遂に獄舎でも手に負えないと判断されたようで。
相変わらず牢内でも変わらず色々やらかした黎深と、相変わらず勉強続けてた俺らは、牢番さんに泣きながら「出て行って下さい」と縋られ、文句を言い出しそうになった黎深を引きずって、案内の人について行った。
着いた途端「では私はこれで」と関わりたくないオーラ全開で、案内の人は去ってしまう。
そして見るのは、あきらかに他の棟とは隔離された13号棟
「………なんというか、年季の入った味のある建物のようですね」
悠舜のオブラートに包まれた言葉を無視して黎深は一言言い放った。
「ボロいな」
鳳珠は何も言わず、ただ目の前の建物が信じられない風に呆然としており
俺はただ苦笑いしていた。
まあ、廃屋同然だ、むしろ黎深の反応の方が正しい
「いいじゃん、トトロの森とか秘密基地みたいで。獄舎よりはマシだろう」
生活と無縁そうなデンジャラスさが漂ってはいるけど
「ととろ?」
「子供の時にだけ訪れる不思議な出会いだよ」
「……」
だめだこいつなんとかしないと、という風な目で悠舜にみられる。だってこんなにも森森しい森の家なのだ、絶妙な傾斜で建つ様は職人芸としか思えない。
「ほら、入ろうぜ。やっとマトモに勉強できそうな環境だぞ、会試までの俺らの帰る場所!」
「…ああ、そうだな」
「そうですね」
無理やり連れてきたからか不機嫌そうな黎深は悠舜に小突かれ、初めて名乗った時のように渋々動いてずかずかとその扉に向かっては乱暴に開けた。
途端に中で埃が舞い、蜘蛛の巣がさわさわと揺れる。黎深はその自分の綺麗かつ高そうな服が一瞬にして汚れたのを見て、珍しくどうするか考えあぐねているようだった。
「うおっ、きったねー」
その扉を開け支えたまま動かない腕の下を通り抜けて中へ踏み込む。埃っぽい空気にせき込みそうになるのを我慢して歩く
「ば、馬鹿が! 汚れるのは見ていただろうが!」
黎深は自分同様埃まみれになった俺にきつく叫び、埃にせき込む
「おうおう、大丈夫か? だーってこんなきったない場所そのまんまにしてるわけにもいかねぇし」
そう言って俺はこの部屋唯一の窓を見つけ、バッと開ける。途端に風が舞い込み、風通しが大分ましになった。光は森のせいか場所のせいか細くしか入らない
「よし、掃除しようぜ!」
俺は準備していた雑巾を取り出しニッと笑った。
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bkm