人生幸福論 | ナノ


34:守護霊  




縛り上げたピーターを無理やり立たせて、それをセブルスとリーマスが持つ。二人とも、杖先はピーターに向けたままだ。


サラは落ちていた瓶を拾い上げるとそれを脇に抱えた。


「俺が先導します」

「クリフデン。貴殿にも聞かなければならないことがある」

「わかっています。スネイプ教授」


神妙な顔で頷いたサラは、部屋を出る間際に俺の方を見て一つ頷いた。


サラが杖先に明かりを灯しながら出て行く。その後ろをセブルス、ピーター、リーマスが続く。


「さあ行こうハリー、ロン、ハーマイオニー」

「うん。でも、びっくりだよ。これを仕組んだのは祐希なんだろ?」

「まあな。悪かったよ。騙すような形になって」

「それはいいけどさ」

「でも、私いくつかわからないことがあるの」

「わからないこと?」

「ホグワーツの教授方はブラック、さん?をくまなく探していたわ。いったいどこに匿っていたの?」

「そうだよ!忍びの地図でも見つからなかったし」


ハリーの言葉に苦笑する。


「あれの製作者が見つけられなかった部屋があった、とだけ言っておこうか」

「あんな部屋、見つかるか」


シリウスが悪態をつく。


「別に隠してはいないぜ?ちゃんと、部屋があると示す紋章だってつけてあっただろう」

「確かにそうだし、それは俺たちも見つけていたさ。だが、どうやったって入り方がわからなかったんだ」

「まあ、あの部屋の用途がわからなかったら、入り方もわからないかもしれないな」

「用途?」

「ちょっとまって、話についていけないんだけど」


ハリーの戸惑いに、そういえばと忍びの地図について話した。


「ええ!?ってことは、プロングスって父さんなの!?」

「そういうことだ」

「知らなかった……」

「あの時は楽しかった。我々は、そうだな、いたずらっ子だったからね。イタズラ仕掛け人と名乗っていろいろと楽しんでいたんだ」

「まるでフレッドとジョージみたいだ」

「ロンの双子の兄貴もイタズラっ子なんだ。いろいろと道具を仕掛けてはホグワーツ内で遊んでる」

「ほう。是非とも会ってみたいな」


シリウスはそう言って笑った。


しばらく無言でいると、シリウスはかしこまったように口を開いた。


「あー、ハリー。あいつを引き渡すということが、どういうことなのか、わかるかい?」

「あなたが自由の身になる」

「そうだ。しかし、それだけではない。私は君の名付け親だ」

「ええ。さっき祐希も言ってました」

「そうだ。うん。つまり、君の両親が、私を君の後見人に決めたのだ」


珍しく緊張した面持ちのシリウスに俺は笑いそうになる。


「もし、自分たちの身に何かあればと。もちろん、君がおじさんやおばさんとこのまま一緒に暮らしたいというなら、その気持ちはわかるつもりだ。しかし、まあ、考えてくれないか。私の汚名が晴れたら、もし、君が、別の家族が欲しいと思うなら」

「え?あなたと暮らすの?」


先を歩いていた俺とロンは顔を見合わせて、お互いにニヤリと笑った。ハリーが拒むわけがないとわかっているからだ。


「ダーズリー一家と別れるの?」

「むろん、君はそんなことは望まないだろうと思ったが、よくわかるよ、ただ、もしかしたら私と、と思ってね」

「とんでもない!もちろん、ダーズリーのところなんか出たいです。住む家はありますか?僕、いつ引っ越せますか?」

「そりゃ出たいだろうよ。あんな家だったら、僕なら1日でもいたくないね」


ロンが嘯くとハーマイオニーが彼の頭をひっぱたいた。そして、シーッと鋭く口を紡ぐように伝える。


二人はそのあとも楽しそうにあれやこれやと話をしていた。といっても、現実的にその話が身を結ぶのは、もう少し先になるだろう。ピーターの裁判だって待っているのだ。


ようやく外に出るとすっかりあたりは暗くなっていた。空にはぽっかりと月が浮かんでいる。リーマスを伺うと体調は悪そうだったが、しっかり脱狼薬が効いているらしく、問題なく歩けているようだった。


「………なんか、寒くない?」


ハーマイオニーが不意に、言った。手を擦り合わせて息を吹きかけている。吐く息は白く、いつのまにか地面に霜ができている。


空は月を覆い隠すように分厚い雲が現れ、あたりが一層薄暗くなった。


「ディメンターだ!」


誰が叫んだのかわからなかった。俺の意識はふっと遠くなり、胸の中が冷たくなって行く。幸せなことなどこの世にはないんじゃないかと思えるほどだ。


赤く浮かび上がる魔法陣の中心に俺は立っている。寂しさを消すことなどできず、自暴自棄になって完成させた理論だった。


俺の罪だ。


「祐希!ゴドリック・グリフィンドール!しっかりしろ!」


目を開くと、目の前に立っていたのは金髪を靡かせた少年だった。あの時とは違う。杖先から銀の盾を出したサラは俺に向かって叫んでいた。


「サラ」

「しっかりしろ!お前は祐希だろうが!」


どうやら、ディメンターの襲撃で気を失っていたらしい。


あたりを見ると、ディメンターに囲われているようだった。かろうじてサラの守護霊で守られているようだ。周りを見ると、ロン、ハーマイオニーのことはリーマスとセブルスがついている。ハリーの方にはシリウスがいる。ピーターは見当たらないところから見ると逃げたのだろう。


「いいから加勢しろ!俺一人に任せるな」

「サラだけでも追い払えるだろう」

「無茶言え。この数だ」


俺は緩慢な動作で起き上がる。なんだって、こんなにディメンターがやってくるんだか。おかげで気分は最悪だった。


俺は杖を拾い上げ、真上に掲げる。


「エクスペクト・パトローナム!」


俺の杖先から銀の光が出たかと思うとそれは獅子の形をつくり宙を縦横無尽に駆け回って行く。大きな口を開けてディメンターに噛み付いて回った。


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