彼は、先生


CP9には故郷と呼べる島がある。グアンハオ──物心ついた頃から血のでる様な鍛練(比喩ではない)を積んだ養成施設がある島だ。養成される者がいるならば養成する者がいる。スペッキオは、優秀な諜報部員にして優秀な教育者だった。13歳にして殺戮兵器と恐れ称えられたロブ・ルッチも、彼の手によって育てられた一人である。

「育てたなんてとんでもない!せいぜいが一ヶ月ぐらいの指南だったと思うよ。たしか、上から直々にご指名があってね、なんでも前途有望な大型新人がいて、すでに実力は申し分ないから現場へ投入しようという話が持ち上がっていたらしいんだけど、懸念材料もあるからその憂いを除去してきてほしいと。上の者に対する従順さが足りてなかったんだってさ。いま思いかえせば流石はロブ・ルッチとほほえましくなるところだけど、なんせ当時島には誰も彼に敵う相手がいなかったものだから、痛切な問題でね。大人でさえ下手に注意することができなくなっていたんだ。とんだわんぱく小僧だったってわけさ。そんな有り様じゃあこのさき指示を受ける者としての義務を果たしていけない、躾のなってない狗なら使えないってんで、『ちょいとばかし高慢の鼻をへし折ってくれ』──なんて通達がまわってきたんだよ」

懐かしいなと昔をふりかえるスペッキオ。20代半ば頃の思い出だ。あの島で、『何度』彼の骨を砕いたことか。


  
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