私はしがないOLである。少々二次元を嗜んでいて、推しに貢ぐために日々社畜となっているだけであまり他のOLと変わらないだろう。

そんな私の最近の推しは真実は一つの名探偵と文豪の名を持つ彼彼女らがヨコハマの街でバトルを繰り広げるあれだ。

あれれ〜?を生で聞きたい、重力に押し潰されたい、一緒に心中したい!!
そんな欲望を沸々と滾らせながら私は日々を生きているのだ。しかしそんな思いを抱いているからといって犯罪者になった覚えはない。

「えぇっと…」
「……」
「……」

此方を不審者を見る目で見てくる黒い癖っ毛のショタと赤銅色の髪のショタ。
えぇ、えぇ、私のイチオシ「文豪ストレイドッグス」に出てくる「太宰治」と「中原中也」にそっくりなショタですよ!!

……私が家に帰るまで玄関は鍵が閉まっていた。誰かがこの家に侵入してショタたちを置いて行った?一体何の為に?確かにあの双黒にそっくりではあるけど、本人という確証はない。

この状況になった意味が判らなくてうんうん唸っていると、太宰さんにそっくりなショタが私に近づいてきた。

「ねぇおねえさん、だぁれ?」

ひえっ。宮○真〇のショタ声やん…。最推しそっくりなショタから発せられた声に気絶しそうになったけれど気力で耐える。

近づいてきておきながら警戒心丸出しのショタと目線を合わすようにしゃがんで自己紹介をする。私の名前を口の中で転がして、太宰さん似のショタはにっこり笑った。

「ぼくはだざいおさむ。よろしくね、おねえさん!」

……んん?

「ぼくとこのこ、きゅうにここにきたから、いくところないんだよね。…だめ?」

はいよろこんでーーーー!!
にっこりと笑う太宰さん(仮)に抗う術など無かった……。ところで中也さん似のショタが一言も喋ってくれないことが気になるんだけども。
私たちから少し離れた場所に立ち、じっと睨んでくる中也さん(仮)をちらっと見れば嫌々そうに口を開いた。

「……なかはらちゅうや」
「うん、中也くんね。治くんも中也くんも宜しくね」




太宰さん(仮)と中也さん(仮)との生活が始まって数日。そこそこうまく生活できているんじゃないだろうか。仕事があるからずっと家にいるということは出来ないけれど、二人は大人しく家で待ってくれている。

ちなみに二人とも(仮)ではなく本物でした。驚きだよ…次元超えてきちゃったよ……。

確信を得たのは中也さんがバキッと持っていた玩具を壊してしまったからだ。ふよふよと重力を無視して動く欠片は太宰さん……治くんが触れたことによって動きを止めた。完全に「汚れつちまつた悲しみに」と「人間失格」だよ…。

「……へんだろ。おれ、すぐにこわしちまうんだ」
「変じゃないよ」

玩具を壊してしまった罪悪感からか俯き、己を否定する中也さん……中也くんの手をぎゅっと握る。
握ったことに驚いた顔をした中也くんは慌てて私の手を振り払おうとするけど意地でも離さない。怯えた目で私を見てくる中也くんににっこりと笑いかける。

「大丈夫。知ってる?人間て案外丈夫なんだよ」
「……じゃあ、て、にぎってもいいか?」
「勿論!」

自分よりも遥かに小さい手を握る。これで重力で潰されるなら本望です。……さすがにそれは引かれてしまうかもしれないので口にしないけれども。

それから中也くんは時々だけど自分から私に触れてくれるようになった。成長した中也さんは上手に重力を操るんだからそんなに気にしなくてもいいと思うんだけどなー。






「ちょっ、治くん!駄目でしょ!!」
「えーなんでー」
「何でも!死んじゃうわよ」

隠していた包丁をいつの間にか取り出して、無邪気に自分に向けている太宰さんを慌てて止める。
確かに心中したいとは思っているけれど、私がそう思っているのは22歳探偵社社員太宰治であって、未来あるショタじゃないんです!

