無事に茶州州牧として就任した秀麗は、朝賀のため貴陽に戻ってきていた。州尹の鄭悠舜も一緒である。秀麗は朝賀の準備に忙しくしていた。一方、悠舜は黎深、鳳珠、櫂兎と旧交をあたためようと一席を設けていた。――これで吏部から黎深が姿を消してんやわんやになったのは余談である。
「久し振りですね、黎深、鳳珠、櫂兎」
「いやぁ…秀麗が無事に帰ってきてよかったよかった!」
「……」
黎深の言葉に、他の三人はまず気にするところはそこかとあきれ顔になった。
「はっ、それで、茶州での秀麗はどうだったのだ。記憶にある限りのことを、語って聞かせろ、悠舜!」
「黎深…久々にあった友に最初にきくことがそれですか?ねえ、二人とも」
「全くだ」
うんうん、と櫂兎は頷いた。鳳珠も口を開いた。
「親馬鹿ならぬ姪馬鹿だ。いや、ただの馬鹿だ」
「何でもいい、可愛い秀麗の話をきかせろ! ぐっ……あ……いかん……禁断症状が」
どうやら、かなりの重症なようだった。尚も胸が苦しいだの言い悶える黎深を気にせず鳳珠は盃をとった。悠舜と櫂兎も盃をとる。
「かんぱーい」
「乾杯」
「乾杯!」
軽い調子でこつんと盃を触れさせ飲み始める三人を黎深はキッと睨んだ。
「人がこんなにも苦しんでいるのにっ、無視をするな!」
それに悠舜は軽い笑い声をあげた。
「黎深は相変わらず姪っ子にメロメロですね」
「こいつは、昔から変わっておらん」
「秀麗ちゃんのことに関しては何処までも変態的だもんね……」
櫂兎の哀れむ声に一同はお前が言うかと心の中で突っ込んだ。彼の妹を想う重症さはいい勝負である。
「はは、何度振り回されたことやら…」
「っはぁ……はやく秀麗の、話をぉおぉぉおお…」
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