人生幸福論 | ナノ


13:疑惑と決意  




今日のクィディッチはおかしな試合だった。というのも、二つあるブラッジャーのうちの一つが執拗なまでにハリーを付け狙うのだ。最初は双子のウィーズリーがハリーを守っていたが、タイムアウトを取ってからはハリーが一人でブラッジャーから逃げ回っていた。


そして、終盤、ハリーがスニッチを取る少し前にハリーの腕にブラッジャーが当たりハリーの腕を折った。そのままスニッチを捕まえ、ハリーは競技場の真ん中で箒から落ち動かなくなった。リー・ジョーダンのスニッチを捕まえたという実況により試合は終了。選手が地上に降り立つ中、俺たちも急いでハリーのもとへむかった。


俺たちはハリーのもとへ着く少し前に教師陣の中から率先してハリーのもとへ駆け寄ったのはよりによってロックハートだった。


俺は授業が始まってから、ロックハートがかける魔法の中でまともにかかったものを見たことがなかった。


それなのに、自信満々に杖を取り出したかと思うとそれをハリーの方へ向けたのだ。


「やめて!僕、腕をこのままにしておきたい、かまわないで…」

「横になって、ハリー。この私が、数えきれないほど使ったことがある簡単な魔法だからね」

「僕医務室に行かせてもらえませんか?」


俺は杖を取り出した。それが見えたらしいロンにぎょっとされた。


「君、何をするつもり?」

「みんな、さがって」


ロックハートが翡翠色の袖をたくしあげながら言った。そして、杖を振りかざした瞬間、俺もロックハートめがけて杖を振った。


パシという音がして、ロックハートの手から杖が飛び、俺の方へ飛んでくるのを捕まえる。ハリーを取り囲んでいた周りは、俺とロックハートの間からズザッと退いた。そのおかげでハリーを抱えるロックハートの顔が良く見えるようになった。


「ロックハート先生。治療はマダム・ポンフリーの役。先生の様な方がすることではありませんよ」

「な、何を言っているんだか。私ならばこんな魔法何回も使ったことがありますからね。わざわざ医務室に行くより早いでしょう。ハリーだって早く痛みを何とかしたいはずだ」

「僕、医務室に行きます!」


ここぞとばかりにハリーが宣言した。俺は、前に人がいなくなったことをいいことにハリーに近寄り、彼に肩を貸す。


「ハリー、立てるか?」

「うん。ありがとう」

「いいや。ロックハート先生、これはお返しします。ただ、かける魔法は選ばないと、恥を露呈するだけですよ」


俺は言い捨てるだけ言い捨てて、ハリーを半ば引きずるようにしながら茫然と立ち尽くすロンたちのもとへいった。


「ハーマイオニー、添え木を出して。とりあえずハリーの腕を支えるものを作ってくれ」

「わかったわ!」

「君、本当にすごいよ。見たか?あのロックハートの顔!」

「祐希、本当にありがとう!僕、あのままだったらきっと腕がなくなってたよ」

「ちょっと!ロックハート先生なら、しっかりできました!」

「おいおい、まだそんなこと言ってるのか?だって、君見たことあるかい?ロックハートが授業中にまともに魔法を成功させたの」

「きっと、授業だから緊張されてるのよ。教務は初めてだって話だし」

「あれだけ偉業を成し遂げている人が緊張!僕なら、狼男を前にしたほうがずっと緊張すると思うけどね」


俺もロンに一票かな。


本に書いてあることが本当ならば、本当にすごい人なのだろうけれど、その片鱗さえ俺は見たことがない。ダンブルドアも本当になんであんな人を採用したんだか。


マダム・ポンフリーはハリーの腕を見て眉をしかめたがすぐに薬を処方してくれた。


しかし、他にも地面叩きつけられたりしたこともあって、一応一晩入院という形になった。




次の日、俺が薬学教室を訪れると、いきなり壁に叩きつけられた。俺の首を腕で壁に押さえつけるようにするのはこの教室の主でもあるスネイプ先生だった。


目の前で突きつけられる杖とスネイプの顔を交互に見る。


「なん、の、マネ、ですか」

「貴様、昨夜はどこにいた」

「さくや?」

「消灯後、どこにいた」

「寮の、自分の、部屋」

「夜中に出歩いたか」

「してない」


スネイプがわずかな迷いを見せた後、不意に何かが入って来る感覚がしてとっさに心を閉ざした。開心術をしようとしたスネイプは、俺の中に侵入できなかったことに目を見開いた。当たり前だ。どこに2年生で閉心術をマスターしている子供がいるんだ。だが、咄嗟のことでごまかす暇もなかった。


