黒子のバスケ
「うわ、順平君高校生デビューしてる。金髪似合わないね」


「櫂兎さん…いい笑顔で言われると凹むんですが」


彼は棚夏櫂兎、お隣のお兄さんだ。


黒子のバスケ




「うん、やっぱりそっちの方が似合ってる」


黒髪の短髪に戻した順平に、櫂兎は言った。


「……ざまあみろとか思ってません?」


「それは被害妄想じゃないかな。で、バスケまた始めたんだ」


「なっ、何で知ってるんですか!」


「あれ、屋上からの実行宣言の話題、結構有名なんだよ?」


ガーンとすごい顔した順平に櫂兎はくすくす笑った。


「人の噂も七十五日。三ヶ月くらいかー、結構長いね」


「忘れてくださいっ」


「忘れないよ」


む、と口を尖らせた順平に、櫂兎はにやりと笑う。


「だって実現するんだろ?」


目を丸くした順平をみて、櫂兎は柔らかく微笑んだ。


「またいつか試合応援しに行くよ」





『いや〜、ごめんごめん、応援しにきたんだけど体育館間違えたみたいで』


電話越しの声は気楽なものだ。


「もう試合終わったんですけど」


『諦めるなよ、諦めたらそこで試合終了だぞ』


「だから決着ついて終わったんですって…」


『あ、そうなの?』


ガクッ、と順平は肩を落とす。どこまでも気楽でマイペースだ


『そうそう、こっちで試合してたの中学生だったみたいなんだけど、超すごいぞ』


……それは、噂の「奇蹟の世代」とやらの試合なんだろうか


『何がすごいってな、皆髪の色派手なんだ! 金髪もいるぞ、順平より似合ってる!』


順平は、自分が一気に脱力したのが分かった。凄いのは頭か。試合をみろよ試合を。そんなツッコミが頭の中に浮かんでは消えた


『いや〜、赤青黄緑紫水色、戦隊ものみたいだよな。六人の戦隊ものって珍しいけど』





「お、新入部員がいちにいさんしいごーろく!おめでたい!」


(さっき黒子が指さされなかったか?)


(黒子君、普通に認識されてるわね)


「櫂兎さん、何入ってきてるんですか!」


「あはは、俺も新入ならぬ侵入部員…なんちて。きちんと校内見学証貰いましたよ〜」


「順平、知り合い?」


「ほら、隣の家の…」


リコは順平のその言葉で納得した風に深く頷いた。





リコによるレモンの丸ごと砂糖漬けはなくならず、順平が持ってきていた輪切りレモンの蜂蜜漬け・砂糖漬けはすっかりなくなっていた。


「折角作ったのに…」


そのままタッパーに蓋をしようとしたリコの手を止め、櫂兎が中のレモンを一つ取り出し、齧った。


「美味しいよ」


(イケメンだ…)


(イケメンがいる……)

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