締める。やめてよ、もう中途半端な愛なんて要らない、私は誰も信じない。求めた側から失うなら、もう何も求めないって決めたの。

「何も欲しいものはないんだな?」
「…手に入るならイタチが欲しい」
「強情な奴だ、○○のために薬を買いに行ってくるだけで、なんでそんなに責められるんだ俺は…」

そのセリフを聞いた私は、ものすんごいスピードで後ろを振り返る。え?もしかして任務って私のための買い出し?元気な声でそう聞いたら、彼は呆れた顔で私にキスをくれた。

「こんなに弱っている状態の○○を置いてそんな遠くまで離れる訳がないだろう?」
「うん、ごめんね、大好き。」

そう言って抱き付いたら、またキスが降ってきた。




(どうやら恋の天秤は釣り合っていたみたい。)


2009.3/10
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thank you!! :)



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