「まあ、こんなもんかな」
現在進行形で仕事している皆さんの仕事姿や、これまでこなした書類の内容をみながら、貘馬木殿のやったそれを目指して、机上の仕事をわけきってみた。
全員が二日分、かつ中央机の上に余りをなるべくつくらず分けるのを意識してとか難しかった。余った分はさっさと終わらせた。
「うん、とりあえず貘馬木殿これ何年も続けてたとかあり得ません」
調整役がいないとわけ切るのが大変だと思う。つまり、余りなら何でもこなす俺は、かなり便利屋やってたわけだ。
一日目終了後、皆の処理し損なった書類全てが、俺の残り二日の仕事だ。思ったより少なくて安心。
回収時に、こんなことならサボればよかった発言続出なのは許してもらおう。一応スタートラインは多分全員同じ二日分の明日からであるべきだし。俺が分けたから誤差あるだろうけれど!!
「進行具合からしてこの調子なら明日も大丈夫そうですね」
楊修は眼鏡を直しながら言った。
「おー…まあ、そうだな」
二日目、昼。皆、順調に四分の一ほど仕事が減っている。ここで更にひとつ、火に薪焼べて油注いでみようか。
「明日、仕事の終わった人は定時になっていなくても帰って構いませーん。今日残業で明日の分終わらせて明日休日もありでーす」
うおぉぉぉおお、と喜声だか奇声だか分からない声をあげた皆に思わず耳を抑えた。見事やる気は業火となったらしい、その熱さに天井も焦げるんじゃないかという勢いだ。
「……そんなこと、言って大丈夫なんですか?」
「こっちは全然大丈夫。俺の官位って定時前あがりの許可出してもいいんだよ。この官位もさ、元々前の貘馬木殿がいたからできたらしくて、他の部にはないし色々と融通きく官位なんだよな」
例えば仕事さえしていれば出仕が不定期でよかったり、吏部外の仕事やってたら吏部でする仕事少なくてよかったり、後宮や仙洞省や御史台なんかの普通じゃ入れない場所へ入る許可有りだったり。まあ最後のは俺の殲華にもらった書状あるから権利なくとも入ることは出来るわけだけど。
吏部侍郎より権利ないか、とたまに思う。多分実際その通りだ。ある意味貘馬木殿専用の官位だったので、今俺がそこにいることに疑問を抱かざるを得ない。
「ほら、楊修も仕事しろって、まだ半分も終わってねえじゃん」
「それは…二日分ですし」
「普段の調子で仕事したらのな。頑張れば個人差あるとはいえ一日でいける量かなーとか思ってる」
「そんなのできるの棚夏殿だけですよ!!?」
「俺なら半日もかけないな!」
悪びれも誇張も自慢もなく、極々事実であるように述べた櫂兎に、相変わらずとんでもないと楊修は深く息ついた。
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bkm