彼は、待人 /モブ視点


「異動した……?」
「あァ、お前さんと入れ替わりで。たしかNo.5の方へ」

最年少のロブ・ルッチは、CP9に入って間もない新人ながら、すでに恐ろしい功績をたてて『殺戮兵器』の異名までつけられているくらいの傑物だ。無言で佇むだけで他者を圧倒する風格をそなえた彼が、珍しく自分から話しかけてきたと思えば、尋ねられたのはかつての同僚の名前だった。

「ヘマでもしたのか」
「いや?優秀な奴だったよ。理由は知らんが、異動は元々決まっていたものらしい。新しく優秀な奴が入ってくるんならちょうどいいタイミングだ……ってことで、スパンダインさんが許可を出したんだっけかな。まァおれ含めて、ほかのメンバーにとっちゃァ突然の話だったけどな」
「………………」

CP9のメンバー全員がそろうことはめったにないのだが、今回珍しく召集が掛かり、ついさっき会議を終えたところだ。メンバーがバラバラに去っていく中、誰かをさがす素振りをしていたロブ・ルッチと目が合ったのは、おれも新人の顔をまともに見るのがはじめてで『ほほう、こいつが殺戮兵器か』なんて思いながらまじまじと眺めていた所為だ。
話しかけられたとき、自分の目で確認は済んだはずであろうに、それでも諦めきれないといった執念を感じさせた彼の眼差しは、『これで全員か』と厳しめに問うてきていた。

「お前さん、あいつの知り合いか?連絡を取ろうか?」
「……………………………………べつに」

不機嫌に聞こえる声は、怒っている様な、気を落としている様な。それだけ言うと、ロブ・ルッチは悠然と踵をかえしていった。

────あとで別の奴から聞いた話によると、ロブ・ルッチが候補生だった時代、その同僚は特別講師としてグアンハオへ赴いていたことがあるらしい。んでもって、あのロブ・ルッチをさんざん痛めつけていたんだとか。そんな気性の激しい奴ではなかったはずなんだが、ロブ・ルッチも相当思い上がっていた時期だと聞くので、衝突する様な出来事でもあったのかもしれない。
当時はまだ年齢や体格を含め、力量差がおおきくあったのかもしれない。が、実地を踏んでめきめきと成長していっている現在のロブ・ルッチでは、流石のあいつも分が悪いだろう。ロブ・ルッチの一見静かに見える双眸にも、奥の方からは並々ならぬ情念を感じさせられた。あいつの骨をしゃぶっても飽き足らないほどの深い恨みがあるにちがいない。殺戮兵器には近々悪魔の実が贈呈されるという噂も聞くし、これからますますパワーアップしていくことだろう。

異動してほんとうに良かったな、と、ほっとせずにはいられない元同僚であった。


  
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