「貴様、なぜ閉心術が使える。答えろ。場合によっては、真実薬を使うことも我輩は厭わん」


再び押さえつけられ、杖を突きつけられる。その杖が小さく振られたと思うと、戸棚から薬瓶が一本飛んできた。真実薬だ。


「真実薬の使用は、校則で禁止されていたと思いますが?」

「非常事態だ」

「…何が…、秘密の部屋関連ですか。…そして、先生がそこまで取り乱すということは、人間に被害が、あったということですか」


ああ、俺はこれを恐れていたのに。


スネイプが俺から離れる。ようやく息を付けるようになり、ふう、と深く息を吐いた。


「誰が、…いえ、どんな…。石にされたんですか。誰かが」

「貴様のその頭の回転の速さには感服する」


スネイプがローブをひるがえし自身の机へと向かった。その間に振られた杖によって真実薬が棚へ戻っていく。


先ほど聞いてきたことから推測するに、昨夜誰かが石になって発見された。死んでいないと思うのは、ホグワーツ内に異常がみられなかったからだ。死者が出てしまえばいくら、ダンブルドアがいる学校だとはいえ、このまま生徒をここに置いておくことはできないだろう。


きっと、ミセス・ノリスのように石になったのだ。


「他言は無用だ。取りかかりたまえ」

「わかりました」


そのあとは無言で作業を終え、俺は寮へと戻った。


「君どこに行ってたんだい!?探したんだよ!」

「どうした?ロン」

「ちょっと、こっち来て」


ハーマイオニーにまで引っ張られ、俺は談話室の隅に連れて行かれる。ハリーまで深刻な顔をしていた。


「まず、貴方にも知らせておこうと思って。コリン・クリービ―が怪物に襲われたの」

「コリンだったか…」

「貴方も知ってたの?」

「先生が話しているのをな」

「そう。私たち、それを聞いて、すぐに始めた方がいいと思ってポリジュース薬に取り掛かることになったわ」

「そうか」

「場所は嘆きのマートルがいるトイレよ」

「あそこ?まあ、確かに、マートルがいる限り誰も来ないだろうけど、不用心すぎねえ?」

「大丈夫だよ。あんな偏屈女がいるところでトイレしたいって思う奴はいないぜ?」

「それと、祐希、聞いてくれ。昨日、僕の所にドビーが来たんだ」

「ドビー?」

「ほら、屋敷しもべ妖精の。僕に起こっていたことは全部ドビーのせいだったんだ。汽車に乗り遅れたのも、ブラッジャーが僕を狙ったのも!」


それ、どんな屋敷しもべ妖精だよ。アグレッシブすぎねえか?聞くと、ドビーの独断のようだし、一応ハリーを守ろうとしての行動らしい。心意気は買うが、行動が逆にハリーを殺しかけないことをしていると気づかないのだろうか。


汽車に乗れなかったことはともかく、ブラッジャーはハリーのあの箒さばきがあって初めてあそこまで回避できたのだろう。


「それと、『秘密の部屋』のことなんだけど、実は前にも開かれたことがあるらしいんだ」


ハリーの深刻な顔。そのあとに、でも誰が開いたのかは聞けなかったと付け加えたハリー。


「ルシウス・マルフォイが開けたに違いない」


それをポリジュース薬で確かめるんだと意気込むロンに適当に返事をする。


サラはおそらくこの休暇中にバジリスクの元へ向かっているだろう。ただ、生徒にまで害が及んだとわかれば、彼は傷つくだろう。


バジリスクとの対話でうまく、生徒に害を及ぼさないようにできればいいのだが。一番はバジリスクのような危険な生き物は殺してしまう方がいい。しかし、それをサラにやれというのは酷だろう。


まあ、いい。いざとなったら、あの歴史と同じように喧嘩をし、仲たがいをしようとも俺がこの手でバジリスクを葬り去る。


決意を新たに拳を握りこんだ。


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