「初めてお目にかかります、劉輝様」
「…???」
顔いっぱいの疑問符を浮かべ小首をかしげる劉輝。かわいい、かわいすぎるぞ、その仕草!若干3歳で身に着けるのだから、末おそろしい男である
「今日付けで劉輝様付の世話係となりました、華蓮と申します。ほかの仕事のため、午前はお相手できませんが…」
「華蓮…」
ぱちぱちとめをまたつかせてつぶらな瞳で見つめる
「はい、華蓮でございます」
すると劉輝は嬉しそうに言った
「せいえんあにうえが見つけてくれた次には、華蓮がみつけてくれた」
そう言って劉輝はにぱーと笑う
見つける、とは? と訊けば、兄たちが自分の存在を無いように扱うこと、消えろと言われ本当に消えてしまったんじゃないかと思ったこと、清苑はきちんと劉輝を見つけてくれて話ができたことをいう。
予備知識はあってもこれは。同じ『兄』という存在として許せるものではない。
「劉輝様、見えなくなることなんてありません。あなたはここに、ちゃんというんです。見えるし、触れるし、話せる。そうでしょう。
それに、もしほかの人があなたを見つけられなくなったとしても、私はあなたを、絶対に見つけ出します。どこにいようと、どんな姿でいようと」
ぽかんときいていた劉輝だが、内容わからずとも心意気が伝わったらしい。嬉しそうに彼は「うむ!」と言った。
次の日劉輝のもとへ行ってみれば、彼は室にはおらず、庭を探すもおらず。昼に訪ねることは言ってあるから府庫には行っていないだろう。嫌な予感がしていかにもな場所を探した
案の定というかなんというか。劉輝は、今は使われていない蔵の中に閉じ込められていた。兄たちのいじめで午前中ずっとここにいたらしい
「ごめんなさい、今開けますね」
蔵の扉は鍵はかかっていないが、錆びついていて、小さな子供一人の力では重すぎるだろう
っていうか三歳児になにしやがる。
ぎいと音をさせてあいた扉の奥から劉輝が勢いを持って飛び出し抱き着いてくる
その頭をなでる。くせがあり、もふもふしているのにさらさらでさわり心地が良い
「怖くありませんでしたか?」
「ほ…ほんのちょっぴりだけなのだ! 華蓮が昨日、どこにいても見つけてくれるといっただろう? だから真っ暗でも泣かなかったのだ!」
それはえらいぞ、三歳児にして我慢を覚えるか。しかし
「三歳児から我慢しすぎると清苑様みたいに苦労性になってしまいますわ、適度に甘えてくださいませ」
三歳児に無茶ぶりである
「せいえんあにうえみたいになれるのか!?」
劉輝はというとあこがれの兄のようになれると喜び気味である。うーん、失敗した。
「でも、泣きたいときには泣いたらいいのですよ。そうでないと、本当に泣きたいときに泣けなくなってしいますわ」
「そうなのか?」
「そうなのですわ」
「華蓮は?」
一瞬問われた意味が分からなくなり、次の瞬間鋭いなあと苦笑いして「秘密ですわ」と答えた。
「秘密はずるい」
ふてくされたように言う劉輝に俺は微笑んだ。
「乙女は秘密が多いんですの、それに涙は女の武器、めったにだしていいものではありませんわ」
乙女じゃない俺は、ご察しの通りである。
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bkm