33333Hit-2

「むー……うーむ、むーん、むむむ……むむぅ…」


「おやおや、どうしました主上、さっきから唸って」


先程から難しい顔している劉輝に楸瑛が問う。


「お前だったのか。俺はてっきり新種かつ季節外れな真冬の蝉だと思ってたぞ」


そう言い、絳攸がドサリと書類を積んで劉輝を見た。


「悩みたくもなるのだ、これを見ろ」


そうしてぺらんと渡された紙を二人は覗き込んだ


「戸部からの報告書…ですか」


「ああ、まずは読め」


言われ目を通していた絳攸が、ある一点で目を見開く


「『王の客人』が……未だ存在している?」


「可能性があるということだ。……別に、だからといって余はその客人をどうこうしたいわけではないのだが。ただ、失踪したと思われていた客人が、生きていたとして。宮廷内何処でも出入りできる書状を持っているのだから、……今でも、誰も知らぬうちに、出入りしているのかもしれない」


「それは問題じゃないか? 外部の人間が朝廷に入り込んでいるなんて、先王の時代ならいざ知らず」


「……その、客人が生きていたことを先王も知らず、書状提示せずとも帯びているからと客人が忍び込んでいたとしたら…。それこそ、いつかに主上が言っていた、先王の死に説明がつくんじゃないかい? あの先王相手といっても、何せ『王の客人』なんだ、警備に気付かれず王の前に現れた話は有名だし、誰にも悟られず命奪うことも可能かもしれない」


楸瑛の言葉に二人もハッとして顔見合わせる。もしそうなら――


「……調べるには古い事柄だから、証拠が見つからないかもしれないけれど」


「本人に直接会って証言とれりゃ何とでもなる。無実なら無実でいい、それに『王の客人』の邸や書状をどっかの誰か他人が奪って使ってる可能性だってあるんだ。その場合書状回収と邸差し押さえなけりゃあだろう」


二人は劉輝を見た。


「主上、邸の場所は分かるんですか」


「客人本人であるという確認方法は」


「わ……わからないから悩んでおったのだぁ! 工部から邸の資料取り寄せてみたが、詳しいことは載ってない。きけば先王自らたっての指示のもと行われたというのだ」


「……つまり、手掛かりあるとしたら先王の執政記録ということですね」


「手分けして捜すぞ」


「したいのは山々なのだが、今年中にやらなければいけない仕事が……」


二人は執務机や床に積まれた書類の山を見た。そして、目を逸らす


「今くらい現実逃避の別作業したってあとで困るのは主上だけですから、問題ありません」


「大問題だと思うのだが!?」


楸瑛は突っ込みを笑顔で流し、執務記録を探しだした。絳攸も何も言わず探しはじめている。劉輝は机の上にのった書類の山をみる


(……どうせ今年中には終わりそうにはないしな)


そうして書類の山に劉輝も背を向けたのだった。

2 / 7
33333Hit
Prev | Next
△Menu ▼bkm
[ 戻る ]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -