僕は、人形


慾深いヒトってどうしてあんなにもかがやいて見えるんだろう。

スパンダムと出会って、そう思う様になった。彼にとって『慾しい』という感情は自然にわきおこってくるもので、理屈はあとから付いてくる。僕はダメだ。例えば富の話。僕は「お金が無ければ生活していけないのだからそりゃ慾しがりもするだろう」と考える。でも実際に富を求めるヒトというのは、生活のためという考えなど念頭になく、慾しいから慾しい=Aそして周囲の人々よりもずっと多くのお金を持ちたがっているものだ。

富、地位、権力──これらを求めるヒトを俗物だといい歓迎しない者がいる。なぜなのだろう?僕からすれば、ヒトがつくりだした複雑な社会構造の中でのみ機能するこれらを求めるということは、誰よりもヒトの中で生きようとする強い意志があるということなのに。人間らしい人間≠セと感じるのに。

僕はつまらない人間だ。いや、なんの慾求もわきおこらない空っぽの僕は、肉体を形作られただけの人形とあらわすにふさわしい。生まれてこなくてもよかった、なんて悲観的なことは思わない。ただ────おいしい果実をあたえられたのに、いつまでも手にもって眺めているだけの様な。このまま腐らせていくことしかできない様な、そんな勿体なさを感じていた。


  
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