23.蜂の様に刺

さて、きっとあの人攫いは目の前にあるこの小屋の中だ。

パパに買ってもらったあの服とここの服装はかなりちがっている。やはりワノ国に近いものがあるな。あのサムライ達の服に似ている。
山本シナさんという方がもういらない男物の服と帽子みたいな傘を貸してくれて、私はそれに実を包み忍術学園を出た。

背後からついてくる影はきっと土井先生。学園長先生の気配を感じ取れないということは、多分私の働きぶりを土井先生が報告するのだろう。


気づいてないとでも思ってるのかな。白ひげ海賊団は四六時中どこからでも戦闘を申し込まれる。それは夜でもある。暗闇でも戦闘してきたんだから気配ぐらい読める。ナメられてるなら心外だ。酷く、ね。



そんなことを考えている場合ではないな。さっさとこれを終わらせよう。

しゃがみこみ土を足に塗りたくり顔にもそこそこつけ、着物にも土をこする。いらない着物だもん。汚したって文句は言われないよね。




ドンドン、


「………す、すみません、何方か、いらっしゃいませんでしょうか…」




中から誰かが誰かが歩いてくる音がする。さっと着物の袖で腰に下がる刀を隠し、ガラリと扉が開いて



「…誰だ…?」


ビンゴ。この臭い、この間の男だ。




「…も、申し訳ありません…。こ、この先のま、町に…甥に…会いに行く、予定だったのですが、その、道に迷ってしまって…」
「…ほぅ」
「…お礼ならなんなりと…。どうか一晩、泊めていただけないでしょうか…?」

喋りながら小屋の奥へ目をやる。焚き火の横にはもう一人の男。あぁ、あいつもこの間いたな。頭と呼ばれていたのが目の前にいる方か。包帯をしているところ、たしか私が引掻いたところだ。


「…お前、そんなナリしてるが、女か」
「は、はい」
「奥に一人いる。それでも、泊まるか?」


ああゲスいその顔。見ていてイライラする。


「えぇ、もちろん。こんな私で、満足していただけるのならば…」


すいと腕を伸ばし、ニヤつく男の首へと絡める。

そしてそのまま首を引き寄せ、その勢いで膝蹴りをかます。


「グ…!?」

そのまま前のめりに倒れる男の背中に片足を乗せ、動けぬように体重をかける。


「て、テメェ!」

「よう久しぶりだな人攫いその1。あの時の殺しておけなかったことをここ何日も後悔してたんだ」

「お、お前はあの時の!」


鼻を押さえながら必死に自分を踏む人物の顔を見ようと首をまわす。

私の横から月明かりが差し込んでいる。きっと傘を外したことにより顔が確認できたはずだ。ニヤリを笑い腰にぶら下がる刀に手をかける。


「あの傷だから死んだとでも思ってた?生憎、この通り怪我は全快したんだなぁー」
「テメェのせいで大損だ!あいつらほどの上玉なら暫く遊んで暮らせたってのによぉ!!」

「あぁうるさい畜生だ。今更騒いでも、もう遅い」



さようなら。



「ギャッ」




刀を振り落とし首を切り落とす。短い断末魔のなんとも情けないことか。

うへぇ返り血浴びちゃったか。まぁ仕方ない。


「お、お頭!?う、うわぁ!!」


頭としていた人間が、見知らぬ血まみれの人間に踏まれている。そんな状況を見ればだれだって腰を抜かすだろう。よく見ろよこのあいだ私と出会っただろ。


「お前も、こいつの仲間の人攫いか」
「ひ、ひぃい!」

「今なら逃してやる。消え失せろ」
「う、うわぁぁああ!!」





「なーんつって。」





懐から銃を取り出し逃げる男の両足を打ち抜いた。ズザァと倒れこむ男は撃たれ血を流す場所を手で押さえ、必死で止血をしていた。一丁だけ持ってて良かった。


「イ"ッデェェエ!!!」
「逃がすわけないでしょう。あんたたちの首持ち帰らないといけないんだから」

「だ、誰に雇われた!!テメェは一体、何者なんだよぉお!?」






「…私は、ただの、忍術学園の用心棒だよ」



首を刎ねる。





さて、お仕事完了でござる。動かなくなった胴体はゴロリと足蹴にして、首から離す。

持ってきた風呂敷に二人分の首をつつんだ。本当にこいつら臭いな。うちの船の男どもでもこんな臭いしないのに。何日風呂に入ってないんだろう。

最初に刎ねた方のお頭さんの胴体もこんな場所にあっては登山客にバレていろいろ面倒なことになりそうだ。今無き首のあった襟と掴んでずるずると小屋の裏側に運んだ。もう一人も一緒に。













しかし、まだ気配がする。







この小屋の中だろうか。
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