深夜3時、誰しもが寝静まっているであろうアジトへ帰り、そっと自室のドアを開ける。
案の定部屋の電気も点いていなくて、つけようとスイッチへ伸ばした手は寸でのところで止まった。もしかしたら、寝ているヒメを起こしてしまうかもしれない。少し考え直して、ベッドサイドの小さなルームランプをかちりとつけた。コートを脱いでハンガーにかけ、後ろを振り返る。暑かったのか、半分足を出して寝ている彼女はあろうことか下着しか身に着けていなくて思わず生唾を呑んだ。い、いや、何を考えているんだ自分は。相手は寝てるんだし、そもそも任務帰りだし。
邪心を振り払うかのようにとりあえず汗を流そうと目をそらし、風呂場へと向かった。


「…風呂…入れておいてくれたんだな、」

温かい湯に感謝しながらひとっ風呂浴びたあと、冷蔵庫の中におかずが幾つか用意されていたことにも申し訳ないと思いつつ、冷たい麦茶を喉に流す。さすがに今はあまり食欲がないから、朝起きたら一緒に食べよう。そう決めて冷蔵庫の扉を閉じ、ヒメが寝ているベッドへと足を運ぶ。先ほどの体勢から寝返りを打ったのか、掛け布団を下敷きにして尻丸出しの状態で気持ちよさそうに寝ていた。…これはちょっと、いただけない。かと言って、肩を叩いて起こしてしまうのもいかがなものかと思っていると、目の前の彼女がうーんと唸りながらまた寝返りを打った拍子にぷるんと現れたたわわな双丘に硬直する。寝転がっている時の下着なんてもはやあってないようなものだ。それに加えて、触った時の柔らかさと先端を吸った時に響く高い声が鮮明に思い出されて拳をぎゅっと握る。正直、もう股間は嫌というほどに反応しきっているが、かと言って彼女を無理やり起こして事を致そうだなんてそんなことは流石に、思って、…ない。
そうだ、もう寝てしまえばいい。自分にそう思い込ませてヒメの隣に身を横たえると微かに香るシャンプーの匂いが鼻をくすぐる。

…ああ、もう、身体が熱くて熱くて寝られやしない!

バッと飛び起きて窓を少し開け、ベッドに戻る。
さらさらと撫でるように吹き込む風が心地いい、これならまだなんとか気持ちよく眠れそうだ。

「ん、う…」

目を閉じようとした瞬間、擦り寄る温もりに眉を寄せる。そう言えば、ヒメは下着しか着ていなかった。案の定、彼女は温もりを求めてこちら側に寝返りを打ち、ぴったりと身体をくっつけてきた。腕に胸がぶにゅうと当たって、なんというか、なんというかこれは、生殺しというか。しかしそれでも寒かったのか、彼女は足に足を絡ませてきた。これではもう窓を閉めに行くことも叶わない。なんとか彼女の向こう側に置き去りにされたままの布団を手繰り寄せてかけてやったが、身体は離れなかった。首にかかる吐息、腕に押し付けられたままの胸、絡む生脚と長期任務で溜まった性欲がぐるぐると回る。そこで、幸い、すぐ横のサイドテーブルにはティッシュ箱が置いてあるのを思い出した。そうだ、もういっそこのまま抜いてしまおう。ヒメはぐっすり寝ているんだし、隣で抜くくらい良いだろうとティッシュ箱に手を伸ばし……あれ?

中身がない。

なんでこんな時に限って切れているんだ、もうすっかり目が冴えてしまって寝れそうにない。この状態でどうしろと。
ちらり、左隣で寝息を立てている彼女を見やる。そうだ、大体、下着姿でこんな無防備に寝ているのも罪だとは思わないか。俺が今日帰ってくるのなんて解りきったことだろう、だから風呂だって、飯だってちゃんと用意してくれていたんだろう?だったら…だったら、俺に組み敷かれるのだって、仕方ないことだろう?ってむちゃくちゃなのはわかっているけれど、もうどうしようもない。もう我慢ならん、どうなったって知らん。
右手を伸ばしてブラジャーのホックをぷつんと外せばぷるんとこぼれ落ちたふたつのそれの先を口に含む。ちゅうと軽く吸えば、か細い声を漏らしたものの起きはしなかった。そろそろと下半身の中心に触れると、そこはもう軽く湿っている。手を滑り入れてくりくりと撫でれば腰がびくんと跳ねた。が、これでもまだ目覚めはしない。

「…ヒメ…」

右手の人差し指と中指を膣口へゆっくり押し入れながら、舌で唇を割る。
流石に息苦しくなったのか、舌を絡ませた瞬間彼女が反応を見せた。最初は唸りながら何かを訴えているようだったが、中に入れていた指の動きを速めればすぐに大人しくなり、舌を絡めてきた。こうなってしまえばもう完全にこっちのペースだ。キスをしたまま、開いた両足の間に自分の身体を入れて服を脱ぐ。指を抜いて男根を宛てがえば、すっかりほぐれたそこはそれをすんなり飲み込んだ。必死に舌を絡めてくる彼女の頭を撫でながら、ゆっくりと律動を開始する。
でも、動き始めた瞬間、もうもたないとすぐに悟った。
寝ている彼女を無理矢理起こして犯しておいて、自分だけ速攻満足するとはいかがなものか。それに、すぐ終わってしまうのもなんだかもったいない気もする。少し考えた末、ヒメの腕を引っ張って彼女の上体を起こし、抱き締めた。意外とこの体位は好きだし、割とよくやる。首筋に痕を残しながら腰を突き上げれば、彼女も同じように背に腕を回し耳許で俺の名を囁く。

「イタチ…、いっちゃいそ…っ」


砕かれた慾

ああ、どっちにしろ、だめだった。



(20141020)






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