欠けゆく白銀の砂時計 22
「思ったより準備は遅くなっちゃったけれど…それでもまあ、少しは早く揃うかな」


備品リストと銘打たれたそれは、彼の注文した品々がまとめられていた。


理由もなく急かすわけにもいかないので、揃いは遅い。あまり原作の時期と変わりはなくなってしまったかもしれない。しかし、貴陽全商連の刀鍛治も手配は済んだし、完成遅ければ秀麗らが茶州に向かうとき一緒に持っていってもらえば問題ない。


「おお、櫂兎、出てきとったのか」

「げ」


府庫に訪れた霄太師は、櫂兎の反応に溜息をついた。


「新年早々『げ』とは何じゃ、『げ』とは」


しかも、思い切り嫌そうな顔をされている。


「あけましておめでとうそして帰れ」

「茶くらい淹れてもてなせ」

「……はぁ」


櫂兎は渋々立ち上がり、茶の用意をしにいったようだった。霄太師は、彼が先ほどまでみていた紙の内容を覗き見た。

――綿に小刀に包帯、針や糸。何に使うのやら、だ。


櫂兎が戻ってくる気配に、慌てて何も素知らぬ振りをした。


「茶葉きれてたの忘れたまま年越してたっぽい」


戻ってきた櫂兎は、そうして白湯を置いた。
白湯を一口、口にした霄太師は言葉を漏らした。


「ああ、白湯じゃ」

「まあ水沸かしただけだしそうだろうな」


櫂兎は霄太師を暫く見つめていては、思い出したように言った。


「葉医師の居場所とかって、瑤旋分かる?」

「探せば分からんでもないが。…何の用でじゃ?」

「いやーまあ、借りてたもの返したいのと、頼みたいことがあるっていうか。頼むのは俺じゃないだろうけれど」

「ほう?」

「近くにいれば何となく分かるから、引っ張り出してくるの頼みたい」

「他ならぬ櫂兎の頼みじゃし、まー聞いてやらんこともない。その代わり――」

「その代わり?」

「何を企んでいるのか全て話してもらうぞ」


霄太師はそうして笑み顎鬚をなでた。

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空中三回転半宙返り土下座
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