「うわ、順平君高校生デビューしてる。金髪似合わないね」
「櫂兎さん…いい笑顔で言われると凹むんですが」
彼は棚夏櫂兎、お隣のお兄さんだ。
黒子のバスケ
「うん、やっぱりそっちの方が似合ってる」
黒髪の短髪に戻した順平に、櫂兎は言った。
「……ざまあみろとか思ってません?」
「それは被害妄想じゃないかな。で、バスケまた始めたんだ」
「なっ、何で知ってるんですか!」
「あれ、屋上からの実行宣言の話題、結構有名なんだよ?」
ガーンとすごい顔した順平に櫂兎はくすくす笑った。
「人の噂も七十五日。三ヶ月くらいかー、結構長いね」
「忘れてくださいっ」
「忘れないよ」
む、と口を尖らせた順平に、櫂兎はにやりと笑う。
「だって実現するんだろ?」
目を丸くした順平をみて、櫂兎は柔らかく微笑んだ。
「またいつか試合応援しに行くよ」
*
『いや〜、ごめんごめん、応援しにきたんだけど体育館間違えたみたいで』
電話越しの声は気楽なものだ。
「もう試合終わったんですけど」
『諦めるなよ、諦めたらそこで試合終了だぞ』
「だから決着ついて終わったんですって…」
『あ、そうなの?』
ガクッ、と順平は肩を落とす。どこまでも気楽でマイペースだ
『そうそう、こっちで試合してたの中学生だったみたいなんだけど、超すごいぞ』
……それは、噂の「奇蹟の世代」とやらの試合なんだろうか
『何がすごいってな、皆髪の色派手なんだ! 金髪もいるぞ、順平より似合ってる!』
順平は、自分が一気に脱力したのが分かった。凄いのは頭か。試合をみろよ試合を。そんなツッコミが頭の中に浮かんでは消えた
『いや〜、赤青黄緑紫水色、戦隊ものみたいだよな。六人の戦隊ものって珍しいけど』
*
「お、新入部員がいちにいさんしいごーろく!おめでたい!」
(さっき黒子が指さされなかったか?)
(黒子君、普通に認識されてるわね)
「櫂兎さん、何入ってきてるんですか!」
「あはは、俺も新入ならぬ侵入部員…なんちて。きちんと校内見学証貰いましたよ〜」
「順平、知り合い?」
「ほら、隣の家の…」
リコは順平のその言葉で納得した風に深く頷いた。
*
リコによるレモンの丸ごと砂糖漬けはなくならず、順平が持ってきていた輪切りレモンの蜂蜜漬け・砂糖漬けはすっかりなくなっていた。
「折角作ったのに…」
そのままタッパーに蓋をしようとしたリコの手を止め、櫂兎が中のレモンを一つ取り出し、齧った。
「美味しいよ」
(イケメンだ…)
(イケメンがいる……)
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