朝起きると黎深はいなくなっていた。
「………え」
目を開きがばっと掛け布団をめくり呆気にとられた俺に、悠舜が告げる。
「大方合鍵でも作って抜け出したんでしょう。どうやって作ったかは分かりませんが…」
「なんでもありだな…」
もしかしたらあの後寝ていなかったのかもしれない。
「牢なら三食付き、か。考えたなー」
「笑いごとじゃありませんよ、勉強するのに牢の中だなんて…」
「どこであろうとやることは変わらん」
鳳珠は直ぐに机に向かい筆を執る。
鳳珠って…真面目かつ勤勉家だよなぁ
すると扉のあくような物凄い音の後に、ドカドカと足音がきこえてきた。それに続く足音も二つ、躊躇いがちについてきている
その足音はだんだん近づき、やがて三人の牢の前で止まった。
「……黎深、どこをほっつき歩いていたんです」
「朝飯の調達だ」
「……ちなみにやけに豪華なこれらは………」
「王宮の庖房処からだ」
ドカンと頭を金槌で殴られたような衝撃を鳳珠と悠舜は受け口を噤む
俺は、まぁそれくらいするだろうとは思っていたけど…という呆れ顔。
それをみた黎深が何か文句あるのか、と三人を見渡す
「王だけがこんな豪勢なもの食っていいはずがない、だいたいあれだけ量があるんだ。これくらいくすねたって問題ない」
だからってくすねた場所がなぁ……そもそもどうしてそこに辿り着けたんだか。
はっ
府庫への抜け道を教えたせいか?!
府庫に抜ければ他の建物の位置だって把握できるだろう。ああ、教えるんじゃなかった!
急に頭を抱え過去の自分を懺悔しだした俺を、黎深は変なものを見る目でみる
くっ、お前の所業を手伝ってしまったみたいで後悔懺悔のアメアラレなんだよ!!
「まあ…1人だけ食べて帰ってくるってのがなかっただけマシか……? それとも共犯にされることに怒るべきか?」
「……もう、どっちでもいいです」
悠舜が何もかも諦めたと言った風な声で言った。
何にせよ黎深の後ろでプルプル恐怖に震えているお二人さんは、明らかに弱みを握られ共犯にされ料理をはこばされたご様子
ここは素直に料理をもぐもぐする俺だった。
美味い
殲華んとこいたとき食べた味だ、懐かしい。殲華とは州試の後一回会ったっきりだ。会試終わったらまた遊びにいこう
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bkm