人生幸福論 | ナノ


30:期末試験  




試験は、概ね順調に進んでいった。


あまり目立ちすぎてもいけないため、可もなく不可もなく。かと行って、中間よりはちょっと上あたりを目指して、今年もそれなりに手を抜きつつ、頑張っている。


魔法薬学は、課題の「混乱薬」をさっさと完璧に作り出し、余った材料と“たまたま”持っていた魔法薬を掛け合わせ、ちょっとした実験を試みた。途中横を通ったセブルスに、何をしているんだと言うふうに見下ろされたが、試験中は私語禁止であるため、俺はにやりと笑ってみせるだけにした。


セブルスは顔を顰めていたが、評価表に何やら書き込むとさっさと次の生徒のところへ向かった。


闇の魔術に対する防衛術は、とても面白かった。他の試験とは違い、戸外での障害物競走のようなもので、水魔のグリンデローが入った深いプールを渡り、赤帽のレッドキャップがいっぱい潜んでいる穴だらけの場所を横切り、道に迷わせようと誘うおいでおいで妖怪のヒンキーパンクをかわして沼地を通り抜け、最後に最近捕まえたと言っていたマネ妖怪、ボガードが閉じ込められている大きなトランクに入り込んで戦うというものだった。


俺はそれらの障害に対して、一つ一つ真面目に、真剣に向き合いながら通過していくことにした。


グリンデローとは水の中でおいかけっこをしてみたし、赤帽のレッドキャップは、穴の前を通るたびに棍棒で殴りかかって来たため、俺も棍棒で応戦し一匹一匹殴り返して言った。おいでおいで妖怪のヒンキーパンクは誘われたと見せかけ幻術をかけつつ一緒に遊んで見たり逆に罠にはめて見たりといろいろと遊ばせてもらい、最後のマネ妖怪ボガードでは一人ボガードをいろいろな姿に変えさせるという実験を行い、最後は適当に往なして通過した。


リーマスからは心底呆れた目を向けられたが、評価はそれなりに高くもらえたのでよしとしよう。


だって、今までの試験で鬱憤が溜まっていたんだ。俺の普段を知っている人の前でぐらい、多少ストレス発散をしてもいいだろう?


さてさて、そんなこんなで最後の試験である占い学になったが、占い学はもともと適当に流していたため、大したこともなくさっさと出ることになった。


談話室に戻ると、先に終わっていたロンとハーマイオニーがいた。


二人は、一通の手紙を手にしている。


「どうしたんだ?」

「ハグリットが話があるから今日来て欲しいってさ」

「話?」

「でも詳しい内容は書かれていないの。まったく、まだシリウス・ブラックが捕まっていないっていうのになんだっていうのかしら!」

「でも、ハグリッドが手紙をよこすぐらいだ。急を要するんだろう」

「そうかしら」

「とりあえず、ハリーが帰って来たら、向かってみよう」

「そうだね」


占い学の試験から戻って来たハリーは、息を切っていた。難しい顔をしていて、俺たちを見つけるとすぐに駆け寄って来た。


「トレローニー先生が今、僕に言ったんだ!」


ハリーが息を弾ませながら言う。


「ハリー?そんなに急いでどうしたんだい!?まさか、ハリーだけ試験がマラソンだったなんて言うんじゃないだろうな?」

「違うよ。トレローニー先生が、今夜、起こるって」

「何が起こるんだ?」

「ヴォルデモートの手下が」


ハリーがその名前を言うと、ロンが小さな悲鳴をあげた。


「今夜、自由の身になってご主人様のもとに馳せ参ずるって。それで、その召使いの手を借りて、ヴォルデモートが復活するって!」


ハーマイオニーが眉をしかめる。


「またお得意の不幸な予言じゃないの?」

「違うよ。だって、本当に変だったんだ。いつもとは違っていて、声だって、ダミ声みたいになっていた。目も虚ろで、自分が言ったことを覚えていないみたいだった。もしかしたら、本物の予言なのかもしれない」

「…………今夜…か」

「もし本当なら、それってきっとシリウス・ブラックのことよ。彼が自由の身になるってことだわ!」

「おいおい、それじゃあ辻褄が合わないだろ?脱獄したブラックはもう自由の身さ」

「確かにそうね…どういうことかしら…」

「とにかくここで考えていても仕方ないだろう。ハグリッドからのお誘いも来ていることだし、移動しながら考えよう」

「ハグリッド?」


首をかしげたハリーに件の手紙を見せて、ハグリッドの小屋へ行こうと伝える。


「ハリーの透明マントがあれば大丈夫だろ?」

「あ!でも、あれ、隻眼の魔女像の下にあるんだ…。スネイプがあの辺でまた僕をみつけたら、僕、とっても困ったことになるよ」

「ああ、そうだったな。なら俺が取ってこよう。俺なら、彼にも怪しまれない」


俺は立ち上がり、談話室を出る。ついでに、滞りなく進んだことと、ハリーが聞いた予言のことをレイ達に伝えておく。


レイ、アリィ、サラはシリウスとともに先に叫びの屋敷へ向かっているはずだ。


俺が戻ってくると、4人でぎゅうぎゅう詰めになりながら透明マントを被りハグリッドの小屋を目指した。


さて、此処一番の大仕事だ。


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