26.的を撃抜く

結局あの後寝ることは出来ず、ふわふわした気持ちのまま布団の上で横たわっていたら、いつの間にか日が昇っていた。


もういいや起きようと布団をしまう。

着替えどうしようかなと思っていたら、ピンク色の服の子が「失礼します!」と扉を叩いた。どうやらこの子は「くのいち教室」の子らしく、山本シナ先生から着物を預かってきたと届けてくれたのだ。名前はユキちゃんというらしい。可愛い。


「じゃ、じゃぁ!私はこれで!」
「どうもありがとうね」

着物の着方は解る。ワノ国で習ったし、昨日も着たし。

帯を締め両足に懐に銃を一丁しまい(護身用に一丁持っておけと土井先生に言われたのだ)、食堂へ向かった。

ら、隣の部屋から一年生の制服の子がぞろぞろと出てきた。

「あ!事務の香織さん!」
「おはようございまーす!」
「おはよッス!」

「おはよう!えっと、君たちは」

「猪名寺乱太郎と言います!」
「福富しんベヱでーす!」
「おれは摂津のきり丸ッス!」

「OK,猪名寺くんと福富くんと摂津くんね?」

「えー、おれらのことも名前で呼んでくださいよ!」
「え、」

「庄ちゃんから聞きました!僕等とも仲良くなってくださーい!」
「香織さんの好きな食べ物はなんですかー?」

「…わかった、ありがとう乱太郎くん、きり丸くん。しんべヱくん、私の好きな食べ物はカレーライスだよ」


可愛い三人に手を引かれそのまま食堂へ向かった。

食堂に入れば色んな色の制服が集合していた。まるでこのあいだの集会のときのようだ。

「おはようございます」
「あらおはよう、香織ちゃんよね?」

「はい、本日からここで働かせていただくことになりました」

「たまに食堂も手伝ってくれると嬉しいんだけど…」
「えぇ、いつでも言ってください」

「ありがとう。じゃ、今日はみんなと朝ごはん食べちゃいなさいな。事務の仕事覚えなきゃなんでしょう?」
「あ、そうなんです、すいませんありがとうございます。明日からは朝からお手伝いさせていただきます」
「あら本当、嬉しいわぁ」


乱太郎くんの今日のオススメはA定食らしい。それを注文し乱太郎くんときり丸くんとしんべヱくんと同じ席で食事をとった。

なにこれ、超美味しい。サッチの飯とか比べ物にならない。あいつの男の料理まじゲロだわ。もう二度と食えない。


食事を終え、皆と別れて冒頭へ戻る。

みんなはこれから授業なんだって。じゃぁ私も仕事頑張らないと。



「おはようございます小松田さん!」
「おはよう香織ちゃん!じゃぁ今日から宜しくねぇ?」
「はい、一生懸命働きます!」


私は書類の散乱する部屋を見て、とりあえずこの部屋をなんとかしないとと思った。

とりあえず、掃除からだ。



























「はい、ご苦労様でした」
「いいえ、吉野先生もご指導ありがとうございました。」

「いえいえとんでもない!とても助かりましたよ」
「お役に立てたのならなによりです。それでは、私は此れで」


言われた書類を全て処理して、私は部屋へ戻り、いつもの服装に着替えて銃を装備して射撃場へと向かった。

やっとこいつらの整備が出来る。私はウキウキしてグラウンドの方へ急いだ。やっぱりちょっと身体なまったか。いつもの量で重いと感じるのは、やっぱり寝すぎたかな。首をぐりぐりと回し腕を組み伸ばす。ストレッチをしながら歩くこと5分程。本当にここは広いなぁ。



土井先生に言われた場所に合ったのは、大中小含め沢山の的が並ぶ射撃場。的がボロボロだなぁ。結構な人が使ってるんだ。あまり壊さないように気をつけよう。

的の裏の方向に誰も居ないことを確かめ、私は的から遠く離れた場所にたった。





すっ、と息を吸い込み、集中。


目を開き足のホルダーへと一気に手を伸ばし全ての銃を一発ずつ撃つ。





ババババババ!と気持ち良いほどの音が鳴り響き、手から銃を離す。

弾が曲がったものは銃に異常有。左へ投げ飛ばす。
特に何も異常の無いものはそのままホルダーへと戻す。

両足のホルダーの銃は全て確認を追え手早く背にある組み立て式のをライフルを10発ほど撃つ。おや、何発か曲がった。




その時間、たったの10秒。



左側に散らかるのは大体5丁ほど。海に落ちたときに何かにぶつかって銃口でも曲がったんだろうか。
ふぅと息を吹きその場に座り込む。どれどれ何処がおかしいのやら。吉野先生に金槌を借りてきておいて正解だったな。とりあえずライフルから。うわわ、こりゃ確かに曲がってるわ。

