「楸瑛、こんなところに櫂兎は居るのか?
………………楸瑛、」
丁度『それ』が床に落ちたとき、邸内あらかた探し終えた劉輝は地下を覗き込んで顔を固くした。邸迷って何故か最奥まで辿り着いた絳攸も、釣られて地下覗き込んでは固まる。
「あっ、いや、ちょ…主上、絳攸、誤解だよ。ほら、これ、これをさ」
床に落ちた『それ』を拾い彼らにみせるが、床に押し倒され乱れた櫂兎の方に彼らの目線は向けられた。
白い肌、乱れた服、潤んだ瞳
「櫂兎が楸瑛の毒牙に!」
「何もしてませんんん!」
「棚夏殿を穢しやがってこの常春!見損なったぞ!!」
「いやだから違うって! 棚夏殿も何か言って下さいっ!」
「………無理矢理だなんて、酷いよね」
地下に降りてきた劉輝と絳攸は、未だ櫂兎の上に馬乗りになっていた楸瑛を蹴りつけ、櫂兎から退けた。
「いや、痛っ、痛い、蹴るのやめて!? 私は本当に何もしてないよ!!」
「この状況で信じろと!?」
そう叫んだ絳攸の後ろで劉輝はさわさわと櫂兎をあちこち触ってみる。そして言った
「未遂のようだなっ!」
「流石経験者です主上、っていうか手を出してすらいませんからね」
男に手を出す趣味はありません!と楸瑛は半ば涙目で言った。
櫂兎は起き上がり、ついた埃やらをはたき落として『それ』を拾った。
「で、まあ常春楸瑛いじりが終わったところで。お三方の今日の目的は、もしかしなくともこれか?」
ぺらりとその書状――宮廷内どこ歩いててもお咎めなしのチートアイテムを翳す。それをみた三人の目は見開かれた。
「……ちなみに、棚夏殿は棚夏櫂兎が本名でいいんですよね」
「うん。っていうかそれ以外の名前なんて持ってない」
「櫂兎のいう事だ、戸籍を調べる必要もなく真実だな」
「……」
実は戸籍ないような気がすることは伏せておく。
「……『王の客人』?」
指さされ櫂兎は苦笑して頷いた。
「殲華とはいい友人だ」
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