詰め合わせ1
▽妖怪アパートの幽雅な日常
▽まおゆう魔王勇者
▽銀の匙 Silver Spoon






▽妖怪アパートの幽雅な日常


「まあ、俺は普通の人間なわけだけど…」


「どこに銃弾を素手で受け止められる普通の人間がいるんですか」


「夕士君、俺が前までいたところはミサイルを口で噛み砕くような人間だっていたし、銃撃飛び交うのは日常茶飯事、かつて殺した少数民族の生き残りが女装して襲ってきて鎖で束縛され車に乗せられても昼下がりのコーヒーブレイクと何ら変わらないらしいんだぜ…」


遠い目をする櫂兎に、詩人がこくんこくんと頷く。夕士は唖然とした


「櫂兎さん、アパートが建ったときから姿が変わってないの」


秋音が小声で言い、夕士に棚の上の写真を見るように指差した。


「ぶっ」


ひと時代は昔なんじゃなかろうかというくらいの古ぼけた白黒写真に、今と変わらない姿の櫂兎が写っていた。


「本人は妖怪だって認めたがらないし、龍さんのお祓いが全く効かないから幽霊でもないみたいなの」


それって一体何なんだ。本人に問いかけても、きっと普通の人間だとしか返ってこないだろう。




▽まおゆう魔王勇者


魔王「この我のものとなれ、勇者よ」


櫂兎「あの、俺勇者じゃないです」


魔王「…う、確かによくみれば私の知ってる勇者と違う。フライングだったか」


櫂兎「ええ、フライングです」





櫂兎「馬鈴薯ですか。芽は有毒ですが地下茎を加熱調理すれば食べられますし、比較的保存がきく食材ですよね」


魔王「知っているのか。魔界の食べ物だぞ、人間の割に詳しいな」


櫂兎「まあ…芋好きですから。本当はサツマイモが本分ですけど(ごにょごにょ」




▽銀の匙 Silver Spoon


「いやー、助かりました! もう少しで熊を襲わなきゃいけないところでした」


(熊に襲われるじゃなくて?!)


夜の山道で拾ったのは棚夏櫂兎という青年だった。


「大蝦夷農業高校に行くはずが、いつの間にか迷ってて……」


近いときいていたため、歩きで来ようとしたらしい。道民の「近い」はあてにならない


「今日のところは泊まってけ」


「うわああ、ありがとうございます!」


人の良さそうな笑顔で彼は綺麗に笑った。


*八軒君と同室で泊まることになったよ!


「じゃあ八軒君は今住み込みバイト中なんだ」


「色々あって今日はちょっとサボってしまいましたが……」


目を逸らす八軒に櫂兎はくすりと笑った。


「実りあるバイトになると思うよ、きっと自分の成長への肥料とかそんなの」


「そんな大層なものじゃないですよ」


「そうかな?」


依然優しい笑みをたたえたまま、櫂兎は八軒をみる。八軒は、その姿が『大人びた』を通り越して、そこらの大人よりやたら老成してみえた


「櫂兎さん、校長先生の知り合いってことでしたけど、何歳なんですか?」


「んー、二千歳くらい?」


冗談混じりに櫂兎が意地悪い笑みをしたので、八軒は年齢をきくことを諦めた。実際冗談ではなかったのだが、そんなこと分かる由もなかった。


一応補足。豚丼購入の資金をバイトで得ました=自分の成長の肥料をバイトで得ました。お給料の使い道を考えるのも成長過程の一つだと思いますけれども。命は美味しいです

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