包丁を取り上げればわかりやすく拗ねた顔をされた。

「どうせぼくがしんでも、みんなかなしまないよ」

仄暗い目で私を見てくる太宰さん。この時から自殺願望あったのか……。太宰さんを変えるのは織田作の仕事だし、私が今此処で何か言ったとしても変えれるとは思わないけど自分より下にある頭をそっと撫でる。

「私は、悲しいよ。沢山泣いて溶けちゃうかも」
「……そうなの?」
「うん、だからそんなことしないでくれると嬉しいなあ」
「…………。わかった。おねえさんが、そういうなら」

何に納得したかは判らないけど、太宰さんが自殺するのをやめてくれたようでよかった。
ほ、と胸を撫で下ろしていた私は太宰さんが私のことをじっと見つめていることには気付かなかった。





『あんた、まだ結婚しないの?』

突然かかってきた親からの電話に少々辟易する。私の母は自分が早くに結婚したからか、私にもそれを期待しているようで親元を離れ一人暮らしをしている私に度々結婚を急かす電話をかけてくる。

いい母だとは思うけれど、そういうことは私のペースがあるのだからそっとしておいてほしい。…なんて言えないけどね。

『早く孫が見たいのよねぇ』
「……そ、だね。でも今は色々と忙しいし」
『あんた、またそんなこと言って。……まぁこの話は終わりにしましょう、体には気をつけてね』
「ん、ありがと」

電話を切って深く溜息をつく。

「結婚、結婚かぁ」

正直今は二次元に貢ぐのが楽しすぎてそういうことは考えられないんだよね。
なんて言った日には見合いを組まれそうだから口が裂けても言えないけど。

それに、とすやすやと寝息を立てている小さな二人の姿を見る。
この子たちとの生活が楽しいから無理に結婚することないよね。なんか気持ちは我が子だよ……。ファンに知られたら刺されるだろうけど。

寝ている二人を起こさないように翌日の準備を始めた私は気付かなかった。二人が実は起きていて、こそこそと言葉を交わしていることに。

「けっこん、だって」
「おれたちがいるのに」
「ね。おねえさんは、ぼくらのものなのに」
「おれたちじゃダメなのか…」
「……ねぇねぇ!いいことおもいついた!」






今日は文ストの特集が組まれた雑誌の発売日である。
流石に彼らの姿が描かれているそれを本人たちの前で見る訳にはいかないけど、ファンとしては確保していたいわけで……!

仕事帰りに本屋に寄って雑誌を買ってルンルン気分で家に帰る。中身を見るのは二人が寝てからになるだろうけど、自分の手元にあるという事実が気分を高揚させる。

「ただいまー!」

意気揚々と帰宅して何も返事がないことに気が付いた。
……?電気はついてる、けど……。いつもなら嬉しそうに出迎えてくれていたのに。嫌な予感がする。

そっと中に入ってリビングを見てみれば床に落ちている『文スト』の単行本。
机の上には彼ら用にと買ったマグカップが放置されている。中身は入っていて先ほどまでいたことが判る、けど。

「……帰っちゃったのかな……」

突然来たのだから突然帰ることもあり得ないことではない。だけど余りにも突然すぎて少し寂しい。

彼らはあくまで二次元の人間だ。相容れない存在だとは判ってるけど……。
少しだけ、もう少しだけ一緒に居たかったなぁ。




太宰さんと中也さんが帰って数日。
ショックではあったけど時間は待ってくれない。それに仕事に没頭すれば寂しさは紛れた。

「米花支店に行ってほしい」
「ん????」

上司から言われた単語に首を傾げた。
米花、だと……!?うちにそんな支店あったっけ!?

混乱を極めている私を置いて上司の話は進んでいく。新しい支店を作ることになったが、米花町に行きたがる人間がいないらしい。
そりゃあそうだよね。いつ事件に巻き込まれるか判らないのに、態々行きたがるような人間いないよね。

で、そこで前から「米花町に行きたい」と公言していた私に白羽の矢が立ったらしい。
私が行きたいと思っていたのはあくまで二次元の世界だったからであって、現実の米花町に行きたいという訳ではないんだけどね!

そもそもいつ私はコナンの世界に来たの?え?巷で噂のトラ転でもした?
職場もあるし友人、同僚、家族も変わらずいるのでトリップというよりは融合…?
うんうん唸っている間に私の米花町への転勤は決まってしまった。





米花町たーーのーーーしーーー!!
転勤してくるまでの鬱々とした気分は、実際に米花町で過ごす内に何処かに行ってしまった。転勤に合わせて引っ越したというのもあるかもしれない。
環境が変わったことで気分も変わり私は日々を楽しく過ごしている。

……悲しいことがあったとすればコナンの世界と融合したからか、コナン関連の本やグッズ、DVDなどが一切見当たらないことだろうか。
まさか公式に貢げなくなってしまうなんて思いもしなかった…。その分ポアロに通ってお金を落としてるけどね!

