それから、黎深は牢に出たり入ったりして牢番を困らせていた。俺らはそれを無視して勉強タイムだ。……あんなのが今年の二位なんだぜ。信じたくねー
鳳珠、真面目なお前があの馬鹿黎深の上にいってくれ…!
お昼どきになって哀愁ただよう悲鳴が聴こえる
「母が……母が朝早く忙しい中手作りしてくれたのにいいいい………」
「はっ、初めて彼女の手作り弁当があああああああ!!
お願いしますっ! いうこと聞きますからあ!一品だけでも残して置いてくださいいいい」
「ふん、そんなこと知らん」
鬼だ、鬼が居るよ………
咀嚼する音と、泣き崩れる牢番の声
「昼なら配給されるでしょーが」
俺が大声で言う。が、
「あんな不味いもの食うか」
そうして軽くなった弁当箱がカランと石床に落ちる音がして、
「一品も……残ってない……」
牢番のどうしようもない悲しみから漏れる嗚咽は深夜まで続き、
牢の囚人達は黎深という名の悪魔を知ったのだった。
そしてその後はというと
「おいそこの囚人、お前女にもてたいがためにかっこつけて貴族の屋敷に侵入して捕まったらしいな。そこのやつは女への貢ぎ金足りなくなって盗みか。ふん、一時の感情での阿呆ばかりか」
何故それを、と青ざめる囚人にまだ耳打ちする。それをきいた囚人達は揃って床に額を擦り付けた
「そればっかりはやめてくださいませ黎深様っ!」
「お情けを……!!」
「ならば肩を揉め。少し肩が凝っているのだ」
何かもう……色々君臨していた。
囚人さん方は揃いに揃って牢の隅っこで、黎深に目を付けられないようプルプル縮こまっていた。
「俺……ここを出たらもう悪いことは絶対しない。人様に迷惑かけることがどれほど悪いことか分かったよ、あれと同類にはなりたくない」
「だな……これからは人のためになることしたいな…」
ここ数日間毎日のように繰り返される会話である。黎深はよくも悪くも獄舎に衝撃を与えたのだった。
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