詰め合わせ14
▽絶対可憐チルドレン
▽裏切りは僕の名前を知っている








▽絶対可憐チルドレン


「おーう、久しぶり」


「櫂兎ー!」


久々にB.A.B.E.L.本部に訪れた櫂兎に、ザ・チルドレンの少女三人は飛びついた。…いや、それでは語弊があるかもしれない。正確には彼女らの力そのままに突撃した、というべきか。常人なら軽く死の可能性もあるそれを、彼はなんでもないことのように軽々と衝撃緩和し受け止めた。


「全く衰えてないなそのチート加減」


「おー、皆本も久しぶり」


にこにことあくまで軽い調子の櫂兎に、皆本は何とも言えない気分になった。――彼、棚夏櫂兎はB.A.B.E.L.には正式には所属していない外部の人間だが、B.A.B.E.L.の協力者の一人であり、大規模であったり難易度の高い任務の際には皆本らに交じって活動している。彼の正確な超度は不明。というのも、彼の力に計測器が全く反応しないのだ。計測器に不具合はなく、本人も念波周波数のコントロールはしていないという。彼はその結果にどこか納得しているようだった。複数の、それも高度な超能力を屈指する彼だったが、計測器がそんな調子なので形式的には彼は「ノーマル」に分類されている。


「しかし三人とも、相変わらず可愛いなー、将来い有望だぞ。ただし俺の妹には負けるだろうが」


「そうや、ゆうとった妹さん、みつかったん?」


薫のその問いに、櫂兎は少しさみしそうな顔をして首を横に振った。



::



今日も櫂兎は兵部のP.A.N.D.R.A勧誘を笑顔で断った。


「ここ十数年毎日飽きないねー」


「君こそいい加減こっちにつかないか」


「やだよー」


へらり、と櫂兎は笑った。


「第一気付いてるだろ、俺が超能力の念波自体出してないのを。その点で言えば俺はお前が嫌ってやまないノーマルなんだよ」




▽裏切りは僕の名前を知っている


「夕月君、部屋がないならうちくる?」


「えっ?! ってええ?!!?」


驚き目を白黒させる夕月に櫂兎はくすくす笑った。


「ビバ、公園生活…! 冬場はちょーっと厳しいけど、新聞紙と段ボールがあれば結構何とかなるよ!!」


「いや、その遠慮します…」


::


櫂兎は、公園在住の浮浪者・ホームレスだと近隣の住人には思われていた。だが、本人の人の好さや身なりはきちんとしていつも清潔でいることから、ご近所のママさんや子供たちには評判いい。実のところ、この公園は私有地を一般に開放しているという個人の所有土地で、その土地の持ち主が彼なのだが、それを知る人間はいない。一戸建て持って一生普通に暮らすだけなら問題ないくらいの資産はあるくせに、公園生活しているという、変極まりない彼だった。



::


「かつて宮廷暮らしだったお前が、今は公園暮らしだなんて」


「そんなこともあったかな、昔のこと過ぎて忘れたよ」


天白の言葉に櫂兎は肩をすくめた。それは、千年以上記憶を維持し続けている天白には皮肉めいてきこえた。


「天白が眼鏡かけてると、何か違和感ある」


櫂兎はそういって天白の眼鏡を外す。そのときに、彼の左頬にある傷に触れた


「これは、『黄泉の落日』の?」


「……お前が消えた日だ」


「それは…うん、悪かった」


正確には、その前日の夜、彼は養父に一方的に呼び出しをくらいそこを離れる羽目になったので、『黄泉の落日』当日にはその場にいなかった


::


「あれ、俺まで勘弁してほしいんだけど」


悪魔達が自分にまで向かってきたのを確認した櫂兎は苦笑いした。誰の味方をしているわけでもないのに、あちらさんには祗王一族側だと思われてしまったらしい
しばらく徒手空拳で戦っていたものの、普通に殴る蹴るではほとんどダメージを与えられない。それを、予想通りかと呆れた風にみていた天白が、黒く大きな包みを櫂兎に投げる。中身を聞いても彼が答えなかったものだ。受け取った櫂兎はずっしりとした重みに懐かしさを覚えた


「え、これって」


「忘れ物だ」


包みから出てきたものは、千年前から一つも姿の変わらない、我ながら趣味が悪いとしか思えない赤黒い刀身の大剣だった。某世界のゲーム内で一時期愛用していた品を模して、面白半分にここでも作ってもらっていたのだ。千年以上前から、本人すら忘れていたこれを預かってくれていたらしい。


「…さんきゅ」


そして大剣は千年の時を超えて日の目を見る、なんて物凄くファンタジック。刀身には錆ひとつなく光に照らされ鈍く輝く。流石養父提供の謎の材質名だけはある

櫂兎は大剣を軽々と振り回し、まるで舞っているかのように敵を倒していった。

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飛ぶ計画
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