原作寄り道編 33
「もう話はいいでしょう、時間は限られていますし、棚夏殿は一人しかいないのですから、そろそろ私へと相手交代しても」

「俺は一回休みが欲しいけどな」


玉は語り足りなそうに、惜しい顔していたが引き下がったようだった。


「さて」


そうして楊修は懐から一つの巻物を取り出した。


「…何だこれ」

「棚夏殿の吏部帰属を求める連名です」

「……おおう」


完全に予想外だ、皆暇じゃないのによくやるな。
手渡されて広げてみれば、伸びる伸びる。思ったより長かった、というかこれ黎深以外の吏部の人間全員分なんじゃないか。


「どれだけ…棚夏殿がいなくて皆荒れたか…棚夏殿は分かっていない!」

「そりゃ、見てねえものは知らないからな」


ぽりぽりと頭を掻く櫂兎に、苦渋の表情の楊修は膝で拳をつくった。


「知ってます、棚夏殿が戻る気ないことも、戻れないことも」

「うん」

「しかし、しかしですねぇ…!」

「うん、楊修、分かった、分かったから」

「分かってません、棚夏殿が思っているよりずっと、吏部は棚夏殿を必要としてるんです…ッ!」

「……ああ」

「駄目なものは駄目だと、分かります。今そんな我儘も通らないことも、分かります」

「……ごめん」

「許しません」


許してくれないのかよ。


「たまに、仕事で疲れた皆に、差し入れでもお願いしますよ」

「…ああ、その時は『雑用』くらいなら手伝っちゃおうかな」

「……たまに、ここに来ても?」

「もちろん、いいけど」

「わっ、私も来ます!」


玉は有無を言わさない勢いで約束とりつけてきた。まあ断る理由もないのでいいのだが。


「では次の時には是非茶菓子を、私は茶を淹れます」

「おお、楊修が淹れてくれるのか」

「はい、とっておきの牛乳茶を淹れますからね」

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空中三回転半宙返り土下座
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