ぎり、ぎり、

荒縄が腕に食い込む。
私は真っ暗な世界にいる、陽の光さえ入ってこない、この冷たい床の上に座らされているのは一体いつからだっただろう。
確か私は任務に出て、その途中で敵に捕まって…。でもそれからどうなったか、記憶がない。
日付も時間の感覚も分からない、そう言えば今は何月何日の何時で、私は今どこにいるのだろう。

そんな中でただ空腹だけが私がここに来てからそれなりの時間が経っているであろうことを教えてくれる。
なんとかしてこの縄が解けないものかと身をよじった瞬間、ふと、人の気配がした。
真っ暗だから何も見えない、見えないけれど、何者かが確かに私の近くにいる、そんな感覚。

ぎゅう、と心臓が握り締められたように縮んだ。こわい。

「だ、誰か、いるの?ここはどこ?」

ずる、と衣擦れの音がした。あ、やっぱり誰かいる。こわい!でも、私は縛られているから動けない。
ひい、と情けない声が口から漏れたところで冷たい何かが私の顔を撫でた。

「ひっ!た、助けて…!」
「女など要らぬと言ったのに…余計な世話を」
「え…?」
「まぁ、いいか…お前、名は」
「…ヒメ…です」
「…ヒメ」
「は、い、あああ!!」

名前を呼ばれた反射で返事をした瞬間、縛られていた縄が強く引かれ、あまりの激痛に飛び出た叫び声が響く。自分の足でなんとか身体を支え立ち上がると、マッチを擦る音と共に小さな灯りが点いた。それは蝋燭に火を灯したあと、私のつま先から鼻先までをずいっとなぞる。灯りの先には綺麗な黒髪が見えた。

「…木ノ葉の忍、なのか」
「どう…して」
「左肩の刺青、それは木ノ葉の暗部のものだろう」
「…」

ここで私はようやく、自分が薄い下着の他には何も身に纏ってないことに気付く。この状況ならこのあと何が起こるかなんて馬鹿でも解る。
悪寒がぞくぞくと背中を走った。

「よりにもよって木ノ葉の忍を寄越すとは…悪趣味な奴等だ」
「…」
「床は冷たかっただろう、」
「痛っ…」

乱暴ながらも座らされたのは柔らかなベッドの上で、さっきよりは幾らか居心地が良いけれど、更に身の危険が迫っているような気がしてなんとも複雑。案の定、私を縛っている荒縄はベッドの柱に括りつけられ、身体は横倒しにされ危機感と警報だけが脳内をガンガンと鳴らしている。どっちみち、わかっていても抵抗なんて出来やしないのだけれど。

「な、なに、を」
「…怖がらずとも、乱暴にはしない」

つ、と綺麗な指が私の身体をなぞる。その指はゆっくりと下着を捲くりあげ、頂きに触れた。
知らない男にこんなことをされるなんて、恥ずかしいどころの騒ぎではない。
ぎゅっと目をつむった直後にねっとりとした感触が胸を這いずり回る。ざらざらと舌が頂きを舐め回しつつく度に身体は意に反して跳ねる。そしてその度に荒縄は容赦なく手首を絞め付けた。

「…感じているのか」
「そんなこと、なっ…ん、ん」

口内に挿し込まれた舌に舌を絡め取られて言葉が止まる。
なんで、なんでだろう、相手は知らない男だし、顔もろくに見えていないのに。なのにそんな男相手でも私の身体はこんなに反応するの?
私の上に覆いかぶさっている彼は、深い口付けと胸への愛撫だけでゆらりと動いた私の脚を捕まえて左右に大きく開いた。そして両足の間へ身体を割り入れる。
やだ、これでは足が閉じられない。

「ヒメ…確かそんな名前の奴が、俺の部隊にも居た…昔の話だ」
「…」
「だから、名前を聞いた瞬間…お前のことを抱いてみたいと思ってしまったんだろうな」
「っ、あなた、は」
「…許せ、」
「あっ!」

下半身の蜜口に捩じ込まれた指が思いのほか熱い。
ゆっくり押し入ったそれは丁寧に内壁を擦りながら上下運動を繰り返し、口を塞がれたままの私はただひたすらにだらしない声を漏らし続けるしかなかった。
彼の親指が私の陰核を弾く度に腰が跳ねて、その度に指が奥へ奥へと挿入される。

不思議と、もう恐怖心はなかった。

陰核が押し潰された瞬間に頭が真っ白になって、視界がぼやけてきた直後に身体の中心へ挿入ってきたそれを、私は難なく受け入れる。
むしろ、気持ちいいとさえ思っているのだからもうどうしようもない。
彼の男根が根元までずぶりと挿入されたあと、なぜか涙が溢れてきて思わず横を向いた。
彼からしたら、私はただの性欲処理器だと言うのに。なのに、なぜ彼はこうも優しいのか。なぜ、まるで恋人を抱くかのように私を抱くのか。

「…お願い、縄を解いて」
「…いや、それは」
「絶対に逃げたりしないから…お願い、」

なぜ、私のことをこんなにも簡単に信じてくれるのか。

ぱらりと解かれた縄、血のにじむ腕で私は彼に抱きついた。
唇を重ね合わせて、自分からやわく腰を振って。そうすれば彼の動きも自然と激しくなる。
良いの、良い、もう、私はこれで良い。
本当は捕らえられた時点で殺されていたかもしれない、でも私は生きていて、優しい人に優しく抱かれているだけで済んでいるのだから、まだ悲劇にはなってない。

彼だけに縛られることになるなら、それでもいい。

中を突き上げる男根が絶頂を訴えている。私の限界ももう近い。
私は彼の左腕の刺青をなぞりながら、息切れた声で問う

「あなたの名前は…なんて言うの?」


きっとそれが知っているものであると、信じて。


(20140123)

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