試されて試されて 32
夕餉。黎深の当番。

何故か台所に悠舜がいる



「……黎深の当番だったよね?」


「ふらりとまたどこかへ行ってしまったのですよ。ふふ…帰ってきたらお説教してあげなくてはですね」


目が笑ってない、目が笑ってない!


黎深、帰ってきたら大変だろうなぁなどと思っていれば棟の扉をたたく音がする。来訪者? 誰が。と思って戸を開ければ、至極申し訳なさそうな顔の宿舎責任者らしき人。
そして告げられる



「現時点で第六棟の者は即刻獄舎の方へ移れということで…」


「……黎深のせいですね、わかります」




鳳珠が筆を置きため息をつき、悠舜はやれやれといったふうにうなだれた




「騒ぎの原因本人が今いないんですが」


「……先に拘束、されたはず、です」



実際は泣く泣く入ってもらったというところなのだろう。冷や汗いっぱいの責任者さんに同情した。
そうして三人、黎深になんと言ってやろうかと獄舎に向かいながら思うのだった







「……で、この食事の用意は何…」


「当番だったからな」


人様の弁当類を奪って用意するなよ…


頭が痛い、と眉間に手を当てため息をつく悠舜。

まあお腹がすいているのは事実だったので奪われた人たちには申し訳ないがおいしくいただいた。



冬場の石床は非常に冷えることを知る


「う〜…黎深のせいだー だいたいここに入る条件が『3人も一緒に』って…巻き込むなよ…」


寒いのでごろごろ転がる



「鳳珠も悠舜もえらいよ、こんなのにつきあって牢に入っちゃうんだぜー」


「ふふ、そういう櫂兎もじゃないですか」


「俺はまあ…こんなのでも友達だし」


その言葉にむっとした黎深が言う


「こんなのとはなんだ」


だが鳳珠はあっさり言い捨てた


「お前など『こんなの』で充分だということだ」


でも友達なんだよな。俺らってどうしようもないお人好しかもよ、なんて思いながら意識は微睡み何時の間にか眠ってしまった。

30 / 54
空中三回転半宙返り土下座
Prev | Next
△Menu ▼bkm
[ 戻る ]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -