27.剣豪を斬る

今日の仕事は箒で掃き掃除だ。

書類整理を小松田さんに任せたのは完全に私のミスだろう。でも、あの人のためにも頑張っていただかなくては…。

小松田さん凄すぎる。信じられないほどになにかをもってる。
なんで何も無いところでコケるんだろう。なんで書類の書き損じに言われるまで気付かないんだろう。天才だよ天才。凄すぎる。もしかして能力者なのだろうか。ダメダメの実らへんの。

それでも先生方とかに怒られないのは小松田さんが凄くいい人だからだろうな。私のこともそんなに深く追求してこないし、忍たまの子達にも凄く優しく接しているし。
あの優しい性格で全て帳消しになってるんだろうなー。


それに比べてうちの船のバカどもときたら…。どうして一週間続けて宴会して一週間続けて酔いつぶれて一週間続けてゲロ吐けるのかなー……。

それ処理するの誰だと思ってんだよ。ナースのお姉ちゃんたちと私なんだよ。パパも笑ってて手伝ってくれないし…。


シャンクスさんにうちの船に来いよって言われたときマジでその誘いに乗りそうになったわ。ベックマンさんの手を取ればよかった。ベックマンさんに狙撃の腕を教わればよかった。くそぅ。




ザッザッザッ


箒を右から左へ。落ち葉や石を隅へとおいやる。





ドンドンドン



「…?」



すると、門を叩く音が聞こえた。



ドンドンドンドンドン!!




誰だ。なんだこれ、どうすればいいんだ。



「たぁぁのもぉお!誰かいないのかぁー!?」



あ、お客さんか。これ出ないとダメなパターンか。
箒を門の横に立てかけ、小さい方の門を開いた。


「はい…?」
「む?誰だお前は!」
「いや、そっちこそどちら様ですか?」

ぽったりして、刀を腰にぶら下げる。

………道場破り?…まさか、昔のロロノアじゃあるまいし。それに此処は道場じゃない。



「俺の名は花房牧之介だ!お前は誰だ?」

「…私は、先日から此処で事務員として雇っていただいているものです」
「そうか!よろしくな!ところで事務員!戸部新左ヱ門を呼んで来い!」


……なんなんだこいつ。用件も言わずに戸部先生を呼びつけるとは。


「…戸部先生はただいま授業中です。大変申し訳ありませんが、出直しt」
「いや!あいつは私のライバルなのだ!私の名を出せば必ずやつは此処へ来る!呼んで来い!」

………ライバル?戸部先生の?この人が?
なんだそうだったのか。失礼なことをしたな。


「あぁ、そうでしたか。では大変申し訳ありませんが、門外にてお待ちいただけますか?」
「おぉ!頼んだぞ!」

えーっと戸部先生は今一年は組の授業だったはず………





























「何!?花房牧之介が来た!?」

「え、えぇ、戸部先生をお呼びして来いと…」
「…ゆ…ゆらぁ…り……」

「と、戸部先生!?」


花房牧之介という名前を出すと、ぐわっと目を見開き、戸部先生は私に倒れこんできた。え、なんで?貧血?


「と、戸部先生!?如何なさいました!?腹ペコですか!?貧血ですか!?」

「香織さん、花房牧之介は戸部先生のライバルなんかじゃないんですよ」
「え?庄ちゃんどういうこと?」


戸部先生の居所を、偶然その場に居合わせた山田先生に伺った。先生は今グラウンドにいらっしゃると仰ったので、私は着物の裾をパタパタとさせながら急いでグラウンドへ向かった。
グラウンドに着くと、戸部先生をはじめとする一年は組の生徒がえい!と可愛い声を出しながら一所懸命刀を振っていた。可愛い。ずっと眺めていたい。

あぁ、それどころじゃない。

急いで「戸部せんせーい!」と声をかけると、先生とは組のみんながこっちへ視線を向けた。事情を説明する。戸部先生が倒れる。今ここ。



「じゃぁあの人は誰なの?」

「花房牧之介は、戸部先生を勝手に宿命のライバルだとか決め付けてる面倒くさいやつです」
「庄ちゃん辛辣!」


虎若くんのツッコミ鋭い!

…なるほど、つまり花房牧之介は戸部先生のストーカーか。


「えーっと…じゃぁ花房牧之介はどうすればいいの?」

「僕らいっつも石とか投げて追い返してまーッス☆」
「僕らのカラクリにハメたこともありました☆」
「大成功でした☆」

きり丸くんと兵太夫くんと三治郎くんの笑顔怖すぎ。なにこの子ら本当に10歳?