「あ!今日も来てくださったんですね」
「ふふふ。梓さんのカラスミパスタが食べたくなって」

今日も今日とてポアロに通う私。あまりの頻度に看板店員である梓さんとお喋りする程の仲になれた。
いやぁ漫画で見た時も思ってたけど、梓さん可愛いなあ。にこにこと笑いながら用意をしてくれる梓さんを見ながら私も笑みを浮かべる。

「梓さーん。これ、何処に置きますか?」
「あ、安室さん。それはキッチンにお願いします!」

んんんんん!?この声は100億の男…!?
突然のことに飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになったけど寸でのところで耐える。いやまさか100億の男こと安室透がいると思わないじゃん……。コナンの中の最推しだよ……。

今コナンがどこまで進んでいるのか判らないけど、安室さんが此処にいるってことは赤井さんが沖矢昴になってたりするんだろうなぁ…。
にこにこと愛想を振りまいている安室さんを見ながらそんなことを思う。

「僕の顔に何か?」
「いいいいいえ何でもないです」
「そうですか…。熱い視線を向けられていたので何事かと思いました」
「ひぇっ…顔がいい……」
「?何か?」
「いえ何も」

あまりにも凝視していた所為か安室さんが困ったように笑いながら声をかけてきた。笑っているけどその目は私のことを警戒していることが丸わかりだ。
違うんです…貴方の顔が大変いいのでつい見ていただけなんです……。

思わず零してしまった声にも反応されたけど、私も笑顔を浮かべて誤魔化す。私は善良な日本国民なので許してください!許されたい!!






安室さんがポアロにいると発覚してからも私はひたすらポアロに通っていた。合法的に貢げるとしたらこれしかないから仕方ないね。そんな、安室さんやキャッキャウフフしたいなんてそんな。

最初は安室さんに疑うような目を向けられていたけど調べたんだろうね、今はもう疑うような目は向けられていない。代わりといってはなんだけど、呆れたような目を向けられることが増えたけどね!

「そうだ。そういえば、この前新しくオープンした水族館に行きたいって言ってましたよね?伝手でチケットが手にんですが、よければ今度の土曜日にでも一緒に行きませんか?」

今日も今日とてポアロでのご飯を楽しんでいたら不意に安室さんがそんなことを言ってきた。にこやかに笑う太宰さんの手には件の水族館のチケットが握られている。
安室さんの背後では梓さんがにやにやと笑いながら此方を見ていた。あむぴの女としては頷きたいところだけど……。

「すみません。その日は用があって…」
「そうですか…。……チケット、まだ日があるので。時間が出来たら教えてくださいね」
「ひゃい……」

ぎゅ、と手を握られてベビーフェイスに迫られて頷かない女がいるだろうか、いやいない。安室さんの顔の良さに混乱していた私はまたまた気付けなかった。不穏な視線が私に向けられていることに、それに安室さんが気付いていて鋭い目をしていたことに。







来ました、聖地横浜ー!!

コナンの世界と融合したと気付いた時はあまりの混乱に気付かなかったけど、なんとこの世界。文ストのあれやこれも消えている。
つまりこれが指し示すこと、といえば…!

この世界はコナンと文ストのクロスオーバー…!!
なんて美味しい世界なの!

(運が良ければ)ジンと中也さんの絡みとか、(運が良ければ)探偵組と乱歩さんの絡みが見れるかもしれないという可能性に胸が高鳴る。後者はともかく前者が見れる可能性は限りなく低いけれど。というか目撃した瞬間、私の命の保証はないよね?

横浜に来たのはそんな下心満載な理由だ。
安室さんの誘いを断るのは申し訳なかったけど、土曜日ということでホテルも予約してるしアニメで見た聖地を巡礼するんだー!

意気揚々と横浜駅から出てホテルへ向かおうとした時だった。

「嬉しいなぁ!君の方から会いに来てくれるなんて」
「エッ」
「君とまた会えるのを楽しみにしてたんだ」

目の前に広がる砂色の何か。そして頭上から聞こえてくる声と背中に回されている手から私は自分が誰かに抱き締められているということを理解した。

聞き覚えのある声。妙に楽し気な声に恐る恐る顔を上げると、そこには酷く嬉しそうな──太宰さんの顔があった。

エッ。

「なァに巫山戯たこと抜かしてンだ、糞鯖野郎。俺に会いに来たに決まってンだろ。なァ?」
「エッ」

これまた楽しげな中也さんの声が聞こえてきた。
頭上で言い争う二人の声を聞きながら私は必死に状況を把握する。二人の言葉からして、あの短い生活のことを覚えてるのは確実…だよね?

