19.鬱時々興奮 「えっと…つまり…」 「そうですね、要約すると……私は別の、他の場所……いや、別の世界、から…何らかの理由で、ここへ、来てしまったと…」 土井さんという方に質問攻めをした後、ゆっくり事態を考え直した。 私は憎きあのクソ船長に撃たれ刺され海に落ちて、気づいたら海に落ちたあの時のままで山にいた。そしてやたら可愛いこの黒木くんと今福くんを拾いここへ来てしまった。 来る途中に海らしい匂いはしなかった。してたら気づくはずだ。海から流されてここへ流れ着いたとは考えられない。 っていうか、さすがに大海賊時代という言葉を知らないというのはおかしすぎる。どんだけ文明が発達していない島だって、今は星の数ほど海賊団がグランドラインを進んでいる。海賊というものを見ているはずだ。最悪海賊が上陸していたり。グランドラインからレッドラインまで行くためにログをためて進めば必ずどこかしらの島にはつくのだ。 それに私が居た場所は「新世界」だ。新世界の島こそ日常のように海賊を見ているはずだ。もし私が新世界を出てグランドラインに流されていないのならば、海賊ぐらい知っているはずだ。 「大海賊時代」なのに今は「乱世」だと言う。「海軍は知っているか」と聞くと「海賊のことなら兵庫水軍に聞いてください」と言う。 「海賊」を「水軍」という。水軍というのならワノ国なのかと聞けば、ここは「ひのもと」という場所だという。火の元だろうか。よく解らん。 その後は色々また質問攻めをしてしまった。 本当に電伝虫を知らないのか。 悪魔の実の能力者もいないのか。 グランドラインは不思議なことだらけ。何が起きても決して不思議と思ってはいけない。 いや、だからってこれはねぇだろ。なんなのこれ?トリップなの?別世界にトリップなの?デービージョーンズさんはなんなのそんなにイタズラ好きなのふざけんな成仏しろ。 「いやー…ここまで私の常識が通用しないとなると……そう、考えるのが妥当ではないかな…と……」 「…そう、言われれば、香織さんの言っていることが、全て理解できないというのも納得ができます。が、しかし…」 「……いや、私だって信じられないですけど」 呆然とする彼等四人と、土井さんに囲まれた状態で私は全てを話した。 いろいろあって船の上で戦ってて、海に落ちて、ここにきたこと。 それから私の世界のこと。大海賊時代と言われる時代で、海には海賊どもがうようよいるということ。 一番彼等に疑問を抱かれたのは、私が虎に変身した、ということについての話だった。 「どういう幻術なのか」 「どれほど修行を積めばそんなことができるのか」 青い衣装を着ている…えっと、鉢屋さん、と、尾浜さん、であってるよね。この二人に凄いキラキラした目で聞かれたのだ。だが、残念だがこれは取得できる技なのではないと伝えると、彼等は目をパチクリさせる。 次に話をしたのは、「悪魔の実」というものの存在についてた。 人間離れした能力を手に入れることができるかわりに、海で泳げなくなる、極度に水に濡れると力が身体から抜ける。そういうリスクがあるので、船乗りにとっては厄介なのだが、面白い能力が手に入ればあたりだ。一か八かで食べる人もいる。私は知らずに食ってしまったのだけれど。 私が食したのは数ある種類の中のひとつ、 動物系ネコネコの実モデル、ホワイトタイガーである。 「それは、一体どういう味のするものなんですか?」 「ゲロみたいに不味いよ」 「ゑっ」 「他にも種類があるのですか?」 「あるよ。私の乗ってた船にもいっぱいいたもの。火を操るやつとか、不死鳥になったり。パパは、あー…船長は、地震を起こせたし、空島に行った時は雷を操るやつにもあったね」 「そ、空島?」 「空に島があるんですか…!?」 「あぁそっか今度はこの話になるのか」 喋る速度は休まらない。休まらないというか、休ませてくれない。 この「ひのもと」という島の地図を見せてもらったが、私の世界の島的なものでこんなにデカイものはレッドラインぐらいだろう。 広い海に点々と色々な島があるという話もした。島全体が砂漠だったり、年中カーニバルをしている島や、町全体が海に浸かり水上で暮らしている島。シャボン玉が地面から湧き出る島や、そして地上から1万メートル上にある空に浮く島。 ま、その話はいいさ。どうせ喋ったらきりがないしね。 「さきほど、懸賞金がかかっている、という話をしていましたが」 「あぁ、私はお尋ね者なんだ。指名手配されている身なんでね」 「は、犯罪者、ということですか!?」 