17.感謝と疑問

「失礼します、一年は組教科担任の土井半助でs」
「一年は組学級委員長黒木庄左ヱ門です!香織さん!」
「一年い組学級委員長今福彦四郎です!目を覚まされたのですか!?」
「こらお前たち!私の言葉を塞ぐんじゃない!」

「あ、黒木くんに今福くん!久しぶり!」

「庄ちゃんじゃないか!」
「やぁ彦にゃん!」

「尾浜先輩!鉢屋先輩もいらしていたんですね!」


怪我はもう大丈夫なの?と心配してくる香織さん。貴女は多分他人を心配しているバヤイではないです。


保健室にはいると、布団の上で起き上がっている香織さん。その横には鉢屋先輩と尾浜先輩が座られていた。

久しぶりと笑いかけてくださる香織さんの顔色を見る限り、どうやら体は回復してきているようだ。本当によかった。


善法寺先輩は「とりあえず今は学級委員だけで話し合いなよ」と、言って、裏庭の薬草園に薬草を取りにいかれた。

ありがたい。僕たちだけしかしらない、聞きたいことが山ほどあるからだ。


食堂のおばちゃんからおにぎりを二つ握ってもらい、香織さんのために持っていった。
おにぎりを渡すと、「丁度腹ペコだったんだー。嬉しい!」と受け取ってくださった。


「あの、香織さん」
「待って黒木くん、もしこの間のことについてお礼を言おうとしているならもういらないから」

おにぎりを食べるのをやめ、 香織さんは手をだし僕の言葉を遮った。

「起きたとき、善法寺さんという人から、それから鉢屋さんと尾浜さんからもう散々お礼を言われたところなんだ。もう充分、お腹いっぱいだよ」


ここまで運んでくる間にも言われてるし。

香織さんはそういってまたおにぎりにかじりついた。手元にあるお茶はきっと、鉢屋先輩か尾浜先輩が持ってきたのだろう。


「でも、私からもお礼を言いたい。きっと君たち二人の声が聞こえなければ、君たち二人が助けを求めなければ、私はあそこで力尽きて死んでたはず。
君たちを此所まで運ばなければ、こんな優しい人たちに囲まれていないし、怪我も治療されなかった。
君たちに助けられたと言っても過言じゃないわ。本当に、ありがとう」

香織さんは僕らに向かって頭を下げた。
やめてください、お礼を言いたいのは僕らの方なのに。

「では、私からは言わせてください。私は土井半助と申します。黒木庄左衛門のクラスの教科担任の教師です。私の大切なクラスの生徒を、その大切な教え子の友人を、人攫いから救ってくださったこと、本当にありがとうございました。
どう感謝していいのか、言葉で言うだけでは物足りません」

一歩前に出て、土井先生は香織さんに土下時をした。

「や、本当にもう、気にしないでください私が好きでやったことですから」


ごちそうさまでした。と、香織さんは皿に手を合わせおにぎりを完食した。

ふう、とため息をついたとき、香織さんは顔色を変え、大慌てしたように自分の首を確認した。
そこには以前、爆発した首輪がついていた。

爆発を実際に見たわけではないが、爆発音は聞いたし、尾浜先輩から何があったのか聞いたのだ。


「く、首輪は!?ここに、あの、赤い首輪、ついていませんてしたか!?」


そういい香織さんは近くにいる鉢屋先輩の腕をつかんだ。


「あの首輪は、傷の治療ができないので、ここにはいないとある生徒が外しました。そして、投げ捨てたときに爆発しました。あれによる怪我人は出ていません」

勢いに押されどうしていいのかわからないという表情をしている鉢屋先輩の代わりに、横にいた土井先生が答えた。

香織さんはその言葉に、一瞬目を白黒させていたが、ようやく理解することができたのか、小さな声でよかった、と呟いた。


「私たちは、貴女が別の動物の姿になれるということを知っています」

静かに、土井先生は再び口を開いた。
香織さんは顔を上げる。



「香織さん、私たちは貴女に聞きたいことが山ほどあります。


貴女は、一体何者なんですか?」




すると香織さんは、キョトンとした顔をして、






「何者って、ただの海賊ですよ。そんでもって、ただの悪魔の実の能力者です」






今度は僕らが、キョトンとする番だった。
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