それで、私を探してた?そもそも私が今日此処に来ることを把握してた?
ぞくり、と背筋が震える。いやいやいや、まさか、そんな。

「ずっと君を探してたんだ。──私を生かしたんだもの、責任は取ってくれるよね?」
「何を言って、」
「俺たちを捨てるのか?」

仄暗い目の二人に嫌な予感がする。こんな二人、私は知らない。
逃げないと。太宰さんから離れようとしたけど背中に回された手の所為で離れることは出来ない。そうしている内に中也さんも近づいてきて私の荷物をそっと奪われた。

「それじゃあ行くか」

待って、の言葉は言えなかった。










引き摺るように連れてこられたのはどうやら中也さんの家らしい。
手前の為に用意したんだ、なんて微笑む中也さんは大変恰好いいけど私の部屋だと紹介えた部屋にある拘束具の数々に血の気が引いていく。

「わ、たし…帰らないと……」
「帰る?帰るってどこに帰るんだい?」
「え……」

後ろに立っていた太宰さんに背中を押され体勢を崩してしまい、そのままベッドに倒れ込む。
やばいやばいやばいやばい。明らかに此方に好意を抱いている人たちとベッド。その意味が判らない程無知な訳じゃない。

慌てて起き上がろうとしたけど中也さんに手早く拘束具をつけられてしまい、身動きが取れなくなってしまった。つけられた手枷はベッドサイドの柵に繋がっていて簡単に身動きが取れなくなった。

「もう外に出るな。必要なものがあるなら俺たちに云えばいい。手前の為なら何だって用意してやるぜ?」
「ま、待って!」
「待たないよ。だって私たち、ずぅっと君を待ってたんだから。──もう我慢できないんだ」

にっこりと笑う太宰さんの顔が、優しく私に触れてくる中也さんの指先が恐ろしくて堪らなかった。









「ぁ"ああ!や、っ、ぁっ〜〜〜〜!!」

陰茎で膣内を勢いよく貫けば彼女は顔を真っ赤にさせながら声を上げた。即効性の媚薬を飲ませたので感度が上がっているのだろう。
与えられる快感から如何にか逃げようと体を捩っているけれど、繋がっている所為でそれは叶わない。

漸く彼女と体を繋げることが出来た多幸感に太宰は熱い息を吐きだした。

「ふ、ふふ。ねェ、気持ちいい?」
「ぅ"…ぁ、まっ、うごかな、でぇっ…!」
「でも中也が待ってるから我慢してね。幾らでもイッていいから…!」

音を立てながら腰を打ち付ける。ごうごつと最奥に擦り付けるように動けば、彼女は再び達してしまったようでのぞけっている。
涙も涎も全て垂れ流して感じ入っている彼女を見ると満ち足りた気分になってくる。

自分が死んだら悲しいと、本当に泣きそうな顔で云った彼女。
幼い頃の夢だと思ったが15の頃に再会したともいえる中也も彼女のことを覚えていて、あれが夢ではないと確信した。

「沢山注いであげるから残らず飲んでね…っ」
「ん"、んんっ!ぁ、ダメ、イクッぁ"〜〜〜〜!」

奥を突いて彼女の子宮に精を流し込む。叶うことならこのまま自分の精だけで孕んでほしいところだが、彼女は自分たちのものだと最初に云ったのは自分なので中也にも譲ってやらなければいけない。
不満を隠さず顔に出せば、太宰の心境を察したであろう中也に鼻で笑われた。

「『約束』が厭なら手を引けよ」
「そんなことする訳ないじゃない。……彼女は私たちのものなんだから」
「っ…ッ……」

絶頂から戻ってきておらず体を震わせている彼女の額にそっと口づけを落とす。
それだけで感じてしまって甘い声を漏らす彼女。中也が手に入れた媚薬は思っていた以上の効果を発揮しているようだ。
きっと薬が抜けきった頃には自分たちから離れようと思えなくなるだろう。

中也の陰茎を挿入されて再び甘い声を上げている彼女に舌なめずりをする。
却説、と言葉を零して彼女の嬌声を背に部屋から出ていく。乱れている彼女の姿を最後までこの目に焼き付けることは出来ないが、撮影はきちんとしているので後で彼女と一緒に見返すのもいいかもしれない。

そんなことを考えながら彼女の荷物から携帯端末を抜き取る。
仕事も辞めさせて、彼女の友人らとも適当なことを云って縁を切らそう。

「愛してるッ…!!」
「あ"ぁ、んん〜〜っ!」

開いている扉の隙間から中也の声と彼女の嬌声が耳に届いた。
中也に先を越されてしまったことに若干の憤りを感じつつ、自分も彼女に愛を囁くべく太宰は部屋に戻った。

もう二度と彼女がこの部屋から出ることはない。
──────────────────
りぃさま、リクエストありがとうございました〜!
愛讃歌、割と初期から見ていただいて感想も実はりぃさまが最初にくださったのでよく覚えています笑
リクエスト作品、こんな感じになりましたが如何でしょうか…!
楽しく読んでいただけると嬉しいです( ´艸`)
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