文通と駆引4 旨いブランデーを見つけた。飲んでみるといい
下には銘柄まで記されている。
「……相変わらず、偉そうだ」
──────手紙が届く様になって、早数年が経つ。こんなふうに、内容のほとんどはロブ・ルッチの生活を垣間見る様な、とてもささやかなものだった。
・
「スペッキオ、おれ宛てになにか届けたか?」
「あァ、日頃からお世話になっているスパンダムに、お酒をね」
「……っ!」
「スパンダム?」
「……うわはははは!!なんだ珍しいじゃねェか、お前からプレゼントなんて!」
「高級酒なんだって。気になるから、僕にもすこし分けてくれないかい?」
「だったら早速あけるぞ!」
グラスに一杯分。時間をかけて、スパンダムと語らいながら味わった。
・
(────例の物を……お酒が好きなスパンダムに贈った。けど、彼が好きなのはウィスキーで、一人では飲みきれないと言われて“仕方なく”いっしょに飲んだ。僕はあまり嗜まないから、良し悪しまではわからなかったけど、まァ、舌には……馴染んだかもね)
スペッキオの方からは、いまだ一度として返事を出したことはない。けれども時に、頭の中で、紙に向かって、窓辺に凭れて────手紙に書かれてあったものに触れた感想などを呟くことがある。退屈しのぎくらいにはなるからだ。
とりとめもない話題に付き合ってやるのもまた一興。そう思っているだけのことだった。
≪ ◎ ≫