詰め合わせ9
▽闇の皇太子
▽ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-







▽闇の皇太子


「こんにちは后君、今お邪魔しても大丈夫?」


包みを持ち訪ねてきた隣人、棚夏櫂兎を、后は喜んで迎え入れた。彼は幼い頃から后の面倒をよくみてくれた、兄のような存在だ。


「あれ、后君、この子は?」


后の後ろにべったりとくっついてきていた言は、后と仲よさげなのが気に入らないのか、彼のことを無視しているらしい。后は苦笑いする


「大事な弟です」


その言葉に言が嬉しそうにするのが分かった。櫂兎はへえと眉をあげる。


「弟君、名前教えてくれるか?」


流石にそう言って視線を向けられては言も無視は出来ないらしく、しかし素っ気なく「言」とだけ言った。


「ことい? 珍しい名前だね、漢字は言霊の『言』かな」


そう言って頭を撫でようとする櫂兎の手を、言は邪険に振り払った。櫂兎は苦笑いを浮かべる。
それから、櫂兎は二人の後ろに視線を向けて、「あ、」とだけ言った。視線の先を后も辿ると、晴明がいた。何というか、様子がおかしい。立ち尽くしているというか、固まっているというか。こんな彼を見るのは初めてだった。


櫂兎は、気まずくなったかのように視線をさまよわせはじめた。


「あは、はは、俺、ちょーっと用事思い出したかもー? この包み、焼き芋な、それじゃごきげんよう」


包みを后の手に押し付け、背を向けた櫂兎に、声が掛けられる。


「帰らせると思いますか」


晴明の地を這うような声にその場が凍りつく。櫂兎を止めるにはそれで充分だった。


何がどういうことか、后にはさっぱり分からないが、どうやら晴明と櫂兎は、知り合いだったようだ。いつもなら言を目も離さないくらい要注意しているというのに、晴明は后も言もそっちのけにして、彼をひっ捕まえて二人で客間にこもってしまった。


しばらくして客間から、何かが壊れる音や晴明のどう考えても術を使っている声、それに対するあわてたような櫂兎の声だった。それもぱたんと音がやみ、満足顔の晴明と、げっそりとした風な櫂兎がでてくる。


「思いっきり暴れてくれちゃって…痛て、久々に動いたせいか関節が」


「よく言いますよ、右手しか使ってなかったくせに」


……その台詞ではまるで、ここで彼らが一乱闘したようではないか。后は全て思い違いならいいのにと思った。


*晴明幼少期、「明日修行につきあう」とか言ったっきり夢主が行方くらませたので、安否も分からない、約束も反故にされてるで怒ってました。




▽ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-


「そこのカッコいいおにーさん達」


皆で市を回っていたところ、一行に声を掛ける者がいた。アクセサリーを売っているようだが、店員は目深なフードを被っていて顔まではみえない。


「わー、僕たちのことかなー?」


「モコナも? モコナカッコいい?」


ファイとモコナが立ち止まるので、残りの三人も止まる。黒鋼は鋭い瞳でフードの店員を睨み、いつでも剣を抜けるようにしていた。


「ああ、真っ黒いお兄さん、こんな往来で刀抜いたら危ないですよ。それに私は怪しいものじゃありません。あなた達の旅路に、幸運訪れるグッズをお勧めしたいだけで」


物凄く怪しく、胡散臭い。
小狼も構えたところで、焦った風に店員はフードを脱いだ。


「怪しくないのにーっ!」


「あっ、櫂兎だー!」


モコナがぴょこんとフードを脱いだ店員の頭の上にのった。


「おい白いの、そいつ知ってんのか」


「俺は侑子さんの知り合いで、モコナとも友達なんだよねーっ」


「ねーっ」


「何が『ねーっ』だ。つーとあれか?」


「次元の魔女さんのお知り合い?」


「そ、さっきから言ってる。で、君らが探し物の旅してるってきいたから」


彼はアクセサリーを飾っていたコルク板の裏から手のひら大の大きさの黒い箱と、透明な筒を取り出した。筒の中のものに、一同が目を見開く。筒の中にあったのは、サクラの記憶の羽だった。
その筒を彼は小狼に手渡し、黒い箱は黒鋼に手渡した。


「その黒い箱の中には複雑な魔法が入ってて、その箱を開けることで一回だけ使えるんだ」


困ったときに開けてねと彼は手を振り、フードをかぶりなおした。

一応の設定では、箱の中身は夢主が一度限り呼び出される魔法です。

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飛ぶ計画
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