22.蝶の様に舞

「つまりこの学園は、何処かに狙われているということですか?」
「さすがじゃのう。察しがよい」

忍者というのは暗闇を生きるもの。敵に回せばいくら腕の立つ武士でも敵うまい。

その忍者を育てる学園。その脅威は早めに根絶やしにしておくべきであろう。





たとえそれが、幼い子供たちでも。






「この学園は何度も狙われておる。それも、上級生が実習や忍務でいないときや、先生方が出張でいなくなっているタイミングを見計らってじゃ。下級生はまだ実戦を重ねることが少なく、"殺し"というものにまだ抵抗がある。そこで、」

「下級生しかいないときは危ないので、いつ死んでもこの学園に何らかの影響を与えることはない私に、矢面に立てということですね」

「そんな風には言っておらんじゃろうて」
「失礼。私にはそう聞こえましたので」



探りあいながらというようなこの会話。学園長先生が何を企んでいるのかは解らない。

だがこれはいい話だ。正直私はここにいてもいなくてもどちらでもいい存在だ。もし私が彼等を守れたらそれはそれ。守れず殺されたとしても、この学園の人間ではないのだから此処には何の支障もきたさない。

それに"殺し"というものに抵抗があるのなら、戦闘そのものにも抵抗があるはずだ。この学園が本当に狙われているのなら全滅することは目に見えている。上級生の皆がいないとき、先生方がいないとき。つまり下級生だけ。なるほどね、確かに危ない。


「その話、お受けいたしましょう。殺しというものに私は一切抵抗がない。この命を救ってくださったこの学園を、この命を賭けてお守りいたしましょう」

「話が早くて助かるのう。何が使える」
「色々と。銃、刀、武術。生きるために全てを身につけております」


得意不得意はありますが、と、苦笑い。

つまりは私に用心棒になれということだろう。それも主に下級生の。


本格的なそういう実戦授業は四年生から。つまり上級生になってからではないと行わないらしい。3年生までの下級生の身を守れということだ。てことは4年生からは相当強いんだろうな。六年制授業で卒業ということは、6年生が一番プロの忍者に近いということだ。つまり、彼等に私は必要ないだろうな。そりゃそうか。女に守られるのもあれだもんね。

それ以外にも、必要とあらば下級生だけのお出かけにも付いていけということらしい。庄ちゃんと彦にゃんの一件から、人攫いに警戒して出かけなくてはならなくなったらしい。





そうだ、それならば





「学園長先生、その人攫い私が始末いたしましょうか」


そういうと学園長先生は目を細め、ヘムヘムは驚いて顔を上げた。


「…なんじゃと?」

「私の嗅覚は、あの虎の姿をしていれば犬より鋭い。風呂に入っていないような臭いをしていたあの人攫いどもの臭いならしっかりと覚えております。それにここまであの二人を運んできた道も覚えています。辿り戻り聞き込みをすれば本拠地ぐらいわかるでしょう。その首、此処へ持ち帰りましょう。それから、私を傭兵として本当に雇っていいものか、判断したほうがいいかと。何を根拠にか知らないが、貴方は私の腕を信じきっているとお見受けします。一度私の実力、見ていただきたい」

「………なるほどのう。」
「それなら、安心してみんなお出かけできるでしょう?」
「それもそうじゃのう」


本当はことの始末は六年生に忍務として任せようとしていたと、学園長先生は顎に手を当てた。

しかし学園長先生はさっき学級員会のみんなに私の話を聞いていたといっていた。強盗窃盗詐欺人殺し等等をやったという話も聞いていたはずだ。一度はこの手を完全に悪に染めきっているのだ。きっとそんな私は、何を仕出かす人間解らないであろう。




手に迷いはないのか。

力はあるのか。

どうやって殺すのか。

何もかもを見てからのほうがいいだろう。




もう今は血飛沫を上げる癖もなくなったが。







「…いつ、仕事にかかる?」





腰にぶら下がる刀に手をかけ、


にこりと笑って




























「今すぐにでも」
















私は裏の山へと向かった。































一つ、後ろ追う影は、多分土井先生。




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「あ、でもじゃぁこれら必要ないんで置いておきますね。ちょっと預かっててください」



ドサドサドサドサドサ…



「…お主一体どこにこれほどの銃を持っているのじゃ」
「企業秘密です」
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