「まぁ、海賊名乗ってる時点でもはや犯罪者なんだけどね。もちろん、必要とあらば人も殺してたこともあったよ。ほとんどはさっきいった、海賊の敵、海軍を。最近は必要最低限は血を浴びないようにしてるけどね」 「ち、ちなみにその、金額というのは」 「さぁ、一番最近確認したのは2年前だったかな。その時は2億ベリーだったけど。」 「「「「におく!?!?」」」」 「そ、その、ベリーというのは、円でいうと、」 「円か。円もワノ国であった金額だなぁ。えーっと1ベリー1円。一緒だよ」 「に、におく円……」 「香織さん、一体何したんですか…」 「…窃盗、強奪、詐欺、人殺し。色々やったよ。 ………生きるのに、必死だったから…」 目を伏せる。布団を、少し強く握る。 嗚呼、忌々しい過去がよみがえる。 「今は、私の世界で一番強いって言われてる海賊団に入ったから、それでまた懸賞金上がったかもね!」 彼等は関係ないのだから、気を使わせてはいけない。 「と、ところで、ここは。その、にんじゅつがくえんと、仰いましたが…」 「ここは、10歳から忍者についての知識、そして技を学ぶところです」 「は!?NINJA!?まじですか!?あ、もしかして、忍術、学園ですか!?!?マジNINJAですか!?」 「え!」 「忍者ってあれでしょう!?黒い服に身を包んで月明かりを背負って城に忍び込んだり戦を掻き乱したりするNINJAでしょう!?」 「え、えぇ、その、まぁ、」 何を隠そう、私は忍者が大好きなのだ。というか、和が好きなのだ。昔のBUSOUやNINJAが大好きなのだ。 ワノ国で忍者のコスプレをエースとノリノリでしてパパに大爆笑された過去がある。まじ手裏剣を投げたり隠れ身の術とか水遁の術とか教えてくれた忍者(もどき)の人がカッコよすぎて失禁しそうになった。っていうか水遁の術で死にそうになった。あれはだめだあれは。 ワノ国史の歴史の本全50巻をまとめて買ったのは未だに秘密だ。あ、ちなみにエースの財布から金とったった。 「あ!さっき忍者だと言ってましたよね!!!土井さんも忍者なんですか!?」 「え、えぇ、私は、その、ここで、忍者の仕事をしつつ、この子たちに教えを」 「え!?黒木くんたち忍者なの!?」 「僕等は忍者のたまごです!」 「略して忍たまです!」 「ちなみに僕等もそうです」 「僕等は五年生でーす」 「NINJAはもう滅んだって聞いたのにすげぇ生NINJAだ!!!何か忍術見せてください!!!!!」 「忍術ではないですけど、私のこれは本当の顔ではないです」 「こいつは友人の顔を借りているんです」 「ちなみに鉢屋先輩の素顔は」 「誰も知らないんです」 「HENSOU!!!!!!!!!!」 「香織さん、鼻血出てますよ」 「黒木くんは超冷静だ!!!私は大丈夫!!!ちょっと興奮しただけ!!!」 そして今度は私が質問攻めをする番だった。 忍術学園とは一般の人には知られてはいけない超秘密の学園らしい。そして学園外から寄せられる任務に上級生(六年制らしい)達が対応したり、戦場に行ったり。 そしてたくさんの委員会があるらしい。この四人は学級委員会だそうな。クラスのお手本にならないといけないんだって。すげぇー。大変だねー。 後は体育委員とか、作法委員会とかがあるらしいのだが、どう考えても会計委員は忍者になるために必要な委員会ではないだろう。何計算するんだ。 そして制服の色も学年によって違うとか、全寮制だとか、ちょっと離れた場所に男子禁制のKUNOICHI教室があるとか。なにそれオラわくわくすっぞ。 本当に、私は異世界に来てしまったらしい。これじゃ私の常識が通じないのも当然だ。まじでNINJAか今度なんか教えてもらおう。術よ術。 「すごいですね。なんというか、本当に別の世界だ…」 「そんな他人事のように…」 「だって感動しちゃって…」 「…それはそうと、香織さん、これからどうなさるおつもりですか」 そう、それが問題である。此処へ来た方法がわからない。つまり帰る方法もわからない。 「うーん、変える方法わかんないし、とりあえずこの近くに町はない?」 「あ、ありますよ」 「じゃぁそこ行って宿でも探そうかな。金ならいくらでも作れるし」 「え、」 「いや、略奪とかはもうやってないから」 「あ、そうですか…」 「行く場所がないのならば、ここで事務員さんとして働くがよいわ!」 投げ込まれた煙玉から老人が現れた!!!!! やべぇまじで忍者じゃんこれがあの煙玉だSUGEEEEEEE!!!!!!!! (19/44) |