ガチガチと音を鳴らして目の前に持ってくる。んー、もうちょいかな。

そよそよと風が吹きぬけて、金槌でガチガチと音を鳴らす。そういえば、陸に上がったの結構久しぶりだなぁ。風が潮臭くない。んー、良い風。




「……?」



視線を感じる。

背後、…いや、右からだな。誰だろう。監視されているのかなぁ。土井先生ではなさそうだな。




「誰かいる?」



ガション!と音を立ててライフルから弾を出す。




「うわああああ!ぼ、僕です!一年は組の!さ、佐武虎若と言います!!」
「い、一年は組の加藤団蔵です!!敵じゃないです!!」

撃たないでください!と叫びながら、小さい影が二つ樹の裏から出てきた。えっと、この服は乱太郎くんたちと同じ柄だな。あ、一年は組って乱太郎くんたちと同じじゃないか。



「あ、ごめんね、これ弾を出しただけ。脅したわけじゃないし撃つ気なんてないよ」

「「よ、よかった…」」


「私に何か御用かい?」


「僕!火縄銃が得意なんです!それで、こっちのほうから銃声が聞こえたので、誰か銃でも使っているのかなと思って…」
「僕も興味があったので、虎若の後をついてきたんです!」

「あぁさっき撃ってたのは私だよ。騒がしくしてごめんね」


目を輝かせて、虎若くんと団蔵くんが私に近寄った。火縄銃とは昔の銃かな。今は火縄は使っていないんだよ。


「それで、こっちにきたら香織さんが射撃場に居たので…」
「香織さんって本当に銃を使う海賊だったんですね!」

「あー、うん、まぁね」

「その服装は、南蛮の海賊の服ですか?」
「あ、うん、まぁ、そんなとこ」

「香織さんの腰の刀は誰のですか?」
「これ?これは一応、今は私のだよ。剣も得意だから」

「香織さん香織さん、手元のそれはなんと言う銃ですか?」
「これ?これは普通の銃だよ。引き金を引いて此処を弾けば弾が発射される仕組みだよ」

「香織さん!こっちの大きいやつはなんですか!?」
「これはライフルといってね…」


突然の銃講習会開催のお知らせ。

凄いキラキラした子供特有の超可愛い目をして地に散らばる銃を一つ一つ手にとって確かめていく二人が可愛くてしょうがない。でもそんな物騒な物に自ら触りにいくだなんて凄いね。


「…ねぇ、よかったら撃ってみる?」

「「えぇっ!?」」


「凄い興味ありそうだし、火縄銃が得意って事は、銃を撃ったことはあるんでしょう?」
「あ、あの、まぁ。でも、僕はあまり的に正確に当たらないんです。まだまだ修行中で…」

「うーんそっか。団蔵くんは?」
「僕も授業で撃った事があります!」

「こっちの銃と私の銃では凄く違うみたいだし、……正直、撃ってみたいでしょ?」


くるくると銃を回して足のホルダーにしまいこむ。団蔵くんと虎若くんは二人で目を合わせて、「やってみたいです!」と笑顔を向けた。まじ可愛い。ツラい。

こっちに立ってと手を引き、まず虎若くんに一番小さい銃を握らせた。ここを弾いたら、あとはここを引くだけ。だよと教えているだけなのに、道との遭遇なのか虎若くんの肩はガッチガチに固まっていた。


「ははは、そんなに怖がらなくても大丈夫だよ」
「で、でも」

「いいかい?これは肩に担ぐわけじゃない。っていうことは、撃ったときの衝撃を全て手と腕で受け止めなければいけないってことだよ」

「は、はい」
「ちょっとでも腕から力を抜けば銃口に押されて腕がはじかれてしまう。しっかり力を込めて、負けないように」
「はい!」

一応念のために背中を支える。銃口を的に向けさせて「好きなタイミングで撃っていいよ」と言う。引き金をひいて、ググと指に力を込めた。







―バァンッ!






「うわぁっ!」


予想通りというかなんと言うか、銃の勢いに押されて銃口は上を向いた。はじかれちゃったか。しかたない。
背中を支えていたおかげで、虎若くん自身がふっとぶことはなかった。よかったよかった。

「す、すいません…」
「いや、大丈夫だよ。どうだった?」
「ぼ、僕の使ってる火縄銃に比べて、凄く弾が重かったです…。でもなんか、何処か軽くて手がはじかれてしまいました…。火縄銃の時もこんな感じで……。

香織さんはなんでさっき、全然銃口がブレることなく全部的に当たってたんですか?」


「そうだねぇ。えっとつまり、虎若くんには腕の力と握力が足りないんだと思うな。まぁこの銃を使うことは無いかもだけど、銃を撃つのにこの二つは結構大切なんだよ。

握力と腕の筋力を付ければ、銃口がブレることは比較的少なくなる。きっと火縄銃でも銃口がブレてしまうことが多いんじゃないかな?とりあえずそこを鍛えてみるといいよ」


「は、はい!ありがとうございます!」


きっとさっき火縄銃でも的に当たらないと言っていたのは、それが原因だろうな。子供だからまだ早いかもしれないけど、今から鍛えておくといいよ。



「団蔵くんは?」
「ぼ…僕はやっぱりいいです…」

「ははっ、そんな青い顔しなくても。興味があったらいつでも言って。教えてあげるから」
「はい!ありがとうございます!」



もう一回やらせてください!と虎若くん。

その声を聞いて、やっぱりやらせてほしいと言う団蔵くん。









新しく、危ないものに興味を持つ可愛いお友達が増えました。









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「ところで二人は何してたの?」

「手裏剣投げの補習を終えたところです」
「僕ら失敗しちゃってー…」

「えっ、手裏剣投げられるの!?投げて!み、見てみたい!」

「まだ向こうに補習組みがいますよー!」
「一緒に行きますかー?」

「い、行く行く!連れてって!!」



せ、整備一旦中止!

生手裏剣見たい見たい!
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