この、私の下半身の中心にある性器の中に押し込まれているのは、一体何だろう。


一体何だろう、って言うのは、私が今この状況を理解できていないからで。
この状況を飲み込みたくなくて、信じたくなくて。
ぼうっとした頭ではろくに思考回路も回せなくて、どうしようもない私はとりあえずシーツを力いっぱい握り締めた。裂けるような小さな痛みが私の下半身を支配して、でも背中は冷たい壁に押し付けられていて少し肌寒い、だけど、目の前の彼の身体がとても熱いから、それが少し心地いいかもなんて、もう私はどっかぶっ飛んでる。

そもそも、なんでこうなってるかって言われたら、正直わからない。
イタチが長期任務からやっと帰ってきたから「おかえりなさい」って出迎えたら、突然寝室に引きずり込まれて…本当に、ただそれしかなかったんだ。ただいまもなにも言われないまま、ベッドに押し倒されて身ぐるみはがされて、大した前戯もなしに、これ。この状況。
無理矢理押し込まれたとき流石に痛みを訴えたけど、まあ案の定聞いてもらえる訳もなく。
彼が動いているうちにだんだんにじみ出てきた液体のおかげで私はなんとかこうしてこの行為に耐えることができている。

ぶっちゃけてしまえば、少々Мっ気のある私からしたら、好きな人に無理矢理犯されるっていうのはなんだかそれくらい強く私自身を求められている感じがして、好きか嫌いかで言えば好きだ。
でも、じゃあなんでこんなにもぐだぐだ思い巡らしているのかと言うと。

「ヒメ…っ」

私の名前を呼びながら未だ激しい律動を繰り返している彼が、とてつもなく辛そうな顔をしているからだ。
なのに、身体はまだ足りない、まだ足りないとでも言うかのように私を攻め立てるから、私は中途半端に喘ぐことも彼の背に腕を回すこともできず、こうしてシーツを握り締めてそれに耐えることしかできない。
これって、そんなに辛い行為だった?これって、一緒に気持ちよくなる行為なんじゃないの?何があなたをそんなふうに掻き立てているの?なにかあったの?
聞きたいことは山ほどあるけど、こんな時どうしていいかわからない私は黙って彼を受け入れるしかできなかった。冷静に考えたら、そんな私も悪いのかもって思って急に自己嫌悪。

だってさ。こんなことして、イタチは気持ちいいの?

「…イタチ、」
「はっ、あ」
「イタチってば、あ、」

名前を呼んでも、彼は動きを止めない。
勇気を出して顔を上げたけど、彼は私の方を向いてなんかなかった。
違う、こんなのイタチじゃない。いつもはたっぷり時間をかけて優しく優しくしてくれるのに、じゃあ今目の前にいるこの人は誰だ。いや、偽物とか、そういうんじゃないとは思うけど。
あんまりにも悲しくなって、私は思うがままにイタチの顔を両手でばちんと挟む。
下半身に埋まる彼のそれがぐ、っと奥で動きを止めた。

「…い、イタチ、ってば…話、聞いて」
「は…っは、はっ、はっ」

荒い呼吸を整えながら、彼がようやく私のほうを向いた。
その時、その時だ。私がそれに気づいたのは。

「…え?イタチ…泣いてるの…?」

慌てて、挟んでいた両手の親指で彼の目尻のあたりを拭う。それでもまだ目から溢れてくる液体が、確実に彼が泣いているんだと告げていた。
咄嗟にごめんと呟いて、背に腕を回してぎゅうと抱きしめる。なんで私が謝っているのかとか、まだ繋がっているこの状況とか、そんなのはもうどうでも良かった。イタチが泣いているということが、頭をコンクリートで打たれたかのような衝撃を私に与えていた。
さっきまで汗をかくほど熱かったのに、私を抱きしめ返す彼の腕は恐ろしいくらいに冷たくて、思わず息をのむ。

「…すまない」

涙混じりの謝罪が、一層私の心を突き刺す。
今の謝罪は、一体何に対してだろう。この謝罪には一体どんな意味が込められているんだろう。

「どうしたの、」
「もう…本当に、時間がないんだ」
「本当に、って、」
「ちゃんと話すから…後にさせてくれないか」
「んう」

言葉を遮るように深く押し付けられた唇からぬめりと舌が割り入って、私から余裕を奪っていった。さっきまでとは違う私の身体を撫でる優しい手つきに声が漏れる。長いあいだ舌を絡め合って、ゆっくりと律動が再開される時にはもうすでに私は出来上がっていた。彼が動くたびに下半身からいやらしい水音が響き、もっと、もっとと言わんばかりに腰が揺れる。

あ、いきそう、そう思った瞬間、そう言えばイタチは今日避妊具をつけていたのだろうかという考えが一瞬頭をよぎった。
いきなり寝室に引きずり込まれて、たぶん私の化粧台の引き出しなんて触ってない。ああ、やっぱり、このままじゃまずいかも。

「イタチっ」
「ヒメ、いく…っ」
「え、あ、ああ!」

突然切られたラストスパート、私の中でびくびくと脈打つ彼の其れ、でも、さっきの涙を思い出したら結局何も言えなくて。
ずるりと抜かれたのと同時に流れ出たのが彼のか私のかなんて、もうどうでもいい。

どっちにしろ、これから私は彼から絶望の言葉を聞くことになるのだから。



本当に、弟のために我が身を投げうつだなんて。



(20140916)

ナルトの九尾を奪還しに行って、宿でサスケに会った後のイタチさん。


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