「……OK、大体理解したわ」


大丈夫ですか?と戸部先生を起こし、ゆらりと呟く戸部先生に頭を下げる。

「すいません、授業中なのにお騒がせしてしまって」
「…ゆら………ゆらり…・。いや、しかし来たのなら仕方ない…私が行って追い返すほか……」


「大丈夫です。私が追い返しますので。」


「…何?」

「失礼ですが、その使っていない木刀をお貸ししていただけませんか?」


戸部先生の足元にある木刀を指差す。おそらく、人数分以上あったから余って置いておいたのだろう。それさえあれば花房牧之介は追い返せるはずだ。
生憎私の刀は今部屋にある。取りに行ってたら痺れを切らした花房牧之介が入ってきてしまう可能性がある。事は早く済ませたい。


「…かまわんが……」
「ありがとうございます。後ほど必ずお返しいたします。それでは、授業中に失礼致しました」


くるりと着物の裾を翻し、私は門の方へと戻った。






「……戸部先生、香織さんは剣術の心得があるのでしょうか…?」

金吾が、興味津々とした声で私の裾を掴んできた。

「…金吾はどう思う?」
「………素人にしては、受け取り方、握り方が、的確でした」


金吾のその言葉を聞いて、私とは組は、香織さんのいる学園の門へと走り出した。







































僕らと戸部先生が門の前に到着したとき、門の前には刀を構える花房牧之介と、木刀を持ち花房牧之介と向き合う香織さん。

嘘だろ。危ない。花房牧之介の刀は真剣だ。素人とはいえ、殺傷力はある。対する香織さんはただの木刀だ。斬れればただ事ではすまない。


「約束だぞ!私がお前を倒したら戸部新左ヱ門のところへ案内しろよ!」
「えぇ、約束しましょう。さぁ、どうぞ」

「へへーん!木刀なんかでこの俺を倒せるかー!!」


花房牧之介が刀を真っ直ぐに向けて、おりゃー!と突っ込んだ。危ない!香織さんが怪我をしてしまう!

走り出して対決を止めようとしたのだが、庄左ヱ門が僕の服を引っ張った。


「大丈夫だよ金吾、香織さんは強いから」
「…へ?」


見ててごらん。そう言う庄左衛門の目線を追うように、僕は再び香織さんへと視線を向けた。







「甘い」





香織さんは木刀の切っ先で、真っ直ぐ刺すように突っ込んでくる花房牧之介の刀を止めた。


なんだ?どういうことだ?




「な、な!?なななな何ィ!?」

「…花房牧之介、貴様に剣の道は歩めない」




木刀を勢いよく振り上げ、花房牧之介の手から、香織さんの木刀に刺さる真剣が飛んだ。香織さんは飛んだその真剣を受け取め、一瞬の間に花房牧之介へと斬りかかった。



ズバンッ!!




花房牧之介が、真っ裸になった。



「うわああぁぁあ!?」
「贅肉ダルダルじゃないか。そんな身体でよく剣豪などと名乗れたものだな」


落ちてくる木刀を片手で受け止め、木刀と真剣、両方で花房牧之介の首を挟んで、香織さんは花房牧之介を睨みつけた。


「まだやるか」


「ま、参った!!参った!!こ、殺さないでくれ!!」

「ならば去れ。此処は貴様のような腰抜けの来ていい場などではない。」
「解った!だから頼む!もう、止めてくれぇえ!」

「二度と戸部先生に近寄らぬと誓え。戸部先生は忙しい身なのだ。貴様のようなド素人を相手にしているほど暇ではないわ!」


「ひ、ひえぇぇええええ!!」


バタン!と大きい音を立て、花房牧之介は忍術学園の門を出て行った。





「…うわ、なんだ皆見てたの?」



恥ずかしいなぁと言いながら、香織さんは刀を鞘にしまった。


「戸部先生すいません、ちょっと木刀傷つけてしまいまして…。削ってお返ししますね」
「……香織さんは、剣術の心得が…?」

「え、えぇ、まぁ、一応、海賊…水軍だったので?こ、心得はあります」


これどうしましょう、と花房牧之介の刀を手で持て余す。




「香織さん凄いカッコよかったです!!!」

「どうしてあんなに強いんですか!?」

「刀は誰に習ったんですか!?」

「いつから剣術を身につけていたんですか!?」

「戸部先生とどっちが強いですかぁ!?」

「僕らも香織さんのようになれますか!?」

「銃以外にも刀まで扱えるんですね!!」

「すごーい!!見とれてしまいましたぁ!!」





「え、えぇと、あり、…ありがとう!」



は組のみんながわっと、香織さんに質問攻めをした。







凄い。凄すぎる。




僕も、僕も、僕も……





…僕も!香織さんのようになりたい!!!






「香織さん!!」

「は、はい!?」











「僕に剣術の稽古をつけてください!!」

















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「えっとー、皆本金吾くんだったよね」

「金吾でいいです!!」

「うん、もちろんいいよ」

「ほ、本当ですか!?」

「でも私の専門は銃なんだよね」

「!?」


「ち、ちなみに体術の次に刀が得意かな…」

「!?!?」



「僕らにも稽古付けてくださーい!!」

「僕も僕もー!!」


「わ、私とも手合わせを是非」

「とととと戸部先生は多分無理です」
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