25.何処にいる

「探せ!絶対に香織はどっかにいるはずだ!」
「能力者以外は海に入れ!!見つけるまで上がってくんじゃねぇぞ!!」

「香織ー!!何処だ!!香織ーー!!」

香織の身体が上がってこない。それはそうだ。あいつは能力者なんだから。
撃たれて、刺されて、血も流れまくってるうえに、あの首輪がはめられている。早く引き上げないと、香織が、…香織が!!




船に乗り込んできた海賊団は船長を除き全員殺した。それは当たり前だ。香織に怪我をさせたんだ。香織を海に落としたんだ。一思いに殺されるだけマシだと思え。

船長はまだ、生かしている。


「テメェ!何で香織を撃った!!絶対に許さねぇぞ!」
「やめろよいエース。そいつはもう気ィ失ってるよい」
「起きろ!誰が目を閉じて良いと言った!おい!」
「…ゥ……」
「香織を返せよ!!香織を、返せよ!!」

縄で縛り、拷問のような仕打ちを受けたこの船長はもうそろそろ死ぬ。だがそうはさせない。


香織が見つからないんだ。

香織が見つからないのに、

お前を眠らせるわけにはいかない!



「エース、もうよせ」
「離せオヤジ!!こいつのせいで!!こいつが香織に…!」
「止めろ、エース」
「……ッ!」


話を聞けば、香織の元奴隷の話、その時の飼い主はこいつらしい。

ボロボロになってもう使い物にならないと判断したこいつは、ヒューマンオークションで香織を売り飛ばしたらしい。そこに居合わせたのが、ただの面白半分で会場へ足を運んでいた俺たちだ。


『さぁ今回の目玉商品!こちら名を香織!世にも珍しき悪魔の身の能力者!ネコネコの実、モデル"ホワイトタイガー"!

ボロボロで使い物にならないって?ちょっと待てよお客さん!良く見て良く見て!綺麗にしたらそりゃ可愛い顔してんだぜ?

だったら首輪でもはめて鎖で繋いで愛玩動物にでもしちまいな!

元海賊狩りのこの女!今はとある海賊団に飼われて、こんなんなっちまったから売られちまったんだよ!

さぁ悪魔の実の能力者は時価!動物系かぁ…。んー、まだ若いしなぁ、じゃぁ3000万Bからでどうだ!!』





『…一億』








静かに、オヤジが札を上げた。

ボロボロで見る影も無くて、それでもあの目は「助けて」と訴えていたと、オヤジは言った。

オヤジは香織を一億で買取り、船に家族として迎え入れた。



『触らないでよ!海賊ごときが…!私はあんたたちの道具として買われたんでしょう!?だったら首輪をハメておいて!風呂になんか入れないで!服なんていらない!ご飯もいらないわよ!!

そんな扱いするぐらいなら、いっそ殺して!海賊に優しくなんてされたくない!殺してよ!殺して!!












私は、人間じゃないんだから!』




















「香織にあの心の傷負わせたのはテメェだ!それなのに…!…死んで償えると思ったら大間違いだぞ!!」

また拳が顔にめり込めふっ飛ばす。殴り足りない。身体を追いまたがりまだ殴る。



気を失うんじゃねぇ!

まだだ!

お前はこんなもんで許されるわけがねぇんだぞ!!




「おい!起きろよ!おい!!」
「やめねぇかエース」
「離せサッチ!!まだだ!まだ!」

「もうそいつは死んでる。殴ったって。香織は戻ってこねぇんだよ」

「……っ、!」



「…そろそろ日が沈む。おい、全員船に上げろ」

「…了解ッス……」


次々と梯子をつたって甲板へ戻ってくる。皆が皆悲しみに表情を染め、座り込んで泣くものもいる。






「…海は広ぇんだ。それに、香織は強ぇ。どっかに流れ着いてるだろうよ。…心配すんな。」





そう呟くオヤジの頬が濡れていたのに気付いたヤツらは、声を上げて泣いた。

















なぁ、香織、今何処にいるんだよ。



親より先に先立つバカがどこにいるんだよ。



オヤジが泣いてんだぞ。



とっとと戻って来いよ。










まだ俺の気持ち聞いてねぇだろ。
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