取り寄せたカタログを見ながら、みんなに送るクリスマスプレゼントをどうしようか迷う。
ハリーはクィディッチ系の何かでいいと思うんだよな。ロンは、何か特別っぽいものがいいかな。ああ、杖っていう手もあるか?でも、杖をプレゼントしてもしかたないし、何か変わりに魔法を使えるものがいいかもしれない。ハーマイオニーには何か本かな。珍しいものに目星をつけておけばいいだろう。双子にはイタズラグッズ。イタズラ付きで決まりだし、サラには魔法生物の図鑑でも送ろう。アリィは何がいいだろうか。
「熱心だね」
「こっちのクリスマスは面倒だよな。友達にも送らなければいけないんだから」
「日本では違ったのかい?」
「日本だと、大人が子供に送る日なんだ。まあ、一応サンタクロースが運んできてくれるっていう体にはなっている。一年間いいこにしていたらサンタクロースが欲しいものを運んできてくれるから、靴下をツリーに飾っておくんだ。そこにサンタクロースに何がほしいか前もってお願いを書いて入れておく」
「へえ、靴下って、この靴下?」
自分が履いている靴下を指さすリーマスにうなずいて返す。
「で、親は事前になんとか子供たちから何が欲しいのか聞き出して、イブの夜中のうちに子供の枕元に置いておくんだ。そして、朝がきたらサンタからのプレゼントが届いていたっていう寸法になる」
「へえ、おもしろいねそれ」
「まあ、孤児院じゃそんなものはなかったから、園長がサンタクロースの恰好をして安い玩具を一個ずつ配ってくれる」
一般の家庭ではいつごろ親がサンタだったとばらすのだろうか。学校にいた子供たちの話を聞いていると、サンタクロースの存在は半信半疑なようで、あれやこれやと親がサンタクロースではない証拠を探そうと躍起になっている姿を見たことがある。
たとえば親にはほしいものを言わないとか。
それを聞き出そうとする親は本当に大変だ。
そう考えたら、プレゼントを贈りあうという形が成立しているこっちはとてもわかりやすく、誕生日プレゼントのように自分で考えて送ればいいのだから簡単といえば簡単だ。探りを入れる必要がないのだから。
「リーマスならさ、友達に何あげる?」
「僕かい?そうだなあ…」
「プロングス、ワームテール、パットフット。やっぱり、その動物関連のもの?」
「そんなのをあげたら嫌がらせだと思われるよ」
「でも肉球なら大丈夫じゃないか?」
「ハハッ!あいつに肉球なんて渡したら、きっとすっごく不機嫌にさせるだろうね」
「似合わないような奴なのか?」
「すごくね」
「ふーん」
会ってみたいな。その言葉は口に出したことは無かった。リーマスの話に出てくる彼らのはいつだって学生時代のものだ。それ以後や、今はどうしているとかそういう話は一切しない。彼らの時代はヴォルデモートの全盛期だったはずだ。だから、もしかしたらもう亡くなっているのかもしれない。そう思ったら聞けるはずもなかった。
「誰のプレゼントで悩んでるんだい?」
「女子。アリィとジニー。女子は何をあげていいかさっぱりだ。スネイプ教授には決まったんだけどな」
「え!?セブルスにもあげるの?」
「うん。今、スネイプに頼んで魔法薬の研究をさせてもらってるんだ。それでいろいろとお世話になってるからね。こんな時ぐらい送ってもいいだろう。あの仏頂面じゃあ、恋人もいそうにない」
「ああ、それは確かに。でも、魔法薬が得意なんだね。知らなかったな」
「ああ。魔法薬は面白いよ。材料一つ、混ぜ方一つ、組み合わせ方一つで全然変わってくるんだ。可能性が無限に広がる。それに、スネイプはすごいよ。本当に好きなんだなって伝わってくる。だから一緒に研究してるのは面白い。まあ授業は陰険だけどな」
「まあ授業は分からないけど、たしかにセブルスは昔から魔法薬学がとても得意だったよ」
「やっぱりな」
「でも、そうか。じゃあセブルスと仲良くなったんだね」
「んー、それは、どうだろう。あの教授と仲良くって難易度高いぜ?でも、今度『マンドレイク回復薬』は一緒に作らせてもらえることになった」
「へえ!すごいね!あのセブルスが一緒にって言ったんだろう?なら、君の実力は相当ってことだよ。じゃなかったら、手伝いなんて頼まない」
「だったら、うれしいな」
それに、マンドレイク回復薬を完成させられたら、そのあとは脱狼薬に着手できる。そうなれば、リーマスの顔色ももうちょっとよくなっていくだろう。
「とりあえず、プレゼントは君が相手のことをよく考えて選んだらいいよ。その方がきっと喜んでもらえる」
「そうか?」
「そういうものだよ」
「うーん、わかった」
俺はもう一度カタログに目を通す。
ジニーには、かわいいキーホルダーと最近何かと物騒だからお守りにしよう。まあその物騒の大元はサラザールのせいなのだから余計に申し訳ないのだ。彼女、今回のことでかなりまいっているようだったし。
アリィには、マグルの難易度が高い参考書でも送ろうか。きっと彼女ならすぐに解いてしまうのだろうけど。多少の暇つぶしぐらいにはなるだろう。
「よし決まり!」
「よかったね。あとは宿題かな?」
「あー…、それは年明けにでもぱぱっと終わらせるよ」
実際、出た片っ端から片づけていたから、冬休みに入る前には半分くらい終わっていた。
だから今はのんびりしてもいいだろうとソファーに深く腰掛けた。